この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第41話導き出した答え
切って落とされた決戦の火蓋。先ほどの会話を少しだけ耳にしているので、禁呪の存在も知っているので、万全の状態での戦いだ。
「まさかあの闇の空間から抜け出してくるとは思わなかったよ。でももう一度送ってあげれば、二度と戻って来れないよね。そう、皆が闇に包まれてしまえばいいんだ」
徐々に本性が露わになっていくラファエル。こいつは最初から世界変えようなんて気持ちはなかったんだ。
「そんな勝手な事は絶対にさせない。たとえお前を倒して世界が闇に包まれてしまっても、本当の意味で世界を変えられる力を持っている俺達がいる」
グリーンウッドには水がないから水の姫巫女が不利な状況に思えるこの戦い。だけど今着ている『水源の衣』を生地にした巫女服には、ある秘密があった。
それを教えてもらったのはグリーンウッドへの出発前。
「え? どうしてこの巫女服を着ていくんですか? これって水中用では」
「実はこの巫女服には秘密がありまして、触れた水を全て吸収することができるんですよ。そしてその吸水された水は、水の姫巫女の力として使うことができるんです」
「じゃあもしかして、毎日儀式をしていたのって」
「そういった意味も実は含まれているんですよ」
そう、この巫女服は毎朝儀式で使っていたもの。水ならたっぷりと吸ってある。それを使うのは今しかない。
「どうして、ここには水なんてないはず」
「驚きますよね。だけどこれはあなたみたいに禁呪を使ったりするものではありません」
「まさか、そんな事が」
俺は全身を使って水を操る。少しずつだけど練習してきた動きが、まさかこんな所で本当に役立つとは。
「綺麗な動き……」
「巫女様、その動きです。今完璧ですよ」
二人から感想が聞こえてくる。何か少しだけ恥ずかしい。
「出でよ水の龍よ。その身体を凍てつかせ、敵に襲いかかれよ」
一頭の水の龍を呼び出し、ラファエルへと襲いかからせる。凍てつかせているから、氷の龍か?
「甘いね。そんな一方通行の攻撃なら、闇に飲ませてしまえば」
「甘いのはそっちですよ。誰が龍は一頭だと言いましたか?」
「え?」
恐らく一方通行の攻撃だったら、何かしらのもので防御されるだろうと読んだ俺は、ラファエルの意識外に龍をもう一頭出現させておいた。
「借りは返させていただきます。蒼双龍牙突撃!」
前後から二つの龍が、ラファエルに襲いかかり、彼女を喰らった。
「きゃぁぁぁ」
悲鳴と共にラファエルは崩れ去る。一発勝負で試した技とはいえ、効き目はかなりのものだったらしい。
「はぁ……はぁ……」
だがそれと同時に、慣れないことをしたせいか、体力が一気に尽きる。駄目だ、やはり女性の体だと、体力はそんなにない。
(それは今更か)
「そんな……このボクが一撃で……」
「信じられないか? でも信じられないことが起きるのがこの世界だ」
命を落としたと思ったら、こんな身体に生まれ変わっていて、また殺されたかと思ったら、今度はシャイニーに助けてもらって……。普通では考えられないことを俺は経験してきた。そしてそれは、この先だってきっと起きるかもしれないだろう。
「……君はボクを殺すの?」
「そうだな。初めからそうするつもりだったし、これからお前を生かした所で、メリットはないからな」
「世界が闇に染まってもいいの?」
「ああ。その後は俺達自身で何とかするさ」
氷の刃を持ってラファエルへと近づいていく。これで水の姫巫女の因縁が終わるなら、それでいい。
(因縁……か)
よく考えたら、ここで俺がここで人を殺めてしまっていいのだろうか? いくら因縁とはいえ、人を殺していいのだろうか? 殺さなくても、別の道があるのでは?
(でもこいつは沢山の人を傷つけた)
今だってシャイニーが捕まったままだ。そしてそれがいつまた起きるかなんて分からない。だから殺さなければならない。
それは皆が望んでいること。
勿論リスクもある。こいつを殺してしまえば、世界は闇に包まれる。でも俺達はそれを乗り越えられるはず。だからリスクなんて、今更な話だ。
でも果たして、世界は闇に包まれる事を望んでいるのだろうか?
この件は正直に言えば俺の我儘でやっているようなものだ。
こいつは危険だから。
こいつを生かしておけば、いつ、危険な目に合うか分からないから。
そしてこいつは、仲間を傷つけたから。
世界の誰もが彼女の存在を知っているならともかく、彼女を知っているのはほんの一部の人間。普通の人間は今も平和に暮らしている。明日来るであろう闇も知らずに。
そして俺は、その平和すら壊そうとしている。
果たしてそれは正しいのだろうか? 
「どうかしましたか巫女様」
「セリーナさんは世界が闇に包まれるのを望みますか?」
「いきなり何を聞いてくるんですか。望むもなにも、それが選択肢の一つなら、私はそれに従うのみです」
「そうですか……」
「巫女様?」
誰かが望んだわけでもないことを俺はやろうとしている。
それは正しい事なのか?
いや、それは違う。それなら俺は……。
「ラファエル、あなたは私の仲間を沢山傷つけました。それは決して許せることではありません」
「……」
「もしあなたが今後も生きるようなら、世界は再び世界は危機に晒されるでしょう」
それなら俺は……。
「だから殺さなければなりません。……本来ならば」
「え?」
「巫女様、何を言って……」
「私は決めました。あなたを殺さないと。それは自分の為とかではなく、世界の為に、あなたを生かします」
『え?!』
「まさかあの闇の空間から抜け出してくるとは思わなかったよ。でももう一度送ってあげれば、二度と戻って来れないよね。そう、皆が闇に包まれてしまえばいいんだ」
徐々に本性が露わになっていくラファエル。こいつは最初から世界変えようなんて気持ちはなかったんだ。
「そんな勝手な事は絶対にさせない。たとえお前を倒して世界が闇に包まれてしまっても、本当の意味で世界を変えられる力を持っている俺達がいる」
グリーンウッドには水がないから水の姫巫女が不利な状況に思えるこの戦い。だけど今着ている『水源の衣』を生地にした巫女服には、ある秘密があった。
それを教えてもらったのはグリーンウッドへの出発前。
「え? どうしてこの巫女服を着ていくんですか? これって水中用では」
「実はこの巫女服には秘密がありまして、触れた水を全て吸収することができるんですよ。そしてその吸水された水は、水の姫巫女の力として使うことができるんです」
「じゃあもしかして、毎日儀式をしていたのって」
「そういった意味も実は含まれているんですよ」
そう、この巫女服は毎朝儀式で使っていたもの。水ならたっぷりと吸ってある。それを使うのは今しかない。
「どうして、ここには水なんてないはず」
「驚きますよね。だけどこれはあなたみたいに禁呪を使ったりするものではありません」
「まさか、そんな事が」
俺は全身を使って水を操る。少しずつだけど練習してきた動きが、まさかこんな所で本当に役立つとは。
「綺麗な動き……」
「巫女様、その動きです。今完璧ですよ」
二人から感想が聞こえてくる。何か少しだけ恥ずかしい。
「出でよ水の龍よ。その身体を凍てつかせ、敵に襲いかかれよ」
一頭の水の龍を呼び出し、ラファエルへと襲いかからせる。凍てつかせているから、氷の龍か?
「甘いね。そんな一方通行の攻撃なら、闇に飲ませてしまえば」
「甘いのはそっちですよ。誰が龍は一頭だと言いましたか?」
「え?」
恐らく一方通行の攻撃だったら、何かしらのもので防御されるだろうと読んだ俺は、ラファエルの意識外に龍をもう一頭出現させておいた。
「借りは返させていただきます。蒼双龍牙突撃!」
前後から二つの龍が、ラファエルに襲いかかり、彼女を喰らった。
「きゃぁぁぁ」
悲鳴と共にラファエルは崩れ去る。一発勝負で試した技とはいえ、効き目はかなりのものだったらしい。
「はぁ……はぁ……」
だがそれと同時に、慣れないことをしたせいか、体力が一気に尽きる。駄目だ、やはり女性の体だと、体力はそんなにない。
(それは今更か)
「そんな……このボクが一撃で……」
「信じられないか? でも信じられないことが起きるのがこの世界だ」
命を落としたと思ったら、こんな身体に生まれ変わっていて、また殺されたかと思ったら、今度はシャイニーに助けてもらって……。普通では考えられないことを俺は経験してきた。そしてそれは、この先だってきっと起きるかもしれないだろう。
「……君はボクを殺すの?」
「そうだな。初めからそうするつもりだったし、これからお前を生かした所で、メリットはないからな」
「世界が闇に染まってもいいの?」
「ああ。その後は俺達自身で何とかするさ」
氷の刃を持ってラファエルへと近づいていく。これで水の姫巫女の因縁が終わるなら、それでいい。
(因縁……か)
よく考えたら、ここで俺がここで人を殺めてしまっていいのだろうか? いくら因縁とはいえ、人を殺していいのだろうか? 殺さなくても、別の道があるのでは?
(でもこいつは沢山の人を傷つけた)
今だってシャイニーが捕まったままだ。そしてそれがいつまた起きるかなんて分からない。だから殺さなければならない。
それは皆が望んでいること。
勿論リスクもある。こいつを殺してしまえば、世界は闇に包まれる。でも俺達はそれを乗り越えられるはず。だからリスクなんて、今更な話だ。
でも果たして、世界は闇に包まれる事を望んでいるのだろうか?
この件は正直に言えば俺の我儘でやっているようなものだ。
こいつは危険だから。
こいつを生かしておけば、いつ、危険な目に合うか分からないから。
そしてこいつは、仲間を傷つけたから。
世界の誰もが彼女の存在を知っているならともかく、彼女を知っているのはほんの一部の人間。普通の人間は今も平和に暮らしている。明日来るであろう闇も知らずに。
そして俺は、その平和すら壊そうとしている。
果たしてそれは正しいのだろうか? 
「どうかしましたか巫女様」
「セリーナさんは世界が闇に包まれるのを望みますか?」
「いきなり何を聞いてくるんですか。望むもなにも、それが選択肢の一つなら、私はそれに従うのみです」
「そうですか……」
「巫女様?」
誰かが望んだわけでもないことを俺はやろうとしている。
それは正しい事なのか?
いや、それは違う。それなら俺は……。
「ラファエル、あなたは私の仲間を沢山傷つけました。それは決して許せることではありません」
「……」
「もしあなたが今後も生きるようなら、世界は再び世界は危機に晒されるでしょう」
それなら俺は……。
「だから殺さなければなりません。……本来ならば」
「え?」
「巫女様、何を言って……」
「私は決めました。あなたを殺さないと。それは自分の為とかではなく、世界の為に、あなたを生かします」
『え?!』
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