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この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

最終話未来

 目が覚めた。

 いつもの部屋で。

 異世界ではなく元の世界で。

(俺、帰ってきたんだ)

 体は動く。だけど少し重い。

(当たり前か。一度死んでいるし、もう長くないもんな)

 元の世界に戻ってきても、寿命がほんの少ししかないのは分かっている。だから、そのほんの少ししかない時間は、大切な友と一緒に過ごそうと決めた。

(とりあえず、ここを出て会いに行こう)

 ずっと会いたかった二人に。


 ピンポーン

 まず訪れたのは向日葵の家。どちらが先でも良かったのだが、一番最初に彼女に会いたかった。

「はーい、どちらさ……」

 いつもの声。いつもの姿。彼女はあの日から何も変わっていなかった。

「た、ただいま」

「そ、咲ちゃ……ん? 咲ちゃんなの?!」

「ああ。俺だよ。向日葵」

「咲ちゃぁぁぁん」

 玄関から飛ぶようなに俺の元へくる向日葵。それをしっかり受け止めた俺は、彼女を優しく抱きしめた。

「やっと……やっと、咲ちゃんに会えた。二ヶ月ずっと待っていた。咲ちゃんが帰ってくるのを……」

「待たせて悪かったな、向日葵」

「馬鹿! 咲ちゃんの馬鹿!」

「本当にごめんな……」

 帰るべき場所に帰ってこれた幸せ、ずっと会いたかった人との再会。それは俺を優しさという光となって包んでくれた。

(やっと……やっと再会できたんだ)

「向日葵」

「ん?」

「ただいま」

「おかえりなさい」

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 その後向日葵と一緒に、雄一の元へも向かい、二ヶ月ぶりに三人が再会することができた。

「情けないな雄一、男のくせに」

「う、うるへぇ」

 俺と再会するなり雄一は号泣。俺も思わずもらい泣きしそうになった。けど、二人にはちゃんと説明しなければならない。これからの事を。

「そんな……今の話本当なの? 咲ちゃん」

「ああ。今この体で生きられていること自体が奇跡に近い。だから近いうちに俺は死ぬ」

「何だよそれ……折角再会できたのに、そんなのってありかよ」

 以前の俺だったら、再び別れることが辛くて受け入れられなかったかもしれない。

「正直な話をすると、俺も嫌だ。折角こうしてまた三人で会えたんだから、長生きしたい」

 だけれど、今は違う。

「でもその運命、ちゃんと受け入れようと思う。皆が与えてくれたほんの少しの時間を、俺は大切にしたい」

 俺はあの世界で色々なことを学ばさせてもらった。最初は巫女になってしまった自分が、とても情けなくて、惨めだった。けれども、セリーナ、グリアラ、シャイニー、ムウナ、そしてアライア姫。俺は沢山の人達と出会って、それぞれがどんな思いで、死後の自分と向き合っているのかを学ばさせてもらった。

「別れることは辛いけど、それは未来への架け橋にだってなる。だから俺は、一度死んで、もう一度生まれ変わって、それから……」

 だからそれを、俺は生かしたい。もう一度生まれ変わって、今度は普通の人間としてまた新しい人生を歩みたい。

「それから……」

 だから今は、やって来るであろう別れを……。

「咲ちゃん。よく頑張ったね」

「っ!?」

「私分かってたんだ。もし帰ってこれたとしても、長くはないんだろうなって。だからね、私も受け入れるよ咲ちゃんの死を」

「そうだな。向日葵の言う通りだ。俺も分かっていたよ。だから受け入れるよ」

「向日葵、雄一……」

「お疲れ様咲ちゃん。私達といてくれて、ありがとう」

「うぅ、うわぁぁん」

 沢山の涙と共に、受け入れよう。


 結局俺が死んだのはそれから一ヶ月後。本来なら一週間ももたないと思っていた。だけれど、意外としぶといのか一ヶ月も生かさせてもらった。
 その一ヶ月、俺達は時間が許す限り出かけて、遊んで、笑って、泣いて、出来ること全てをやり尽くした。最後の数日は、体が動かなくて二人には結構世話になったけれど、それも今となってはいい思い出。

(これで、今度こそ俺は天国に行くんだな)

 三ヶ月前、不幸な事に命を落としてしまった俺の余生はこれにて終わりを告げる。いつかまた、生まれ変われたとしたら、その時は何年かかろうが二人の元へ会いに行きたい。

(だからせめて、その時まで)

 どうか安らかに、おやすみなさい。

 おしまい……?




「確かに俺はいつかまた、生まれ変わりたいとは言ったよ」

「うんうん」

「それでそれで?」

「生まれ変わりたいとは言ったけどさ……」

 神様、俺は今一度文句を言いたい。確かに俺はもう一度生まれ変わりたいとは言った。そして何年かかっても二人の元へ行きたいと言ったよ。けどな、

「何でまた俺は女に生まれ変わるんだよぉぉぉ!」

 生まれ変わるなら、せめて男として生まれ変わりさせてくれよ! これじゃああの時と、何にも変わってないだろ。

「いいじゃん。似合っているよ咲ちゃん」

「本当似合っているな楓ちゃん」

「向日葵はともかく、お前はそっちの名前で呼ぶなぁぁ」

 どうやら俺はまだ、そう簡単には死なさせてくれないらしい。

「いいだろ? 可愛いし」

「そうそう。可愛いよ咲ちゃん」

「お前ら、覚えていろよな! 絶対男に戻ってやるからな」

 俺の新たな人生は、まだまだ始まったばかりだ。

 おしまい

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