この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第35話光の姫巫女とその姉
もう迷いは消えた。あとはラファエルを倒すのみ。
『なんだつまんない。もう君たちには用事はないし、会えるとしたら明日の戦火の中だろうね』
「絶対にこの国に手出しはさせません。そして明日、あなたとの決着を必ずつけます」
『できるものなら、してみるがいいさ。勝つのはボクだからさ』
それだけ言った後、ラファエルの声は聞こえなくなった。再び二人きりになった俺とシャイニー。でも先ほどのように重たい空気は微塵も残っていなかった。
「ミスティアさんもいつの間にか言うようになりましたね」
「いえいえ、私の中の迷いが消えただけですから。世界の闇がどうだとか、今の私には関係ありません。大切なものを傷つける人間は誰だって許しません」
「ミスティアさん……」
「協力させられるのは私達っていうのを、忘れちゃ駄目よシャイニー」
「もう、そういうこと言わないでくださいよグリアラさん。折角いい雰囲気だったのに、台無しじゃないですか」
少しいい空気になり始めたところで、ようやくグリアラが到着。三人が揃ったということで、そのまま宿に戻ることになった。
その道中。
「私のお姉ちゃんは、何でもできる天才でした。それに比べたら妹の私は出来損ないで、いつも比べられてばかりでした」
昨日ラファエルが言っていたことが少し気になって、シャイニーに尋ねてみると、少し間を開けて話し始めてくれた。
「だから私の中には嫉妬心がありました、何で私はいつも比べられなければならないかと」
「シャイニーのお姉さんは本当に優秀だったのよ。だから当然、彼女が光の巫女になるのではないかと思われていた」
「でも姫巫女は、死んだ人の魂を利用して誕生させるシステムではないのですか?」
「そんなの誰がいつ決めたのよ。たまたま私やあなたがそうなだけあって、特にそういう決まりはないわよ」
「あの、私も死んでいるのですが……」
「え? そうだったの?!」
どうやらグリアラは気づいていなかったらしい。まあ俺も、ラファエルがあんな事言っていなかったら、勘違いしていたのかもしれない。彼女の姉が死んでいるのではないかと。
「私は少しでも姉より優れているところがあればいいと思っていたんです。そして導き出されたのが」
「死んで光の姫巫女になること、ですか」
「はい。でもかえってお姉ちゃんを悲しませることになってしまいました。私が死んだのは自分のせいではないかと」
「じゃあもしかして……」
「死ぬまでには至りませんでしたが、心を閉ざしてしまいました。今も外に出てこず、どうにかしてあげないといけないんです」
引きこもりになってしまった姉と、姉よりも優れたものが一つでもありたいと願い、命を落としたその妹。この姉妹、どうにかしてあげられないのだろうか?
「シャイニー、私達が力になるから、もっと頼っていいのよ。私達は仲間なんだから」
「グリアラさんの言う通りです。一人で抱え込まなくてもいいんです。私達が力になりますから」
「グリアラさん、ミスティアさん……」
この気持ちは俺だけではなかったらしい。グリアラさんも同じ思いだ。皆が皆支え合うといつか彼女も言っていた。そう、俺達は仲間なのだから。
「妾も忘れるでないぞ。お主が困った時には駆けつけるのじゃ」
「ムウナさんまで……って、いつの間にいたんですか!」
突然のムウナの登場に、シャイニーだけでなく俺達も驚いてしまう。小さいから気配に全く気付いていなかった。
「さっきからずっとおったのに、お主達は気がつかなすぎなのじゃ」
「それは多分あなたが小さいからよ」
「私もそう思います」
「同感です」
「お主達はいい加減妾に対する接し方を変えるのじゃ!」
『嫌よ(です)』
「もう知らーん」
さっきまであんなにも重たい雰囲気だったのに、いつの間にか普段通りの状態に戻っていたのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
その日の晩、収穫祭の前夜祭を行うということで、俺とセリーナは一緒に会場へと来ていた。
「セリーナさんはこういう高いところ、怖くないのですか?」
「巫女様と違って、私は何度かグリーンウッドに訪れているので、すっかり慣れましたよ」
「何回通っても慣れそうにないですよ私は」
会場の中心では、グリーンウッドの人達が宴と言わんばかりに騒いでいる。これ本当に前夜祭なのか?
「ミスティアさーん、こっちです。セリーナさんも」
そんな人だかりの中から、シャイニーが俺達を呼ぶ声がする。そこには既にグリアラとムウナが宴を開いていて、グリアラに至っては、お酒でも飲んだのか半酔っ払い状態になっていた。
「来たわねぇ〜二人とも〜、さあ宴よ宴ぇ」
「グリアラさん、前夜祭なのに飲み過ぎですよ」
「妾は〜、宴は〜嫌いじゃぁ。お酒を持ってくるのじゃ」
「ムウナさんまで酔っているんですか!」
「ムウナさんは一杯もお酒を飲んでないはずなんですけど」
「まさかの場酔いですか」
まあ、ムウナはどう見ても子供だからお酒なんて飲めるはずもないよな。俺も飲めるか危ういくらいだし。
「妾は子供ではないのじゃ〜」
「ツッコミはしっかりとするんですね……」
本当に酔っているのかこれ。
『なんだつまんない。もう君たちには用事はないし、会えるとしたら明日の戦火の中だろうね』
「絶対にこの国に手出しはさせません。そして明日、あなたとの決着を必ずつけます」
『できるものなら、してみるがいいさ。勝つのはボクだからさ』
それだけ言った後、ラファエルの声は聞こえなくなった。再び二人きりになった俺とシャイニー。でも先ほどのように重たい空気は微塵も残っていなかった。
「ミスティアさんもいつの間にか言うようになりましたね」
「いえいえ、私の中の迷いが消えただけですから。世界の闇がどうだとか、今の私には関係ありません。大切なものを傷つける人間は誰だって許しません」
「ミスティアさん……」
「協力させられるのは私達っていうのを、忘れちゃ駄目よシャイニー」
「もう、そういうこと言わないでくださいよグリアラさん。折角いい雰囲気だったのに、台無しじゃないですか」
少しいい空気になり始めたところで、ようやくグリアラが到着。三人が揃ったということで、そのまま宿に戻ることになった。
その道中。
「私のお姉ちゃんは、何でもできる天才でした。それに比べたら妹の私は出来損ないで、いつも比べられてばかりでした」
昨日ラファエルが言っていたことが少し気になって、シャイニーに尋ねてみると、少し間を開けて話し始めてくれた。
「だから私の中には嫉妬心がありました、何で私はいつも比べられなければならないかと」
「シャイニーのお姉さんは本当に優秀だったのよ。だから当然、彼女が光の巫女になるのではないかと思われていた」
「でも姫巫女は、死んだ人の魂を利用して誕生させるシステムではないのですか?」
「そんなの誰がいつ決めたのよ。たまたま私やあなたがそうなだけあって、特にそういう決まりはないわよ」
「あの、私も死んでいるのですが……」
「え? そうだったの?!」
どうやらグリアラは気づいていなかったらしい。まあ俺も、ラファエルがあんな事言っていなかったら、勘違いしていたのかもしれない。彼女の姉が死んでいるのではないかと。
「私は少しでも姉より優れているところがあればいいと思っていたんです。そして導き出されたのが」
「死んで光の姫巫女になること、ですか」
「はい。でもかえってお姉ちゃんを悲しませることになってしまいました。私が死んだのは自分のせいではないかと」
「じゃあもしかして……」
「死ぬまでには至りませんでしたが、心を閉ざしてしまいました。今も外に出てこず、どうにかしてあげないといけないんです」
引きこもりになってしまった姉と、姉よりも優れたものが一つでもありたいと願い、命を落としたその妹。この姉妹、どうにかしてあげられないのだろうか?
「シャイニー、私達が力になるから、もっと頼っていいのよ。私達は仲間なんだから」
「グリアラさんの言う通りです。一人で抱え込まなくてもいいんです。私達が力になりますから」
「グリアラさん、ミスティアさん……」
この気持ちは俺だけではなかったらしい。グリアラさんも同じ思いだ。皆が皆支え合うといつか彼女も言っていた。そう、俺達は仲間なのだから。
「妾も忘れるでないぞ。お主が困った時には駆けつけるのじゃ」
「ムウナさんまで……って、いつの間にいたんですか!」
突然のムウナの登場に、シャイニーだけでなく俺達も驚いてしまう。小さいから気配に全く気付いていなかった。
「さっきからずっとおったのに、お主達は気がつかなすぎなのじゃ」
「それは多分あなたが小さいからよ」
「私もそう思います」
「同感です」
「お主達はいい加減妾に対する接し方を変えるのじゃ!」
『嫌よ(です)』
「もう知らーん」
さっきまであんなにも重たい雰囲気だったのに、いつの間にか普段通りの状態に戻っていたのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
その日の晩、収穫祭の前夜祭を行うということで、俺とセリーナは一緒に会場へと来ていた。
「セリーナさんはこういう高いところ、怖くないのですか?」
「巫女様と違って、私は何度かグリーンウッドに訪れているので、すっかり慣れましたよ」
「何回通っても慣れそうにないですよ私は」
会場の中心では、グリーンウッドの人達が宴と言わんばかりに騒いでいる。これ本当に前夜祭なのか?
「ミスティアさーん、こっちです。セリーナさんも」
そんな人だかりの中から、シャイニーが俺達を呼ぶ声がする。そこには既にグリアラとムウナが宴を開いていて、グリアラに至っては、お酒でも飲んだのか半酔っ払い状態になっていた。
「来たわねぇ〜二人とも〜、さあ宴よ宴ぇ」
「グリアラさん、前夜祭なのに飲み過ぎですよ」
「妾は〜、宴は〜嫌いじゃぁ。お酒を持ってくるのじゃ」
「ムウナさんまで酔っているんですか!」
「ムウナさんは一杯もお酒を飲んでないはずなんですけど」
「まさかの場酔いですか」
まあ、ムウナはどう見ても子供だからお酒なんて飲めるはずもないよな。俺も飲めるか危ういくらいだし。
「妾は子供ではないのじゃ〜」
「ツッコミはしっかりとするんですね……」
本当に酔っているのかこれ。
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