この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

第39話グリアラとシャイニー

 長生きする事は良い事だとよく言われるけど、私は長生きするのはあまり好きじゃなかった。しかも不老不死だなんて、いつまでこの森の姫巫女でいればいいのかと、度々思ってしまう。

 そしてその想いは五年前までずっと続いていた。もう二百年近く生きている間に、何度も人が死ぬのを見て、そして悲しんだ。そんな事がもう何回見てきたか分からないくらい。だから私もいつかは死のうと思っていた。けど一度死を経験している以上、そんな簡単には命を落とせないと分かっていた。だから苦しかったし、生きていく希望すらもなかった。

 だけど五年前、彼女と出会って気持ちが変わった。

「は、は、初めまして。しゃ、シャイニーです。よよよ、よろしくお願いします」

 最近誕生したばかりだと言う光の姫巫女シャイニーだ。第一印象はそそっかしくて、落ち着きのない子だと思っていた。出会いのきっかけは、丁度収穫祭の日だった。だから案内がてらに色々一緒に回っているうちに、親しくなってた。

「え? あなたその理由のためだけに光の姫巫女になったの?」

「おかしな話ですよね。お姉ちゃんを越えたいって理由だけで、自ら命を落とすなんて」

「馬鹿な話よ。姫巫女になるということは一生生き続けなければならないのよ。周りは私達と違って命に限りがある。だから友達なんてできないわよ」

「で、でも私は今日グリアラさんに出会えて、そ、その。お、お友達になれたじゃないですか。一生いなくならない」

「え、あ、そ、そうね」

「ご、ごめんなさい。わ、私勝手なこと言って……」

「いいのよ。ちょっと驚いただけだから」

 友達。
 この言葉を聞いてこんなに嬉しくなったのはいつ以来だろうか? しかも友達といっても、文字通り一生の友達。

(そっか、私いなかったんだ。ちゃんと友達といえる友達が)

「シャイニー」

「な、なんでしょうか?」

「ありがとう」

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 それから私とシャイニーは何回か会っては、一緒に街を回ったりしたりしていた。勿論仕事だってあったけれど、私とシャイニーはそれ以上の関係になっていた。

「ほえー、グリアラさんはそんなに長生きしているんですか」

「だから世界の歴史とか結構詳しかったりするのよ。何でも聞いていいわよ」

「今度機会があれば聞きたいです」

 お互いの国が近いこともあってか、一年経つ頃にはかなりの頻度に会うようになっていた。そうやって接していくうちに、お互いのことをよく知り、悩みがあったらよく打ち明けたりしていた。
 ずっと一人っ子だった私にとって、彼女は妹のようで年月が経つに連れてそんな彼女が可愛らしくなっていた。

「そういえば知っていますか? 新しく水の姫巫女が誕生したって話」

「聞いた聞いた。今度生誕記念パーティを開くらしいわね。私の元に招待来てたし」

「あ、私も来ていました。どんなお方なんでしょうかね?」

「さあ? 普通の子だといいんだけど」

「そうですね。でもサプライズがあっても面白いかもしれませんよ」

 今から一ヶ月前に新たな水の姫巫女が誕生した時にもこんな会話をしていた。まあ、まさか中身が男だなんて思いもしなかったけど。丁度その頃にグリーンウッドとセイランスが異常気象にあっていて、お互いも苦労していた頃だった。でもそういうイベントには欠かさずに参加することにしていたし、シャイニーも一緒だった。

 そう、私達はいつも一緒だった。

 それなのに…それなのに……。

「シャイニーィィ!」

 今目の前で彼女は私の目の前で消えた。目の前にいる闇の姫巫女のせいで。

「あはは。これで光の姫巫女もいなくなった。残る二人も同じような目に合わせてあげる」

 次の標的を定めたラファエルは、再び剣を取り出して近くにいるセリーナに斬りかかろうとしている。だが心ここに在らずのセリーナは、それに気がついていない。

(もう、何やっているのよ!)

 そう思った時には既に体が動いていた。本当に咄嗟の行動で、彼女をその場から動かす事しか出来なかったが、何とか回避をできた。

「あれ、君動けるんだ。戦う気すらないと思っていたけどあったんだね。それとももしかして、仲間を奪ったボクが許せなくなったかな」

 相変わらず減らず口のラファエル。これ以上あの子の悪口を言うなら、私は許さない。

「絶対に許さないわよ……」

「ん? 何か言った?」

「私はあなたを絶対に許さない! シャイニーを、私の大切な仲間を奪ったあなたを、私は許さない!」

「そっか。許せないか。だったらかかってきなよ。このボクに勝てるなら」

「本当口が減らないわね! だけどあなた、一つ忘れている事があるわよ」

 確かに勝てる保証は現時点でないかもしれない。だけど、一つ忘れてはいけないことがある。

「ここは私の生まれの地。そして私は森の姫巫女、ここの自然は私が思うままに操ることができるの」

「そういえばそうだっけ。だったら手加減する必要ないね」

「え?」

 突然頬に何かがかすめる。

「今のはちょっとしたナイフを投げただけさ。もしかして分からなかったかな」

 掠めた所から血が流れているが、気にしない。確かに今のは見えないけど、だからどうした。

「こんなもので一々驚かないわよ。今のだってほんの余興でしょ?」

「よく分かったね。これからが本番だから」

 剣を構えるラファエル。私にはそういったものはないけど、それ以上のものが私にはある。だからこの戦い、絶対に終わらせてみせる。そして全てを終わらしたら、

(シャイニー、ミスティアさん。絶対に助けてあげるからね)

 二人を絶対に助けてみせる。不可能だとしても、助けてみせる。もう誰も失わない為に。

「行くわよ闇の姫巫女!」

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