この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

第44話絶望へ加速する未来

 前回は扉の前まで連れて来られ、中に入ることはできなかっでこの部屋に入るのは初めてだった。

「なんだよここ……」

 部屋の中は目立った機械は一つもあらず、真ん中に巨大なロケット型の機械が一つ。そしてそれを眺めているのは、

「やはり止めにきたわね。元水の姫巫女さん」

 マリアーナ。

「当たり前だろ。あんたがやろうとしていることは間違っている。何で一度それを経験しているお前が、気づかないんだ」

「あれはあくまで失敗しただけなの。今度こそ成功させるの」

「そんな確信もない事をしようとするな!」

「いいえ、成功するわ。あなたが邪魔さえしなければね!」

 来る!

 そう思った時には既に遅かった。俺が入って来る前に準備していたのか、俺の背中を水の龍が襲いかかる。

「卑怯な!」

「咲田様、これを」

 セリーナは何かを俺に渡してきた。これは剣?

「水の龍は私達が止めます。咲田様はその間にマリアーナを」

「でも二人で何とできるのか?」

「姫を舐めないでほしいわ。ねえセリーナさん」

「はい。思い出すだけで体が震えそうです」

 過去に一体何があったんだこの二人。でもセリーナが保障できるなら、任せてみるか。どちらにせよ、俺がケリをつけなきゃいけない気がするし。

「分かった。二人を信じる。ただし、無茶だけはしないでくれ」

「任せてください」

「あなたが最近まで巫女だったとは思えないくらい、しっかりしているわね。でもあなたにこの世界を託すから、しっかりと頼むわね」

「はい。そちらも頑張ってください!」

 俺はそう言って、全速力でマリアーナの元へと走り出した。そうだ、これは世界の運命もかかっているんだ。負けられない。

「行くぞマリアーナ!」

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 まずは一撃と言わんばかりにマリアーナに剣を振りかざすが、見えない何かに弾かれてしまう。

(これはあの時の)

「覚えてる? あなたを私の力で助けた時のこと」

「ああ。覚えているさ。突然あんたが俺を守った時は、本気でこの世界を守ろうとしているんだなって信じた」

「これに誰も触れてほしくなかったの。いずれ自分が使うものを先に使われるなんて、気に食わないじゃない」

 剣を弾かれた俺は、一歩下がる。駄目だあれがある限り、あいつには手出しできない。どうすれば……。

「先に教えてあげるわ。今のあなたはただの人間。水の姫巫女の力がある私には、指一本触れられない」

「分かっている。だからと言って諦められない」

「その根性は立派ね。けど、それだけじゃあどうにもならないことだってあるのよ」

 そう言うと、マリアーナは突然妙な動きを始めた。あれは、

「確か蒼双龍牙突撃だったわね。まさかこんな技があるなんてね」

 そうあれはラファエルとの戦いで使用した技。ただでさえ、一頭の龍がを呼び出しているというのに、更に二頭呼び出そうとしているのか彼女は。

(いや、俺だから難しかっただけで、不可能ではないのかもしれないな)

 それに今のあいつの力ならやれる。だから俺はピンチを迎えた。あれと同じ技をやろうとしているなら、俺は避ける事も出来やしない。

「蒼双龍牙突撃!」

 そしてマリアーナから放たれる。二頭の龍は、俺に襲いかかってくる。ぶっつけ本番でやったが為に、回避方法すら分かっていないので、避けることができず、見事に二つの龍は俺を噛み砕く……。

「あれ?」

 と思った直後、何故か二頭の龍は砕け散ってしまっていた。何事かと思った時、背後の方から声が聞こえてきた。

「あれ? じゃないわよ全く。ピンチの時は必ず助けにくるって言ったでしょ。もしかして元の体に戻ったから、助けに来ないと思った?」

 それは聞き慣れた声。

「この人があのミスティアさんですか……。思っていたよりも」

 何度も助けてもらった声。

「イケメンじゃな」

 そして大切な仲間の声。

「皆! どうしてここに?」

「何かあった時の為に、私が呼んでおいたの。あなたにとって頼もしい仲間を」

「と、というかシャイニー、お前無事だったのか。よかった……」

「おかげさまで。それより本当に元ミスティアさんの方ですよね?」

「ああ。今は訳あって元の体に戻っているけど、俺はミスティアだよ」

「で、ミスティアの身体が今あそこにあるのね」

 皆が視線を一箇所に向ける。そこには既に次の攻撃へと移っているマリアーナがいた。

「あれが目標でいいのかしら?」

「ああ。ただあいつは強い」

「そんなの百も承知なのじゃ。じゃが、妾の手にかかればあんなのちょちょいのちょいなのじゃ」

「私だって戦いますからね。光の姫巫女ですから」

「よし、行くぞ!」

 再び態勢を整え、マリアーナへと今度は一人ではなく四人で向かう。

 ゴゴゴゴ

 だが、それすらも許さないほどの大きな地震が発生する。

「どうやらあなた達を相手する前に、私の勝ちは決まったようね」

「何?!」

『システムの起動を確認、発射まで五分』

「まさか、起動したのか?」

 マリアーナの背後、先程まで何の変哲もないミサイルが大きな煙を上げる。機械の音声によると残り五分。それまでにあれを何とかするしかない。

 できるのか? 俺に。

「五分、充分の時間じゃない」

「そうじゃ。妾達の力があれば、お茶の子さいさいじゃ」

「頑張りましょうミスティアさん」

「そっか、そうだよな」

 できるのかじゃない。

 やるしかない、俺達で。

「それにこれが終わっても、まだ仕事があるからな」

 闇から世界を取り戻す仕事が。

「諦めが悪いのもいい加減飽きたわ。さあ、かかってきなさい!」

「よし、行くぞ!」

『了解!』

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