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この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

第1話あの夏の思い出

あの夏の出来事から四年。今俺は見た目は女子、中身は男だけどおかまではないという、奇妙な境遇の中を生きている。

「男として生まれ変わりたかった……」

「もう一回転生すればいいんじゃね?」

「無茶言うな」

水の姫巫女として生活した経験(?)を生かして、今は春風咲田としてではなく真下ゆかり(名前は適当につけた)として生活している。ただ、親は俺が完全に死んだ事になっているので、必死にお金を工面して一人暮らしをしている。

「最初は俺も驚いたよ。生まれ変わって会いに来るって言って死んでから、一ヶ月も満たない内に会いに来るんだもんな」

「しかも可愛くなったもんね」

「そんな物理的に可愛くはなりたくなかったんだけど。そもそも可愛いはないだろ!」

こんな調子が毎日続く中で、やはり俺の頭の片隅には常に姫巫女として過ごしたあの日々があった。セリーナや他の姫巫女達と過ごした二ヶ月。思い返すと人生で一番長く感じた二ヶ月だったのかもしれない。

(戻れたら戻りたいよな……)

それは多分叶わない願いだと思う。だけど今一度その機会があるなら俺は……。

「なんだよ咲田、またお前が過ごした異世界の事思い出してたのか?」

「まあな。やっぱり忘れられないんだよ」

「よかったらまた、話聞かせてよ。咲ちゃんが過ごした異世界の話」

「あ、俺も聞かせてくれよ」

「もうそれ何度目だよ二人とも。話すネタもう尽きたんだけど」

「それでもいいの」

「無茶ばかり言うなお前達は」

あれから四年。果たしてセリーナ達は元気にしているのだろうか? 彼女達に思いを馳せながら俺は二人にあの時の事を話すのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「時空門がまた開くんですか?」

「そうみたいなのじゃ。もしかしたらまた新たな来訪者が来るかもしれぬ」

大地の姫巫女ムウナからその話を聞いたのは、ウォルティアが再建されてから間もなく四年が経つある日の事だった。

「というかまたサラッと私の部屋に入んないでくださいよ」

「水くさい事を言うでないセリーナ。妾達はもうそういうのを許せる仲じゃろ」

「一応私国の姫ですからね」

「何を今更言っているのよセリーナ。こうして私も勝手に入れるんだから、姫も何も関係ないじゃない」

「グリアラさんまで勝手な事しないでください!」

「わ、私も一応いますから」

「シャイニーさんも!」

いつものように私の部屋は騒がしい。四年まで姫巫女はそれぞれバラバラの場所で暮らしていたのに、何故か最近異様に集合率が高い。まあこうして仲良くなっているのも、ある人物のおかげでもあるんだけど。

「それより先程の話は本当なんですか? 時空門がまた開かれるって」

「嘘ではない。水の姫巫女が再びいなくなった今、新たな姫巫女が呼ばれようとしておる」

「また新たな人がこの世界に」

他の姫巫女達は長らく続いているのに、水の姫巫女は頻繁に変わる事が多い。二年前に来た別の子も先日いなくなったので、また新しい水の姫巫女になる人物がこの世界に呼ばれる。

(一体どんな子なんでしょうか)

「そういえばもう四年経つのよねあれから」

「そうじゃな。咲田は無事帰れたかのう」

「きっと帰れましたよ。そして残る余生を平穏に過ごして天国に」

「そうだとよいな」

巫女達がしみじみに語る。四年前、同じように水の姫巫女としてこの世界にやって来た春風咲田は、世界が一つになる重要な役割を担った人物だった。
彼がいなければ、今この世界は成り立っていなかったとも言える。だけど彼は既にその命を落としており、元の世界に帰っても長くは生きれない事になっていた。

「もう一度会いたいですね、咲田様に」

懐かしい人を思い出して、思わずそんな事を呟いてしまう。もうそれは叶わないと分かっていても、私はそれを望んでいた。

「とりあえず時元門が開かれるのは、恐らく二日後じゃ。準備はしておいたほうがよいぞ」

「そうですね。少し準備してきます」

三人を置いて私は部屋を出る。

(咲田様……)

この約束はいつ果たされるのでしょうか。
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「ったく、人の家に来ておいて少しは片付けて帰れよな」

雄一と向日葵にまたあの話をさせられてから数時間後、二人は聞くだけ聞いて帰っていった。それぞれ就職とかでなかなか会える機会が減っているから嬉しい事は嬉しいんだけど、会う度に話題があれだと少し困る。

(そっか、四年か……)

夏に水難事故にあって、姫巫女に転生したあの日から四年。長いようで短く感じる。だからこそ、あの事は忘れられないのかもしれない。

(もう一度行けたらなぁ)

そんな事を考えながら片付けを進める。一体あの後セリーナはウォルティアの姫になったのだろうか。グリアラやシャイニー達は元気にしているだろうか。色々考えてしまう。

(でもきっと、大丈夫だよな)

あれだけ大きな事を乗り越えたのだから、きっと大丈夫だろう。願わくは一度でもいいから、会っては見たいけど。

『ならばその願い、世界を救った功績として叶えてしんぜよう』

「え?」

どこからか突然声がする。そしてその次の瞬間、俺の視界は光に包まれていた。

『時空が開かれた今、そして閉じるまでの三日、お主に今一度戻る機会を与える。精一杯楽しむがよい。世界を救った英雄よ』

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