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この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

第45話ウォルティア城、崩壊

 残り五分という短い時間の中で、今考えられる作戦は二人がマリアーナの囮になって、その間に二人が機械を止める。単純な作戦だが、もうそれしかない。

「止められるものなら止めてみなさい」

 マリアーナはそんな俺達に対して、多彩な攻撃をしかけてくる。それを何とかかいくぐりながら、マリアーナをグリアラとムウナに任せ、俺とシャイニーは機械をとめにはいる。

「とりあえずどうすればいい?」

「どこかに停止ボタンとかはないのですか?」

「それが困った事に、ボタンが一つもないんだよ」

 だがいざ止めようとした時、その手段が見つからないことが分かった。何と例のロケットの周辺にはボタンが一つもあらず、止める手段がどこにも見当たらないのだ。

「だから言ったでしょ? 止められるものなら止めてみなさいって。まあ、最初から不可能なんだけど」

「くそ、最初から分かっていて……」

 どうする。どうすればこれを止められる? 破壊するにもこの大きさじゃ、被害が余計に広がる可能性が……。

『発射まで残り二分』

 時間もない。このままだと、どうにも……。

「咲田君、これを使って!」

 遠くからアライア姫が何かを投げてくる。俺はそれを受け取る。渡されたのは何かのスイッチだった。

「それはミサイルの自動自爆スイッチよ」

「なっ! どうしてそれをあんたが持っているのよ」

「でもアライア姫様、これを使ったら他に被害が……」

「今はそんなの気にしている場合ではないのよ。それに……」

「今この国にいるのは、私達だけ。だからやるなら今しかないの」

「え? それはどういう……」

「説明はこれが終わった後! 早く」

『発射まで残り三十秒』

「咲田さん」

 もう残された時間はない。やるしかない。分からないことは後で聞けばいい。今は、この世界を救うのが先だ。

「うぉぉぉ」

 俺は自動自爆スイッチを押した。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 その後、何が起きたかはハッキリと覚えていない。スイッチを押し、ミサイルは時間ギリギリで爆発。俺達はその場からアライア姫が転送魔法みたいなのを使って脱出。地下から爆発が発生したウォルティア城は俺達が安全な所へと案内した時には崩壊してしまっていた。
 マリアーナがどうなったかは分からない。でも地下を去る前、俺は見た。彼女がどこかへ消える姿を。だから、生きているのかもしれない、何処かで。

「よかったんですかアライア姫様、大切な城がああなってしまって」

「いいの。どうせまた一から始めなきゃいけないから、この国も、この世界も」

 セリーナの問いに、そう答えるアライア姫はどこか寂しそうなのは、俺の気のせいだろうか?

(いいわけないよな、絶対)

大切な城が壊れたもんな。俺だったらこんなに普通にはいられない。それなのに、彼女は……。

(本当強いんだな、この世界の人間は)

「それよりもさっきの言葉の意味、教えてくださいよ。どういう意味ですか? 俺達以外誰もいないって」

「皆この前の一件で、闇に飲み込まれたのよ。私が目を覚ました時には誰もいなかった」

「それは妾達も一緒なのじゃ」

「何とか闇の中から抜け出せはしたけど、他の人は誰もいなかった。それはここにいる皆一緒なの」

「でも何で俺までもが?」

「それはちょっと分からない。この世界にあなたの身体をやってきた時は確かに心臓は止まっていたはずなのに……」

「もしかして幽霊?!」

「あながち間違っていないけど、何か言われると嫌だなそれ」

 まあ兎にも角にも、中途半端な形でこの世界を去るのだけは勘弁だったし、一応この件は置いておくとしよう。それに、まだやる事は沢山あるだろうから、そっちを優先にしないと。

『来て』

「え?」

 ホッと一息をついた時、どこからか声が聞こえた。それは俺だけにしか聞こえていなかったらしく、周りは不思議そうな顔で俺を見ている。

「どうかされましたか? 巫女様」

「いや、声が……」

「声?」

 どこかで聞いたことがあるようなそんな声。いつだっただろうか? この声を聞いたのは。

『待っているから、来て』

「この声……もしや」

「巫女様?」

「セリーナ、一つ頼みがあるんだけど」

「頼みですか?」

「海に潜る為に使う巫女服、あれを今すぐ貸してくれないか?」

「念の為と持ってはいますが、今すぐ貸してほしいんですか?」

「ああ。急用ができた」

 そうか、この声を俺はあそこで聞いたことがあったんだ。だいぶ時間が経ってしまったから、すっかり忘れていたけど。

(すっかり忘れていたよ。もう一人、世界を変えられる力を持っているかもしれない人がいたのを)

 世界を変えられる力を持っているかは分からないけど、闇に囚われずここにいるということは、何かしら彼女にもあるのかもしれない。

「ちょっとどこに行くのよ? 巫女服を持って」

「海だよ、そこの」

「海って、今瓦礫で危ないわよ! それに今は遊んでいる場合じゃないのよ!」

「そうじゃない。今から会いに、いや助けに行ってくるんだよ」

「助けるって、皆既に闇に囚われているのよ。それにこの瓦礫の中じゃ……」

「そんなの分からないだろ! それに、声が聞こえたんだ。だからちょっと行ってくるんだよ」

「あ、ちょっと!」

 急いで行かなければ彼女の元に。もしそれが世界を救う鍵になるのなら、

(腕の一本くれてやる)



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