この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第40話遅れてきた英雄
最初に動き出したのは私だった。木を自在に操って、私を守る防御壁を作る。これである程度の攻撃は防げる。身の安全を確保したのち、周囲の木を伸ばして全てを束ねる。すると一つの大きな剣へと早変わり。機動性はないが、一撃は大きい。
「行きなさい、森の木々達よ」
「そんなの簡単に……」
「避けられないでしょ?」
だが確実に当てる為にあらかじめ足を拘束済み。
「うおりゃぁぁ」
私は全力でラファエルにそれを叩きつけた。そしてそれは彼女に直撃して……。
「流石は森の姫巫女という所だね。だけど、その程度の力では倒せない」
「嘘、直撃だったはず」
いたはずなのに、数秒後現れたラファエルは傷一つ残っていなかった。
「君も見たでしょ? さっきのブラックホールを。あれを利用すれば、どんな攻撃だって闇の中なのさ。残念だけどボクに攻撃は当てられない」
「そんな、きゃあっ!」
突然闇の波動が私の元にやって来たかと思うと、全身に強烈な痛みが広がり、その場で立てなくなってしまう。
(な、何これ。身体が……)
まだ戦いが始まって五分も経っていない。それなのに長く戦ってきたような感覚が全身を襲う。
「本当は時間をかけて倒したい所なんだけど、早い内に決着つけた方がいいかなって思って、禁呪を使わさせてもらったよ。これで君はもう体を動かせない」
「き、禁呪を使ったの! あなたあれが何なのかを分かっているの?」
「分かっているよ。強大な一撃を使えるようになる分、その寿命を大幅に縮めることになる技。別にもう二百五十年も生きてきたんだから、寿命の一つや二つ、使っても問題ないさ」
禁呪。
今までにそんな言葉なんて一度も使ったことがなかったが、そもそも禁呪とは姫巫女のみが習得できるその国だけに眠る禁断の技。勿論私もその存在を知っている。
「あれは……使ってはいけないものです。私自身その存在は、巫女様にも伝えておりません」
そこでずっと黙っていたセリーナがようやく口を開く。そう、今彼女が言っていた通り、禁呪は私達巫女にすら教えてもらえない位の力を持っている。それを今私が身を持って味わっているのだが、身体が一向に動かない。
「さてと、これで君も同じように闇の扉に飲まれなよ。お友達が待っているからさ」
そう言いながらラファエルはシャイニーの時と同様に、あのブラックホールを出現させる。
「くっ!」
一撃。
たった一撃で私は彼女に負けてしまうのか。こんな所で諦めるなんて、そんなの情けない。助けるって決めたのに。このままだと私も一緒に……。
「グリアラさぁぁん」
どうしようもなくしていると、どこから私を呼ぶ声がした。え? この声って……。そう思っている間に、ラファエルの顔面に強烈な蹴りが入る。油断していたのかラファエルはそれをモロに受けてしまう。
「そんな馬鹿な。どうして君が」
「仲間を傷つけた分、きちんとお返しさせていただきます! 闇の姫巫女ラファエル、私は……いや、俺はあんたを絶対に許さない!」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
話は少しだけ戻る。
(ん? 何だ、あれ)
突如俺の目の前に光が少しだけ差し込んだ。僅かな光とはいえ、人一人は通れそうだ。
(誰か来る)
その光から誰かの体が入ってきた。そしてそれが何なのか、俺はすぐに認識できた。
「しゃ、シャイニー!」
流れてきたのはボロボロになったシャイニー。誰が彼女をこんな目に……。
「その声は……ミスティアさんですか?」
「ああ。今は元ミスティアだけど」
「じゃあこの声は、ミスティアさんの中の人の声なんですね」
「まあ、そんな感じだ」
声が少し弱々しい。相当痛めつけられたのだろうか。
「私……負けちゃいました。ラファエルに」
「やはりあいつは現れたのか」
「はい。そして教えてくれました。ミスティアさんの魂がラファエルの中にあると」
「じゃあお前、もしかして……」
「はい。私はミスティアさんを助ける為に、立ち向かってそれで……」
「そんな、嘘だろ」
俺の為に彼女は命を張ってくれたのか?  それなのに、俺は何も出来なくて……。
「でもここでミスティアさんに出会えたのはラッキーです。無事助け出すことが可能なのですから」
「え? 何を言って……」
突然視界が揺れ出す。何だ、何をしようとしているんだ?
「私の力で、あなたの魂を闇の中から脱出させてあげます」
「そんな事をしたら、お前は」
「もういいんですミスティアさん。私は充分に光の姫巫女として楽しまさせていただきましたから」
視界が完全に光に包まれていく。最後に見えた彼女の顔は、笑顔だったが目には大粒の涙が流れていた。
「シャイニーぃぃぃ」
そしてその笑顔は、光の中に消えていき、視界が元に戻った頃にはグリーンウッドの宿の天井だった。
「もしかして俺、帰ってきたのか?」
手も足も動かせる。どうやら本当に俺はミスティアとして戻って来れたらしい。
だけど足りない。一人だけ足りない。
俺を助けてくれた彼女がいない。
「シャイニー……ううっ」
俺の命を救ってくれた、彼女、シャイニーが足りない。
(絶対に決着をつけて、助けてやるからなシャイニー)
時間は元に戻る。
「仲間を傷つけた分、きちんとお返しさせていただきます! 闇の姫巫女ラファエル、私は……いや、俺はあんたを絶対に許さない!」
ミスティアに戻った俺は、すぐにラファエルの元へとやって来た。グリアラがピンチだったが、何とか間に合ってくれたらしい。
「ミスティアさん!」
「巫女様!」
「ごめん二人とも心配させて。話したいことは山々だけど、それは全部こいつを倒してからにしよう」
「何を調子なことを言っているんだ。ボクには勝てない」
「そんなの分からないだろ? あいつだって諦めずにお前と戦って、闇に囚われながらも俺を助け出してくれた。だったら俺だってその気持ちに応える」
そして、絶対に助け出す。待ってろよシャイニー。
「行きなさい、森の木々達よ」
「そんなの簡単に……」
「避けられないでしょ?」
だが確実に当てる為にあらかじめ足を拘束済み。
「うおりゃぁぁ」
私は全力でラファエルにそれを叩きつけた。そしてそれは彼女に直撃して……。
「流石は森の姫巫女という所だね。だけど、その程度の力では倒せない」
「嘘、直撃だったはず」
いたはずなのに、数秒後現れたラファエルは傷一つ残っていなかった。
「君も見たでしょ? さっきのブラックホールを。あれを利用すれば、どんな攻撃だって闇の中なのさ。残念だけどボクに攻撃は当てられない」
「そんな、きゃあっ!」
突然闇の波動が私の元にやって来たかと思うと、全身に強烈な痛みが広がり、その場で立てなくなってしまう。
(な、何これ。身体が……)
まだ戦いが始まって五分も経っていない。それなのに長く戦ってきたような感覚が全身を襲う。
「本当は時間をかけて倒したい所なんだけど、早い内に決着つけた方がいいかなって思って、禁呪を使わさせてもらったよ。これで君はもう体を動かせない」
「き、禁呪を使ったの! あなたあれが何なのかを分かっているの?」
「分かっているよ。強大な一撃を使えるようになる分、その寿命を大幅に縮めることになる技。別にもう二百五十年も生きてきたんだから、寿命の一つや二つ、使っても問題ないさ」
禁呪。
今までにそんな言葉なんて一度も使ったことがなかったが、そもそも禁呪とは姫巫女のみが習得できるその国だけに眠る禁断の技。勿論私もその存在を知っている。
「あれは……使ってはいけないものです。私自身その存在は、巫女様にも伝えておりません」
そこでずっと黙っていたセリーナがようやく口を開く。そう、今彼女が言っていた通り、禁呪は私達巫女にすら教えてもらえない位の力を持っている。それを今私が身を持って味わっているのだが、身体が一向に動かない。
「さてと、これで君も同じように闇の扉に飲まれなよ。お友達が待っているからさ」
そう言いながらラファエルはシャイニーの時と同様に、あのブラックホールを出現させる。
「くっ!」
一撃。
たった一撃で私は彼女に負けてしまうのか。こんな所で諦めるなんて、そんなの情けない。助けるって決めたのに。このままだと私も一緒に……。
「グリアラさぁぁん」
どうしようもなくしていると、どこから私を呼ぶ声がした。え? この声って……。そう思っている間に、ラファエルの顔面に強烈な蹴りが入る。油断していたのかラファエルはそれをモロに受けてしまう。
「そんな馬鹿な。どうして君が」
「仲間を傷つけた分、きちんとお返しさせていただきます! 闇の姫巫女ラファエル、私は……いや、俺はあんたを絶対に許さない!」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
話は少しだけ戻る。
(ん? 何だ、あれ)
突如俺の目の前に光が少しだけ差し込んだ。僅かな光とはいえ、人一人は通れそうだ。
(誰か来る)
その光から誰かの体が入ってきた。そしてそれが何なのか、俺はすぐに認識できた。
「しゃ、シャイニー!」
流れてきたのはボロボロになったシャイニー。誰が彼女をこんな目に……。
「その声は……ミスティアさんですか?」
「ああ。今は元ミスティアだけど」
「じゃあこの声は、ミスティアさんの中の人の声なんですね」
「まあ、そんな感じだ」
声が少し弱々しい。相当痛めつけられたのだろうか。
「私……負けちゃいました。ラファエルに」
「やはりあいつは現れたのか」
「はい。そして教えてくれました。ミスティアさんの魂がラファエルの中にあると」
「じゃあお前、もしかして……」
「はい。私はミスティアさんを助ける為に、立ち向かってそれで……」
「そんな、嘘だろ」
俺の為に彼女は命を張ってくれたのか?  それなのに、俺は何も出来なくて……。
「でもここでミスティアさんに出会えたのはラッキーです。無事助け出すことが可能なのですから」
「え? 何を言って……」
突然視界が揺れ出す。何だ、何をしようとしているんだ?
「私の力で、あなたの魂を闇の中から脱出させてあげます」
「そんな事をしたら、お前は」
「もういいんですミスティアさん。私は充分に光の姫巫女として楽しまさせていただきましたから」
視界が完全に光に包まれていく。最後に見えた彼女の顔は、笑顔だったが目には大粒の涙が流れていた。
「シャイニーぃぃぃ」
そしてその笑顔は、光の中に消えていき、視界が元に戻った頃にはグリーンウッドの宿の天井だった。
「もしかして俺、帰ってきたのか?」
手も足も動かせる。どうやら本当に俺はミスティアとして戻って来れたらしい。
だけど足りない。一人だけ足りない。
俺を助けてくれた彼女がいない。
「シャイニー……ううっ」
俺の命を救ってくれた、彼女、シャイニーが足りない。
(絶対に決着をつけて、助けてやるからなシャイニー)
時間は元に戻る。
「仲間を傷つけた分、きちんとお返しさせていただきます! 闇の姫巫女ラファエル、私は……いや、俺はあんたを絶対に許さない!」
ミスティアに戻った俺は、すぐにラファエルの元へとやって来た。グリアラがピンチだったが、何とか間に合ってくれたらしい。
「ミスティアさん!」
「巫女様!」
「ごめん二人とも心配させて。話したいことは山々だけど、それは全部こいつを倒してからにしよう」
「何を調子なことを言っているんだ。ボクには勝てない」
「そんなの分からないだろ? あいつだって諦めずにお前と戦って、闇に囚われながらも俺を助け出してくれた。だったら俺だってその気持ちに応える」
そして、絶対に助け出す。待ってろよシャイニー。
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