この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第62話たった一度のチャンス
「い、いきなり何を言うんですか? 私に妹なんて……」
「じゃあ何で動揺するんだ?」
「そ、それは……」
「いいんだよ、分かっているから。見守りたいんだろ、大切な妹をさ」
シャイニーが光の歌姫と面識がなかったのは、実の姉である彼女が名前を変えてまで光の歌姫になったから。部屋に引きこもりになってしまったと言っていたが、彼女はあの神殿で何かをしていたからなのかもしれない。だから勘違いしていたのかもしれない。部屋から出てきていないと。
「も、もうお見通しって事ですか?」
「ああ。お前とシャイニーは声もよく似ているし、結構おどおどする所がある。それが恐らく決め手になった」
「そうですか……やはり、よく似ている姉妹だって言われている分、隠し通せない事もあるんですね」
「そんなもんなんだよ、姉妹ってのは」
何か諦めたかのようにため息をつくライノ。改めて聞くと、この二人の声がよく似ているな。
「キッカケはあの子が光の姫巫女になる為に、命を落とした事です」
「ショックだったか?」
「ショックどころの話ではないですよ。しばらく寝込んでしまいました」
「それはそうか」
しかもその原因が自分だと分かったら、もっとショックだろう。大切な妹が自分のせいで死んだ、つまり自分が殺してしまったようなものだからな。
「あの子が光の姫巫女になって五年の間、必死に考えました。どうすればこの罪が拭えるのかと」
「その結論が、光の歌姫になって、シャイニーを守ることか」
「はい。歌姫は姫巫女程の力は持っていませんが、守ることくらいはできます」
「自分が姉である事実を隠してまでか?」
「遠くから見守る、それだけでいいんです。それが私の選んだ道ですから」
「選んだ道ねえ」
何か生き別れした姉妹みたいになっているけど、これはこれでいいのだろうか? いずれ分かってしまう事とはいえ、こうしてずっと黙っているとシャイニーも辛いのではないかと思う。あいつも自分のせいで姉が引きこもってしまっていると思っている。こんな負の連鎖だけが続いても、意味をなさないのではないか?
「姉妹とか兄弟とか俺には分からないけどさ、お互い隠し事をしていても辛いだけじゃないのか?」
「いずれ知られるのは分かっています。けど、今はこれでいいんです」
「そっか。それならいいか」
「だからこの事はあの子には内緒にしておいてください」
「分かっているよ」
もしかしたら、シャイニー自身が気づいてしまうかもしれないけどね。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎ 
その後は部屋に戻って、何もない一日を過ごした。その間にも会場作りは順調に進み、作戦を実行するのは明日になる事が決定。体調もよくなり、俺も手伝いを再開しいよいよその時が近づき始めた。
そして日が暮れる頃には全ての作業が終了し、夜はそれぞれ思い思いの時間を過ごした。
「これで全部終わったんだよな」
「終わったといっても、まだ本番がありますよ巫女様」
「本番といっても頑張るのは歌姫の四人だ。俺達はそれをサポートするだけだよ。あとそろそろ巫女様って呼ぶのやめないか?」
「私はこのままでいいんですよ。巫女様は巫女様なのですから」
「訳が分からないけど、それでいいなら構わないよ。ただし、次の水の姫巫女もちゃんとそうわって呼んであげろよ」
「次の水の姫巫女も巫女様がやられるんですよね? それなら問題ないですよ」
「残念だけどセリーナ、そうはいかない」
「え? それはどういう……」
「俺は明日この世界を去る。死のうが生きようがな」
「ど、どうして、急にそんな事を……」
「急でもなんでもない。それは初めから決まっていたことなんだ。この体がもう長くないのはもう分かっているし、方法が見つかったんだよ。元の世界への帰り方の」
「そんな……そんなの嘘ですよね? 巫女様も随分と大きい冗談を言えるようになりましたね」
「悪いけど冗談ではないんだ。今日アライア姫が教えてくれたんだよ。元の世界に戻る方法がたった一つだけ見つかったって」
話は遡ること二時間前。
作業も順調に進み、最後の行程に入った頃に突然アライア姫に呼び出された。
「どうしたんですかアライア姫、昨日まだ話てないことありましたか?」
「すっかり忘れてたの。あなたに一つ話してないことがあったのを」
「話していないこと? それは俺だけに関係があることですか?」
「ええ。実はねあなた達が歌姫探しに行っている間に、調べて分かった事があったの」
「分かった事?」
「この世界とあなたの世界を繋ぐたった一つの方法よ」
「え?」
最初は俺も信じられなかった。突然だったのでドッキリかなと思っていたが、詳細を聞くとそうではないらしい。
「時空門?」
「そう。あなたがこの世界に来たのも、この世界で起きていた様々な現象も全てそれが関わっていたの」
「そんな感じの話は何度か耳にしていましたけど、その時空門が俺が元の世界に帰れるのと何の関係があるんですか?」
「実はね同じ例が過去にも一度あって、時空門を利用した帰り方まで書いてあったの。最初見た時は驚いたけど、どれも非現実的ではなかった」
「過去に俺と同じようにこの世界に来た人がいたなんて、そんなの信じられないな」
「でも確かな証拠もあるの。そして時空門を出現させる為の方法も分かったの。それが」
「まさかと思うけど、四人の歌姫と関係があるのか?」
「そういうこと。そして時空門が開く可能性が最も高いのが明日の作戦の日。世界の光と共にこの世界にもう一つ奇跡が起きる」
「それが時空門の開門」
俺が元の世界に戻れるたった一度のチャンスって事か。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
たった一度のチャンス、それを逃すわけにはいかない。突然すぎてまともな別れができないのは寂しいがいずれは起きることだというのは分かっていたし、どちらにせよ長くない命。帰るなら生きて帰って、ほんの少しの時間だけでも三人で過ごしたい。
それが俺の気持ちだ。
「だから許してほしい。この世界から去ることを」
「でしたら、今すぐにお別れ会を開きましょう」
「今すぐにって、皆疲れてるからそれは……」
「迷っている場合ですか! 早くしましょうよ、咲田様!」
「じゃあ何で動揺するんだ?」
「そ、それは……」
「いいんだよ、分かっているから。見守りたいんだろ、大切な妹をさ」
シャイニーが光の歌姫と面識がなかったのは、実の姉である彼女が名前を変えてまで光の歌姫になったから。部屋に引きこもりになってしまったと言っていたが、彼女はあの神殿で何かをしていたからなのかもしれない。だから勘違いしていたのかもしれない。部屋から出てきていないと。
「も、もうお見通しって事ですか?」
「ああ。お前とシャイニーは声もよく似ているし、結構おどおどする所がある。それが恐らく決め手になった」
「そうですか……やはり、よく似ている姉妹だって言われている分、隠し通せない事もあるんですね」
「そんなもんなんだよ、姉妹ってのは」
何か諦めたかのようにため息をつくライノ。改めて聞くと、この二人の声がよく似ているな。
「キッカケはあの子が光の姫巫女になる為に、命を落とした事です」
「ショックだったか?」
「ショックどころの話ではないですよ。しばらく寝込んでしまいました」
「それはそうか」
しかもその原因が自分だと分かったら、もっとショックだろう。大切な妹が自分のせいで死んだ、つまり自分が殺してしまったようなものだからな。
「あの子が光の姫巫女になって五年の間、必死に考えました。どうすればこの罪が拭えるのかと」
「その結論が、光の歌姫になって、シャイニーを守ることか」
「はい。歌姫は姫巫女程の力は持っていませんが、守ることくらいはできます」
「自分が姉である事実を隠してまでか?」
「遠くから見守る、それだけでいいんです。それが私の選んだ道ですから」
「選んだ道ねえ」
何か生き別れした姉妹みたいになっているけど、これはこれでいいのだろうか? いずれ分かってしまう事とはいえ、こうしてずっと黙っているとシャイニーも辛いのではないかと思う。あいつも自分のせいで姉が引きこもってしまっていると思っている。こんな負の連鎖だけが続いても、意味をなさないのではないか?
「姉妹とか兄弟とか俺には分からないけどさ、お互い隠し事をしていても辛いだけじゃないのか?」
「いずれ知られるのは分かっています。けど、今はこれでいいんです」
「そっか。それならいいか」
「だからこの事はあの子には内緒にしておいてください」
「分かっているよ」
もしかしたら、シャイニー自身が気づいてしまうかもしれないけどね。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎ 
その後は部屋に戻って、何もない一日を過ごした。その間にも会場作りは順調に進み、作戦を実行するのは明日になる事が決定。体調もよくなり、俺も手伝いを再開しいよいよその時が近づき始めた。
そして日が暮れる頃には全ての作業が終了し、夜はそれぞれ思い思いの時間を過ごした。
「これで全部終わったんだよな」
「終わったといっても、まだ本番がありますよ巫女様」
「本番といっても頑張るのは歌姫の四人だ。俺達はそれをサポートするだけだよ。あとそろそろ巫女様って呼ぶのやめないか?」
「私はこのままでいいんですよ。巫女様は巫女様なのですから」
「訳が分からないけど、それでいいなら構わないよ。ただし、次の水の姫巫女もちゃんとそうわって呼んであげろよ」
「次の水の姫巫女も巫女様がやられるんですよね? それなら問題ないですよ」
「残念だけどセリーナ、そうはいかない」
「え? それはどういう……」
「俺は明日この世界を去る。死のうが生きようがな」
「ど、どうして、急にそんな事を……」
「急でもなんでもない。それは初めから決まっていたことなんだ。この体がもう長くないのはもう分かっているし、方法が見つかったんだよ。元の世界への帰り方の」
「そんな……そんなの嘘ですよね? 巫女様も随分と大きい冗談を言えるようになりましたね」
「悪いけど冗談ではないんだ。今日アライア姫が教えてくれたんだよ。元の世界に戻る方法がたった一つだけ見つかったって」
話は遡ること二時間前。
作業も順調に進み、最後の行程に入った頃に突然アライア姫に呼び出された。
「どうしたんですかアライア姫、昨日まだ話てないことありましたか?」
「すっかり忘れてたの。あなたに一つ話してないことがあったのを」
「話していないこと? それは俺だけに関係があることですか?」
「ええ。実はねあなた達が歌姫探しに行っている間に、調べて分かった事があったの」
「分かった事?」
「この世界とあなたの世界を繋ぐたった一つの方法よ」
「え?」
最初は俺も信じられなかった。突然だったのでドッキリかなと思っていたが、詳細を聞くとそうではないらしい。
「時空門?」
「そう。あなたがこの世界に来たのも、この世界で起きていた様々な現象も全てそれが関わっていたの」
「そんな感じの話は何度か耳にしていましたけど、その時空門が俺が元の世界に帰れるのと何の関係があるんですか?」
「実はね同じ例が過去にも一度あって、時空門を利用した帰り方まで書いてあったの。最初見た時は驚いたけど、どれも非現実的ではなかった」
「過去に俺と同じようにこの世界に来た人がいたなんて、そんなの信じられないな」
「でも確かな証拠もあるの。そして時空門を出現させる為の方法も分かったの。それが」
「まさかと思うけど、四人の歌姫と関係があるのか?」
「そういうこと。そして時空門が開く可能性が最も高いのが明日の作戦の日。世界の光と共にこの世界にもう一つ奇跡が起きる」
「それが時空門の開門」
俺が元の世界に戻れるたった一度のチャンスって事か。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
たった一度のチャンス、それを逃すわけにはいかない。突然すぎてまともな別れができないのは寂しいがいずれは起きることだというのは分かっていたし、どちらにせよ長くない命。帰るなら生きて帰って、ほんの少しの時間だけでも三人で過ごしたい。
それが俺の気持ちだ。
「だから許してほしい。この世界から去ることを」
「でしたら、今すぐにお別れ会を開きましょう」
「今すぐにって、皆疲れてるからそれは……」
「迷っている場合ですか! 早くしましょうよ、咲田様!」
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