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この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

第2話今ここにある喜び

 光が消え、ゆっくり目を開くとそこは懐かしのあの場所だった。

「お目覚めですか? 新しい姫巫女様」

 そして視界の隅に映るのは四年振りに見かけるあの人物。どうやら外見は女子なので、彼女はこの人物が今の俺だとは気づいていないらしい。

(新しい姫巫女って事は、また水の姫巫女としてこの世界に来たみたいな感じか)

 ただここに滞在できるのは三日だって天の声は言っていたし、多分別の人物なんだろうな。

「突然の事で状況が理解できていないと思いますが、あなたは水の姫巫女になってもらうために」

「知っているよ、セリーナ」

「え?」

 思考を巡らせている内に話が進んでいたので、挨拶がてら素の声で彼女の名を呼んだ。

「どうして私の名前を?」

「もしかして忘れたのか? まあ、また転生しているし気づかないのも当然だけど」

「も、もしかしてその声……咲田様ですか?」

「ああ。久しぶりだなセリーナ」

「咲田様!」

 飛びついてくるセリーナを何とか俺は受け止める。よほど嬉しいのか、涙も流している

「私ずっと待っていました。いつかは帰ってきてくれるって」

「だいぶ待たせてしまって悪かったな。一ヶ月あの後生きれたんだけど、何かまた転生しちゃって今はこんな体になってる」

「どんな体でもいいです。咲田様は咲田様ですから」

「せめて男として認めともらいたいんだけどな」

 苦笑いしていると、グリアラやシャイニー、そしてムウナいった懐かしい面々が部屋に入ってくる。

「どうしたのじゃセリーナ。外にも響いておるぞ」

「だって咲田様が……」

「咲田がどうしたのじゃ?」

「よっ、ムウナ久しぶり」

「何じゃお主、何故妾の名を」

「そ、その声もしかして」

 声を聞いてグリアラが最初に反応を示す。今更だけどよくセリーナもグリアラも、声で分かるよな。

「そ、咲田なの?」

「そうだよ、グリアラ。久しぶりだな」

「なっ、咲田じゃと」

「そ、咲田君なんですか?! 本当に」

「見た目は変わったけど、俺は間違いなく春風咲田だ。元気だったか三人共」

『咲田ぁ!』

「ちょ、お前ら三人して一気に飛びついてくるな」

 セリーナは受け止められたものの、三人が一斉に飛びついてきてしまうと流石にバランスを崩してしまう。勢いのまま地面に倒れた俺は、四人がのしかかりながらも思わず笑みがこぼれてしまった。

「ははっ、何も変わってないなお前達は」

「そういう咲田様も」

「見た目は変わったけど」

「中身は相変わらずじゃの」

「おかえりなさい、咲田君」

「ああ、ただいま。皆」

 四年振りの再会は、笑顔と少しだけ嬉し涙が混ざった何ともおかしな形になった。
 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「三日だけですか?」

「ああ。どの神様が与えてくれた機会か分からないけど、時空門が開かれて閉じるその間までという事らしい」

「何か寂しいわね。それだけ短いと」

 少し落ち着きを取り戻した後、俺は四人にこの世界にやって来た経緯を説明した。二人が言う通り三日は短いかもしれないけど、一度あるかないかの機会だし俺はそれを大切にしたい。

「そういえばすっかりウォルティアの姫として様になってるな。もう就任して四年か?」

「はい。もう四年が経ちますけど、私咲田様にその事話しましたっけ?」

「見た目ですぐ分かったよ。それにお前ならきっと継ぐだろうなとは思っていた」

 セリーナがアライア姫からその座をしっかりと継いでいる事は、最初に彼女を見た時点で分かっていた。服装とかそういうのではなくて、彼女の顔立ちが四年前よりもしっかりしていて、巫女のつかいから姫に変わった事が一目で見て取れた。

「まだまだヘンテコな姫じゃけどな。妾達が支えてなければ、三日も持たなかったじゃろ」

「し、失礼な。三日坊主みたいな事を私がするわけないじゃないですか。でも御三方がいてくれて助かったところはありましたけど」

「そういえばグリアラ達は平然とここにいるけど、自分達の国の方は大丈夫なのか?」

「咲田のおかげで私達は国境とかそういうの関係なく、もう全ての国が一つになったの。最初は大変なところはあったけど、一応セリーナが頑張ってくれたから」

「一応は余計ですよ」

「へえ、一つの国にね」

 四年前は特別な事がなければ、巫女達が一つの場所に集まる事はなかった。特に地下にある大地の国は色々訳あって地上に出てくる事がなく、地上と地下の住む人達には溝もあった。
 だけど全ては四年前の出来事があったおかげで、今はそういう形になっているらしい。

「実は明日、今の形になってから丁度三年で、それを記念に大きな祭りが行われるんですよ。よろしければ明日はそれを楽しみませんか?」

「祭りか。四年でどのくらいになったか気になるしいいかもな。グリアラ達も参加するのか?」

「勿論。年に一度の記念祭だし、毎年皆で回ってるもの」

「大地の民達も勿論参加しておる。実は妾は店も出しておるのじゃ」

「私も行きます。お姉ちゃんもいますし」

「お姉ちゃん? ああ、もしかして歌姫の」

「はい。咲田くんは知っていたみたいですけど、あの後にお姉ちゃんから話してくれたんです」

「それはよかったな」

「はい」

 本人は結構迷っていたけど、ちゃんとシャイニーに話す事ができたらしい。あんなにバラバラだった世界は、四年経った今は一つになっているに近い。そのキッカケが自分だなんて思うと、少し恥ずかしいけ反面嬉しかったりする。

(本当に変わったんだな、この四年で)

 その姿を今こうして見れたのは、今の俺にとって一番の喜びなのかもしれない。

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