この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第34話悪夢との激突 決意の章
俺が目を覚ましたのは、翌日の昼頃。セリーナが何があったのかを散々聞かれたが、俺は答えられなかった。ちょっと転んで怪我したとしか言えず、彼女に不信感を与える事になってしまった。更にシャイニーが昨晩から行方不明になった事を伝えられ、俺は更に不安にかられた。
「そういえば昨日、巫女様はシャイニー様と外に出られていましたが、あの時に何かあったのですか?」
「いや特にはなかったですよ。だからちょっと心配です」
「その言葉自体が正しいのか分かりませんが、巫女様を信じていいのですね?」
「はい」
俺は初めて嘘をついてしまった。セリーナには申し訳ないと思うが、こうでもしなければシャイニーを探す時間が取れなくなってしまう。ある程度痛みが引いたし、探しに行かなければ。
「やっぱり何かあったのね昨日」
だが部屋を出た直後、グリアラと鉢合わせてしまう。
「い、いきなり何を言い出すんですかグリアラさん」
「その傷、彼女がつけたものでしょ」
「だから何を……」
ドンッ
白を切るつもりでいた俺に対して、グリアラは俺を壁に押さえつけた。
「いい加減にして。これは一大事なのよ。いつまでも白を切れると思ったら、大間違いよ」
「でも私は……」
「ねえ、ミスティアさん。あなたが何で迷っているか私には分からない。けれど、友達を見捨てるような事は絶対に許せない」
「見捨ててなんかいないです。ただ、迷っているんですよ。私」
「迷っている? 何と?」
「昨日、実はシャイニーさんの元に……」
話すしかなかった。これだけ真剣な顔をしているグリアラを見るのは初めてだったし、それに友達なんて言葉を出されたら、黙ってなんかいられない。
「どうしてその事を早く言わなかったのよ!」
「だって私はシャイニーさんを傷つけた責任があるから、自分の手で何とかしたかったんです」
「確かにあなたには責任がある。でもそれとこれとは違う。私達は同じ姫巫女同士であると同時に仲間なの。たとえ昨日出会ったばかりの大地の姫巫女だって、まだ姫巫女になりたてのあなただって、同じ仲間。だからもっと頼らなきゃ! 私達が力になるわよ」
「グリ……アラさん」
目頭が熱くなる。こんな言葉を真剣な顔で言われたのは、この長い人生の中でも初めてだった。だから嬉しかったし、同時にシャイニーに対する申し訳ない気持ちが一気に溢れ、涙へと変わっていた。
「もう泣いている場合じゃないわよ。今はシャイニーを探すのが優先。行くわよ」
「は、はい」
俺は溢れ出す涙を何とか堪えながら、グリアラの後を追って宿を出た。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
シャイニーを必死に探し回ること約二時間。ようやくその姿を見つけることに成功した。グリーンウッドの西の方にある少し大きな池のほとりにある、大きな岩の上に彼女は一人座っていた。
「ようやく……見つけた」
グリアラとは別れて行動していたので、今この場にいるの運良く俺とシャイニーのみ。今ならきっと、彼女も話を聞いてくれるに違いない。
「傷、まだ癒えてないですよね。あとで治療します」
一歩一歩彼女に近づく途中で、シャイニー自身から声をかけてきた。どうやら俺が来ていたのは気づいていたらしい。だが言葉は発するものの、こちらを向こうとはしてくれない。
「いいですよこれくらいの傷、自分の責任でもありますから」
「あいつを守るのが責任ですか?」
「違います。シャイニーさんを傷つけてしまったことに対する責任です」
「そんな格好いいこと言って。昨日突然男の子の声になって驚きましたよ」
「すいません。驚かせるつもりはなかったのですが、あまりにラファエルの言葉に腹が立ったので」
「腹が立つなら尚更、どうして彼女を庇ったのですか?」
「それには理由があるんですが、聞いてくれますか?」
「勿論。私も昨日感情任せだったから、ミスティアさんの話をしっかりと聞けていませんでしたから」
「分かりました。では少し長くなりますが」
俺はシャイニーにも全てを話した。分かってもらえなくてもいい。話だけさえ聞いてくれれば、少しでも理解の幅が広がる。それに、昨日の誤解も解いておきたかったから尚更だ。
「あれを倒したら、世界は再び闇に包まれる、ですか」
「そもそもラファエルはその闇の塊からできた存在らしいんです。それを倒してしまったら、人々の心の闇は再び戻ってしまう。その後何が起きるのか、私には分かりません」
「だから闇の牢獄と呼ばれていたんですね」
『そう、君達はボク達から決して逃れることなんてできない。だから闇の牢獄』
「っ! この声は」
突如どこからかラファエルの声が聞こえてくる。だが近くにその姿は見当たらない。
『もう少し二人が喧嘩するのかなと思っていたけど、あっさり仲直りしちゃったんだ。つまんないね』
「どこにいるんですか闇の姫巫女! 出てきてください」
『残念だけど、今日はボクは姿は現さない。メインディッシュは明日にとっておかないとね』
「明日って……」
「収穫祭で何をするつもりですか!」
『何って決まっているじゃないか。邪魔者の君達全てを排除、水の姫巫女は闇に堕ちてもらう。まあ、その前にあれに殺されるかもしれないけど』
やはり俺の予想は間違っていなかった。ラファエルの狙いは俺達の命。ラファエルが言うあれとは恐らくコロナと思って間違いないだろう。
(そんな事絶対にさせない)
「皆の邪魔をすると言うなら、容赦はしません」
『そう言っておきながら、君はボクを殺すことなんてできない』
「それはどうでしょうか」
いつの間にか俺の中に迷いは消えていた。彼女を倒すことは大きな代償を受けることになる。だけどそれがどうしたと言うのだ。俺には仲間がいる。いくら困難が襲いかかろうと、そんなの関係はない。
「私はあなたを……闇の姫巫女ラファエルを、この手で必ず倒して見せます!」
「そういえば昨日、巫女様はシャイニー様と外に出られていましたが、あの時に何かあったのですか?」
「いや特にはなかったですよ。だからちょっと心配です」
「その言葉自体が正しいのか分かりませんが、巫女様を信じていいのですね?」
「はい」
俺は初めて嘘をついてしまった。セリーナには申し訳ないと思うが、こうでもしなければシャイニーを探す時間が取れなくなってしまう。ある程度痛みが引いたし、探しに行かなければ。
「やっぱり何かあったのね昨日」
だが部屋を出た直後、グリアラと鉢合わせてしまう。
「い、いきなり何を言い出すんですかグリアラさん」
「その傷、彼女がつけたものでしょ」
「だから何を……」
ドンッ
白を切るつもりでいた俺に対して、グリアラは俺を壁に押さえつけた。
「いい加減にして。これは一大事なのよ。いつまでも白を切れると思ったら、大間違いよ」
「でも私は……」
「ねえ、ミスティアさん。あなたが何で迷っているか私には分からない。けれど、友達を見捨てるような事は絶対に許せない」
「見捨ててなんかいないです。ただ、迷っているんですよ。私」
「迷っている? 何と?」
「昨日、実はシャイニーさんの元に……」
話すしかなかった。これだけ真剣な顔をしているグリアラを見るのは初めてだったし、それに友達なんて言葉を出されたら、黙ってなんかいられない。
「どうしてその事を早く言わなかったのよ!」
「だって私はシャイニーさんを傷つけた責任があるから、自分の手で何とかしたかったんです」
「確かにあなたには責任がある。でもそれとこれとは違う。私達は同じ姫巫女同士であると同時に仲間なの。たとえ昨日出会ったばかりの大地の姫巫女だって、まだ姫巫女になりたてのあなただって、同じ仲間。だからもっと頼らなきゃ! 私達が力になるわよ」
「グリ……アラさん」
目頭が熱くなる。こんな言葉を真剣な顔で言われたのは、この長い人生の中でも初めてだった。だから嬉しかったし、同時にシャイニーに対する申し訳ない気持ちが一気に溢れ、涙へと変わっていた。
「もう泣いている場合じゃないわよ。今はシャイニーを探すのが優先。行くわよ」
「は、はい」
俺は溢れ出す涙を何とか堪えながら、グリアラの後を追って宿を出た。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
シャイニーを必死に探し回ること約二時間。ようやくその姿を見つけることに成功した。グリーンウッドの西の方にある少し大きな池のほとりにある、大きな岩の上に彼女は一人座っていた。
「ようやく……見つけた」
グリアラとは別れて行動していたので、今この場にいるの運良く俺とシャイニーのみ。今ならきっと、彼女も話を聞いてくれるに違いない。
「傷、まだ癒えてないですよね。あとで治療します」
一歩一歩彼女に近づく途中で、シャイニー自身から声をかけてきた。どうやら俺が来ていたのは気づいていたらしい。だが言葉は発するものの、こちらを向こうとはしてくれない。
「いいですよこれくらいの傷、自分の責任でもありますから」
「あいつを守るのが責任ですか?」
「違います。シャイニーさんを傷つけてしまったことに対する責任です」
「そんな格好いいこと言って。昨日突然男の子の声になって驚きましたよ」
「すいません。驚かせるつもりはなかったのですが、あまりにラファエルの言葉に腹が立ったので」
「腹が立つなら尚更、どうして彼女を庇ったのですか?」
「それには理由があるんですが、聞いてくれますか?」
「勿論。私も昨日感情任せだったから、ミスティアさんの話をしっかりと聞けていませんでしたから」
「分かりました。では少し長くなりますが」
俺はシャイニーにも全てを話した。分かってもらえなくてもいい。話だけさえ聞いてくれれば、少しでも理解の幅が広がる。それに、昨日の誤解も解いておきたかったから尚更だ。
「あれを倒したら、世界は再び闇に包まれる、ですか」
「そもそもラファエルはその闇の塊からできた存在らしいんです。それを倒してしまったら、人々の心の闇は再び戻ってしまう。その後何が起きるのか、私には分かりません」
「だから闇の牢獄と呼ばれていたんですね」
『そう、君達はボク達から決して逃れることなんてできない。だから闇の牢獄』
「っ! この声は」
突如どこからかラファエルの声が聞こえてくる。だが近くにその姿は見当たらない。
『もう少し二人が喧嘩するのかなと思っていたけど、あっさり仲直りしちゃったんだ。つまんないね』
「どこにいるんですか闇の姫巫女! 出てきてください」
『残念だけど、今日はボクは姿は現さない。メインディッシュは明日にとっておかないとね』
「明日って……」
「収穫祭で何をするつもりですか!」
『何って決まっているじゃないか。邪魔者の君達全てを排除、水の姫巫女は闇に堕ちてもらう。まあ、その前にあれに殺されるかもしれないけど』
やはり俺の予想は間違っていなかった。ラファエルの狙いは俺達の命。ラファエルが言うあれとは恐らくコロナと思って間違いないだろう。
(そんな事絶対にさせない)
「皆の邪魔をすると言うなら、容赦はしません」
『そう言っておきながら、君はボクを殺すことなんてできない』
「それはどうでしょうか」
いつの間にか俺の中に迷いは消えていた。彼女を倒すことは大きな代償を受けることになる。だけどそれがどうしたと言うのだ。俺には仲間がいる。いくら困難が襲いかかろうと、そんなの関係はない。
「私はあなたを……闇の姫巫女ラファエルを、この手で必ず倒して見せます!」
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