この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

第6話辿り着いた真実

 俺達が向かったのは、ウォルティア城の地上から更に地下深く進んだ場所。かなり前にセリーナに説明された事があるのだが、ウォルティアには始まりの場所と呼ばれる立ち入り禁止の場所がある。立ち入り禁止とあって、今まで一度も触れてこなかったが、あの声が言っていた事とかから推測すると、今回の件を紐解く鍵がそこにある。

「いかにも入ってはいけないオーラが出てるな」

 で、五分後その部屋があるであろう扉の前へと到着。この先に俺が考えているような物があるなら、色々な意味で注意が必要だ。

「咲田、いい加減何があるのか教えて欲しいんだけど」

「この先には恐らく、初代大地の姫巫女が眠っている」

「何じゃと」

 俺の言葉にムウナが反応する。

「どういう事じゃ咲田、ここに初代が何故眠っておる」

「具体的な理由は分からない。だけど昨晩の声は、まるで自分がそうであるかのように話していた。水の姫巫女の身体が見つかっていないという、嘘の事をまるで自分の事であるかのように」

「じゃあその声の主が、大地の姫巫女なの?」

「そういう事だ。ただ、謎なのが何で同じところで初代水の姫巫女が見つかっているのに、大地の姫巫女は見つかっていないのか、なんだよな」

「その現場に大地の姫巫女がいたから、とか」

「だったら行方不明なんて事は起きていないだろ。あとから入ったとしても、同様の事が言える。それに多分その事件以降に立ち入り禁止になったと思うから、まず入れる事ができない」

「そう言われてみれば……」

 いくらかは謎が残っているはものの、多分俺が考えている事は間違っていないはず。
 だからその真相を今から調べる。

「でも何か怖い物を扉の先から感じます」

 シャイニーが扉を見ながら言う。俺も到着して言ったが、扉からはいかにもなオーラが出ていて、ドアノブに手をかける事すら怖い。

(初代水の姫巫女が自殺した場所でもあるからか、やっぱり)

「どうしたの咲田」

「いや、開けたら何か飛び出してきで」

「な、何かって何よ。亡霊でも出てくるといいたいの?」

「中にいるのは亡霊みたいなものだけどさ」


 いつまでもこうしていると、時間が間に合わなくなるので恐る恐るではあるが扉を開ける。中で俺達を 待っていたのは……。

「まさかここにたどり着くとは思っていなかったぞ、咲田
 よ」

「え? お前は」

「どういう事なの」

 声はあの時に聞いた声そのものだった。しかしその姿は、

「な、何故お主がここにおるのじゃ……セリーナ」

 まだ地上にいるはずのセリーナそのものだった。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「そうか、そういう事だったのか」

 俺達の目の前に現れたセリーナ。これで先程までの謎がようやく解けた。

「大地の姫巫女、お前は行方不明だと言われながらも生きていたって事なんだな」

「何じゃと。初代は死んだと思っていたのじゃが」

「忘れたかムウナ。どの姫巫女にも言える事だけど、姫巫女の命は不死と言われているのを」

「っ! そうか、妾はそんな大事な事を忘れておったのか。ずっと姿が見えなかったから、てっきり死んだと勘違いしておったのか」

 灯台下暗しと言うべきか。大地の姫巫女はずっと生きていたのだ。その名を隠してセリーナと言う名で。だから昨晩聞いた話は途中までは嘘ではなかったのかもしれない。

「正しき答えを出してくれた事に感謝する。よくぞ我の正体を見破ってくれた」

「ちょ、ちょっと待ってよ。それじゃあ本当にセリーナは初代大地の姫巫女なの?」

「すまぬグリアラ、シャイニー。お主らを騙すような事をしてしまって」

「そんなの勝手すぎますよセリーナさん。四年も一緒だったのに、今更そんな事を言われたって私………」


「そ、そうよ。謝られたって私達そんなの受け入れられるわけないでしょ!」

 それぞれ信じられないとばかりに訴えかけるグリアラとシャイニー。これが真実ならば、受け入れるしかないのだが、まだ少しだけ疑問が残っている。

「なあセリーナ、お前はここまでずっと俺達を騙してきたけど、何で今になって話そうと思ったんだ? それに昨日の言い方だとまるで自分を殺して欲しいみたいな言い方だったし」

「その通りだからじゃ咲田。我は長い時をこの世界で過ごしてきた。その間色々なものを見てきた。楽しい事も悲しい事も。じゃがそれも、もう終わりにしたいのじゃ」

「終わりにしたいって、そんなに死にたいのかお前は」

「もう充分長生きした。じゃからそこにある剣で、妾の長き人生を終わりにして欲しい。あの時救えなかった水の姫巫女が眠るこの地と共に」

「そんな事言われてもおれにはできるわけ」

 ないと言おうとしたら、俺の代わりに剣を取った人物が一人いた。

「それが初代の望みなら、妾が叶える」

「ムウナ、お前……」

 一人つかつかとセリーナの元へと向かう。だがそれを止めようとするものはいない。本当にこれで終わりでいいのか? セリーナは俺がこの世界に来た時に一番最初からお世話になった人物だ。
 それが演じていたものだとしても、セリーナは俺にとっても皆にとっても大切な人物だ。それを目の前で… …。

「初代よ、妾は今お主の意志を継いで生きてお。それはこの先も変わらぬ。じゃからどうか、安らかにえ

「ありがとう、ムウナちゃん」

 最後に笑顔を見せるセリーナ。その目からは雫が一粒。そしてムウナはセリーナに向けてその刃を振り下ろすのだった。

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