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この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

第58話腐れ縁ではなく友として

 その後度重なる攻撃の中を、何とかかいくぐりムウナが閉じ込められていた廃墟から抜け出すことに成功したけど俺達五人は、スウ達の捜索へと向かった。

「その話本当なのか咲田。スウが妾を助ける為に……」

「ああ。最初は疑っていたけど、あいつの言葉は何一つ嘘ではなかった」

「だとしたら、さっきの大きな揺れは……」

「どうかしたか?」

「まずいぞ咲田。スウが危ない! いや、それ以上にシャイニー達も危うい」

「おい、それはどういう……」

「とにかく急ぐのじゃ」

「急ぐって言われてもな、お前をおぶっている俺の気持ちを考えろ!」

 ムウナは先程まで宙吊りにされていた為、まともに歩けないかもしれないと思った俺は、彼女を背中におぶったままかれこれ三十分は歩いている。その為俺にこれ以上の速さを求められても困る。

「一々気にしとる場合か!」

「なあグリアラ」

「私は代わる気はないわよ」

「私もです」

「薄情だなお前ら」

 だから他の二人に代わってもらいたかったのだが、二人とも知らんぷり。どれだけ面倒臭がりなんだよ二人とも。

「急ぐと言っても、場所が分からないぞ」

「あ、そっか……」

「そうでもなさそうよ。ほら、あそこ」

「あ」

 グリアラが遠くを指差している。その先には必死に走ってきているシャイニーと、クスハの姿があった。だがそこやなら、本来いるはずのスウの姿はなかった。
   
「やはり、このままではスウが……」

「とりあえず二人から話を聞くぞ。急ぐのはそれからだ」

「おーい二人とも」

 大声でグリアラが二人を呼ぶ。それに気がついたのか、二人は足を止めた。

「グリアラさん、それに皆さんも!」

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「じゃあスウは、大地の歌姫を説得する為に」

「はい。だから早く助けに行かないと」

 二人と合流した後、スウの事を教えてもらった。つまり彼女は、シャイニー達を安全な所へ逃がす為に、自ら身体を張ったというのか。

「やはりそういう事になっておったのか。だとしたらスウは……」

「ムウナ、どうしたんだよさっきから」

「すまぬ咲田。妾は今すぐスウの元に向かわなければならぬ」

「分かってる。ただ、お前一人じゃ危ないから俺もついていく。他の皆は先に戻っていてくれ」

「え? 二人だけで行くんですか? 私達も一緒に行った方が……」

「ただでさえ追われているんだ。ここは少人数で向かった方がいい」

「でも……」

「とにかく頼んだぞ」

「あ、ちょっと咲田さん!」

 先程場所は聞いておいたので、俺はムウナを背負ったままスウの元へ急ぐ。今ここで大人数で救出に向かったら、何か起きてしまった時の対処ができない。だから今回はできるだけ最小限の人数で向かうことにした。

 その道中、

「なあムウナ、この前お前はスウの事腐れ縁とか言っていたけど、本当の所どうなんだ?」

 ムウナとスウの関係について、少しだけからかってみる事にした。

「どうも何も、そのままの意味なのじゃが」

「腐れ縁の割りには随分と助けたさそうな顔をしているじゃん」

「な、何を言う。妾は……」

「スウ自身は腐れ縁とか思っていないみたいだぞ」

「え?」

「実はお前を助けに向かう時な」

 あの時スウが言っていた事と、俺が思った事をムウナに話してあげる。あの心配している姿は、腐れ縁の仲と言うよりも俺には、大切な友達を想う姿にすら見えた。だから俺は少しだけ背中を押してあげることにした。

「スウが妾の事をそんな風に思っていたとは……」

「気がつくようで気づきにくいんだよ、人の想いって。それはお前達に限った話じゃない。皆そうなんだ」

「そうか妾は……」

「分からないから不安になる。だけど分かった時にはスッキリするだろ?」

「そう……じゃな」

 分かりたくないことだってきっとあるだろうけど、相手の気持ちが分かって、初めてお互いを理解しあえる友達が生まれる。それは俺と向日葵と雄一もそうだった。最初は俺が拒否してばかりで、分かり合えないとさえ思っていた。けど少しずつ理解し始めた結果、今二人は俺にとって大切な親友となった。だからきっとこの二人だって……。

「だとしたら、妾はその友を失う事になるのか……」

「え? それはどういう事だよ。別にスウは死んでないだろ?」

「あの揺れが、スウによって起こしたものだとするなら、恐らくスウの命は長くはない」

「おい、どうしてそんな縁起でもない事を……」

 そこまで言った所で俺の背中が微かに濡れている事に気がつく。もしかしてムウナ、泣いているのか?

「スウが使ったあの力は、大地の姫巫女であった妾ですら使うのを拒んでしまうほど、強大なものなのじゃ。それをまだ姫巫女になったばかりのスウが使ったらどうなる?」

「まさか……」

「そうじゃ。一歩間違えれば死に至ってしまうのじゃ」

「そんな……」

 そんなのって……ありかよ。

「じゃから急いでほしいのじゃ。少しでも長く友の側にいてやりたい」

「分かった。絶対に間に合わせてやる」

 折角分かり合えたのに、突然別れるだなんてそんな事させてたまるか。


「咲田、あそこ」

 それからダッシュで進むこと五分、目的の場所へと到着した。そこにいたのは、大地の歌姫であろう女性と、その前で息を切らしながらも何かを必死に頼んでいるスウの姿がそこにはあった。

「スウ!」

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