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この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

Day after〜いつかまた青空の下で〜

 咲田様が世界から去ったあの日から数日が経ち、私セリーナはこの国ウォルティアの姫として新しい人生を歩み始めようとしていた。

「それにしても巫女の使いが、まさか姫になるなんて、とんだシンデレラストーリーよね」

「そうじゃのう。これも咲田のおかげかのう」

「そうかもしれませんね」

 今日はその就任式なのだが、そんな雰囲気を一切感じさせないくらい三人の姫巫女は自由だった。私はこれから大きな役目を任されるから緊張しているというのに、この温度差。まあ、三人は当事者ではないので普段通りで構わないのだけど……。

「何でわざわざ私の部屋で話をしているのですか?」

 全てが元通りになったので、崩れたウォルティア城も復活。勿論私の部屋も復活したのだけれど、広くはないので四人がいると少し狭く感じる。

「緊張をほぐしに来てあげているのに、酷いこと言うわねお姫様」

「そうじゃそうじゃ。妾をもっと敬えお姫様」

「明らかにからかいに来ていますよね二人は」

「だって楽しいんだもん」

「そうじゃそうじゃ。今日は祝い事なのじゃから、もっと楽しむのじゃ」

「シャイニーさん助けてくださーい」

「いいじゃないですかたまには」

「良くないですよー」

 つかの間の楽しいひと時。この後大事な行事を控えている私にとって、この時間はとても貴重だった。三人も分かってくれていたのか、とにかく笑いが絶えなかった。でもやっぱり、そこには何かが足りない。たった一人いないだけで、こんなにも変わるなんて思いもしなかった

(咲田様……)

 ただ寂しい。それだけの言葉しか出てこない。でもこれからはそれが当たり前の日常に戻る。この二ヶ月が特殊だっただけの話。だから私も前に踏み出さなきゃ。

「さてそろそろ時間ですね。皆さんはこれからどうされるんですか?」

「勿論聞くわよ。あなたの演説。何せこれからが始まりなんだから、しっかりしなさいよ」

「分かっていますよ。全てはこれからなんですから」

「妾達もついておるからな。安心せい」

「頑張って来てください、セリーナさん」

「はい。では皆さん、行って来ます」

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 正直な話をすると、私にこの国の姫なんて務まらないと思ってしまう。いきなりの話だたったうえに、自分はそんな柄ではないと思う。

「国民の皆様、こんにちわ。この度新たにウォルティア王国の姫を務めることになりましたセリーナです」

 でもそんな考えも多くの人の目の前に立ったら、吹き飛んでしまった。緊張しているから、というのもあるかもしれないが、今こうしてウォルティアを改めて眺めると、こう思うのだ。

「いきなりの就任で、皆様も不安だと思いますが、私は皆様のその不安がなくなるような姫としての務めを果たせればいいかなと思います」

 ああ、この世界を守れて良かったなと。

 私は何もしていないけれど、これからそれを守っていく役目がある。そう、私はこの国が、世界が好きなんだ。だから柄とかそんなのは関係ない。この世界を守りたいという気持ちがあれば、きっとこの先も続けられる。

「私が今ここにいられるのはある人のおかげかもしれません。私はある人の元で二ヶ月仕えていました。その人は今はもういませんが、いなくなってから改めてその存在の大きさを思い知らされました」

 姿が途中で変わっても、彼は彼だった。最後まで水の姫巫女として務めた彼は立派で、色々と感謝したい事が沢山ある。でもその言葉はもう届かない。

「でもいない人に、いつまでもすがっているわけにもいかないので、今度は国民の皆様を頼ろうと思います。皆で手を取り合って、一つの国を作り上げましょう」

 そう、彼はもういない。だから今度は多くの人と支え合うとこをここに誓おう。それが彼から学んだ在り方なのだから。

「以上です。ここまで聞いてくれてありがとうございました」

 頭を下げると、拍手が一斉に湧き上がった。大した挨拶はしていないのに、ここまで拍手がわくと少し恥ずかしい。

(これでいいんですよね? 咲田様)

 そして月日はさらに流れ……。

「もう就任して、二年が経つんだっけ? あんたも」

「そうですね。早いものでもう二年が経ちます」

 あれからもうすぐ二年が経とうとしている。

「もう二年と言うべきか、まだ二年と言うべきか。あっという間なものじゃな」

「でもまさか、その二年目にまた面白いことが起きるなんて思っていませんでしたよ」

「うるせえ。何で俺がこんな目に……」

 そんな二年目の夏、再びこの世界では面白い事が起きていた。今度は姫巫女とか全く関係なく、異世界から来訪者がやってきた。その彼は、勿論咲田様ではないのだけれど、偶然なのか二人はよく似ている。

「別に悪いことをしているんじゃないんですから、怒らないでくださいよ」

「怒りたくもなるだろ! 早く元の世界に帰してくれ」

「皆最初はそんな事言うんですよ」

「皆って、俺以外にいたのか?」

「ええ、いましたよ。ねえ? グリアラさん」

「いた、いた。確か二年前だったわね」

「へえ、どんなやつだったんですか?」

「どんな奴と聞かれたら、そうじゃのう。最初女の姿をしておったのう」

「途中から男の姿になりましたけど」

「何ですかそいつ、会ってみたいな」

「残念だけど死んでいますよ」

「そっか。死んでいるのか……」

「まあそんな落胆しなくても、いつかは会えるわよね」

「そうですね。約束もしていますから」

 そう、いつかは会える。人は死んでも生まれ変われば、いつかは会える。簡単な話ではないけど、私は信じている。

 いつかまた、この場所で彼と再会できることを。


 この綺麗な青空の下で、再会できることを。


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「へっくしょん」

「あれ? どうしたの? 咲田ちゃん」

「いや、誰かが噂しているんだと思う。あとその呼び方はやめてくれ」

「だってお前、あっちの世界でも女だったんだろ? だったら問題ないだろ?」

「いや、問題はあるからな。普通に」

 この姿であの世界には戻りたくないよな……。

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