この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第63話再会なき別れ
という訳で突然開かれる事になった俺の送別会。歌姫四人とアライア姫は不在の中で行われたが、皆俺がもうすぐこの世界から離れる事にかなりショックを受けていた。それでも受け入れてくれたので俺は嬉しかった。
「もう咲田ぁはぁ〜、いつもぉ突然すぎるのよぉ〜」
「全くぅ、本当ですよねぇぇ」
だがその場にお酒を持って来たのが一番の失敗だった。収穫祭前夜に、皆が酒に弱いのを知っていたのに、何で俺は学ばないのだろうか。しかも新たにセリーナもアルコールに弱いことが判明。弱いなら最初から飲まないでほしい。
「咲田ぁ、妾はすごく寂しいのじゃぁ。お主にもう、会えないなんてぇ」
「何言ってんだよ。まだ明日があるだろ?」
「でも明日が終わったら、私達一生会えないんですよ? それがどういう意味か分かっていますよね?」
「あ、ああ」
一生会えない。
唯一酔っていないシャイニーのその言葉が、俺の胸に深く突き刺さった。小説の世界だと、また会えるよねみたいな会話をするけど、俺の場合は全く違うのだ。もう死んでいる為、一度この世界を去ってしまうと、それは一生の別れを意味することになる。そう、俺達はもう会えないのだ二度と。
「咲田君、私は引き止めたりはしません。最初からそうなることは分かっていたのですから。でも突然すぎますよ」
「悪かった。俺も突然の話だったから、ちょっと戸惑っているよ」
「またまたぁ、咲田はぁそんな事言ってぇ、予感はしていたくせにぃ」
「うっ、それは……」
グリアラの言う通り、予感がしていたのは否定しない。でもそれを、素直に言葉にはできなかった。
「もう巫女様ぁ、私ものすごく寂しいんですよ? それなのに相談の一つもしないでぇ。もう少し私達の気持ちも分かっへくらふぁい……」
「喋りながら寝るなよ……」
「妾もそのまま寝るのじゃぁぁあ」
「叫ぶな!」
「ぐーすぴー」
「よく寝れるなそこから!」
「咲田君、うるさいですよ」
「ご、ごめん」
思わず叫んでしまった自分が若干恥ずかしく思ってしまう。
(気持ちを分かってください、か)
確かに俺は何も分かっていないかもしれない。皆の気持ちとか、色々なことが。でも俺は、その気持ちを振り払わなければならないのだ。帰るべき場所に帰る為に。
「咲田君、私は引きとめないと言いましたが、皆がそう思っているとは言えません。本当は帰ってほしくないと思っている人だっているのを分かってください」
「ああ」
こうして何とも締まらない形で俺の送別会は幕を閉じた。まだまだ言いたいことはあるけど、今はそれでいい。全ては明日、この世界に光が戻った時に伝えよう。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
昨日は案外グッスリ眠れたからか、朝の目覚めは悪くなかった。
(ついに迎えたか、この日を)
時間を見ると、まだ朝の早い時間帯。起きている人はいたりするのだろうか?
「あら、意外と起きるの早いのね」
眠気を覚ます為に外へ出ると、誰かに声をかけられる。どうやら俺よりも先に起きている人がいたらしい。
「何だよ昨日あれだけ酔っていたくせに、起きるのは早いんだな」
「酔うのは早いけど、覚めるのも早いの私は」
先客はグリアラだった。服装は昨日のまま。昨日はあのまま眠って、そのまま起きて外にでも出たのだろうか?
「昨日の記憶がほとんどないけど、今日ここから去るのよね?」
「ああ。生か死かどちらにころんでも、俺はこの世界から去る」
「生か死かって、死ぬつもりでいるの?」
「そうじゃない。そんな予感がするんだよ。俺の命はあと数日ももたないって」
「まあ何度も倒れれば、そう考えるようになるわよね」
「ああ」
そこで会話がしばらく止まる。二人とも何も考えず、ボーッとしているだけの時間が過ぎて行く。
「二ヶ月、よね。咲田がこの世界に来てから」
「そうだな。と言っても、水の姫巫女としてだけどな」
「まさか新しい水の姫巫女の中身が男だなんて、ビックリしたわよ。でも今の咲田の姿を見て、あ、やっぱりそうなんだって思った」
「まあ、普通は信じられないからな」
「初めて出会ったのは、水の姫巫女生誕記念パーティー、より少し前だったかしら?」
「俺がまだ水の姫巫女になって、一日も経ってない頃だよ」
「私が突然話しかけたんだっけ」
「そうそう。最初は不審者かと思ったよ」
「随分と酷いこと言うわね」
二人で思い出話に花を咲かせる。二ヶ月、色々あったけど、あっという間の時間だった。夏休みの思い出としてはちょっとハードな内容ではあったけど、それでいい。こんなにも楽しい人達に会えたのだから。
「寂しくなるわ」
「そうだな。でもいつかは来る運命だったのは違いない」
「運命ねぇ」
「二度と会えないけど、それも仕方がないよ。元はといえば、自業自得だし」
「二度と会えないなんて言ってほしくないけど、それもまた事実なんでしょ? でも、私達は絶対に忘れないと思う。咲田がいたという事実を」
「それだけ言ってもらえるだけでも俺は嬉しいよ」
俺だって忘れるもんか。ここで過ごした二ヶ月の思い出を、冥土の土産としてあの世に持って帰る。
「さてと、そろそろ皆起こすわよ」
「そうだな」
気がついたらかなりの時間が経過していた。そろそろ皆を起こさなければ。
「そうだ、咲田!」
「どうかしてか?」
「ありがとう!」
「っ!」
不意の言葉に思わず目頭が熱くなる。
(馬鹿、お礼を言うのはこっちなんだよ)
ありがとう、グリアラ。
「もう咲田ぁはぁ〜、いつもぉ突然すぎるのよぉ〜」
「全くぅ、本当ですよねぇぇ」
だがその場にお酒を持って来たのが一番の失敗だった。収穫祭前夜に、皆が酒に弱いのを知っていたのに、何で俺は学ばないのだろうか。しかも新たにセリーナもアルコールに弱いことが判明。弱いなら最初から飲まないでほしい。
「咲田ぁ、妾はすごく寂しいのじゃぁ。お主にもう、会えないなんてぇ」
「何言ってんだよ。まだ明日があるだろ?」
「でも明日が終わったら、私達一生会えないんですよ? それがどういう意味か分かっていますよね?」
「あ、ああ」
一生会えない。
唯一酔っていないシャイニーのその言葉が、俺の胸に深く突き刺さった。小説の世界だと、また会えるよねみたいな会話をするけど、俺の場合は全く違うのだ。もう死んでいる為、一度この世界を去ってしまうと、それは一生の別れを意味することになる。そう、俺達はもう会えないのだ二度と。
「咲田君、私は引き止めたりはしません。最初からそうなることは分かっていたのですから。でも突然すぎますよ」
「悪かった。俺も突然の話だったから、ちょっと戸惑っているよ」
「またまたぁ、咲田はぁそんな事言ってぇ、予感はしていたくせにぃ」
「うっ、それは……」
グリアラの言う通り、予感がしていたのは否定しない。でもそれを、素直に言葉にはできなかった。
「もう巫女様ぁ、私ものすごく寂しいんですよ? それなのに相談の一つもしないでぇ。もう少し私達の気持ちも分かっへくらふぁい……」
「喋りながら寝るなよ……」
「妾もそのまま寝るのじゃぁぁあ」
「叫ぶな!」
「ぐーすぴー」
「よく寝れるなそこから!」
「咲田君、うるさいですよ」
「ご、ごめん」
思わず叫んでしまった自分が若干恥ずかしく思ってしまう。
(気持ちを分かってください、か)
確かに俺は何も分かっていないかもしれない。皆の気持ちとか、色々なことが。でも俺は、その気持ちを振り払わなければならないのだ。帰るべき場所に帰る為に。
「咲田君、私は引きとめないと言いましたが、皆がそう思っているとは言えません。本当は帰ってほしくないと思っている人だっているのを分かってください」
「ああ」
こうして何とも締まらない形で俺の送別会は幕を閉じた。まだまだ言いたいことはあるけど、今はそれでいい。全ては明日、この世界に光が戻った時に伝えよう。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
昨日は案外グッスリ眠れたからか、朝の目覚めは悪くなかった。
(ついに迎えたか、この日を)
時間を見ると、まだ朝の早い時間帯。起きている人はいたりするのだろうか?
「あら、意外と起きるの早いのね」
眠気を覚ます為に外へ出ると、誰かに声をかけられる。どうやら俺よりも先に起きている人がいたらしい。
「何だよ昨日あれだけ酔っていたくせに、起きるのは早いんだな」
「酔うのは早いけど、覚めるのも早いの私は」
先客はグリアラだった。服装は昨日のまま。昨日はあのまま眠って、そのまま起きて外にでも出たのだろうか?
「昨日の記憶がほとんどないけど、今日ここから去るのよね?」
「ああ。生か死かどちらにころんでも、俺はこの世界から去る」
「生か死かって、死ぬつもりでいるの?」
「そうじゃない。そんな予感がするんだよ。俺の命はあと数日ももたないって」
「まあ何度も倒れれば、そう考えるようになるわよね」
「ああ」
そこで会話がしばらく止まる。二人とも何も考えず、ボーッとしているだけの時間が過ぎて行く。
「二ヶ月、よね。咲田がこの世界に来てから」
「そうだな。と言っても、水の姫巫女としてだけどな」
「まさか新しい水の姫巫女の中身が男だなんて、ビックリしたわよ。でも今の咲田の姿を見て、あ、やっぱりそうなんだって思った」
「まあ、普通は信じられないからな」
「初めて出会ったのは、水の姫巫女生誕記念パーティー、より少し前だったかしら?」
「俺がまだ水の姫巫女になって、一日も経ってない頃だよ」
「私が突然話しかけたんだっけ」
「そうそう。最初は不審者かと思ったよ」
「随分と酷いこと言うわね」
二人で思い出話に花を咲かせる。二ヶ月、色々あったけど、あっという間の時間だった。夏休みの思い出としてはちょっとハードな内容ではあったけど、それでいい。こんなにも楽しい人達に会えたのだから。
「寂しくなるわ」
「そうだな。でもいつかは来る運命だったのは違いない」
「運命ねぇ」
「二度と会えないけど、それも仕方がないよ。元はといえば、自業自得だし」
「二度と会えないなんて言ってほしくないけど、それもまた事実なんでしょ? でも、私達は絶対に忘れないと思う。咲田がいたという事実を」
「それだけ言ってもらえるだけでも俺は嬉しいよ」
俺だって忘れるもんか。ここで過ごした二ヶ月の思い出を、冥土の土産としてあの世に持って帰る。
「さてと、そろそろ皆起こすわよ」
「そうだな」
気がついたらかなりの時間が経過していた。そろそろ皆を起こさなければ。
「そうだ、咲田!」
「どうかしてか?」
「ありがとう!」
「っ!」
不意の言葉に思わず目頭が熱くなる。
(馬鹿、お礼を言うのはこっちなんだよ)
ありがとう、グリアラ。
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