この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第14話それぞれが想う事
翌日の昼頃、俺は向日葵と共に旧グリーンウッドへ向かう準備をしていた。
「なあ咲田、本当に向日葵も連れて行って大丈夫なのか?」
「俺以外にグリアラも連れて行く。シャイニーにはムウナとセリーナの様子も見ていてもらいたいし、雄一にも残っている間に仕事をしてもらいたい」
「俺に仕事?」
雄一に仕事の説明を一通りする。この世界に来て三日の人間にまともな仕事を頼めない事は分かっているので、この世界の知識を得てもらうための仕事だ。
「はあ? 本の解読?」
「そうだ。この城には大きな書庫がある。そこにある、とあるジャンルの本を探してひたすら読み漁ってもらいたい」
「とあるジャンルの本?」
「まあ簡単に言えばこの世界の姫巫女の原点の事だ。どこから姫巫女が生まれる事になったのか、そして原始の姫巫女とはどんな人物なのか、それを俺達がグリーンウッドに行っている間に調べてほしいんだ。そうすれば雄一もこの世界について知ることもできるだろ?」
「まあ確かに、一石二鳥ではあるけどさ。それってその、原始の姫巫女様に直接聞いても良いのか?」
「それもアリかもな。それにこの世界の姫巫女はかなり長生きだ。色々知れると思うぞ」
「そうか。分かった」
正直俺は原始の姫巫女という存在を知るまで、この姫巫女の原点を知らなかった。だからそれを雄一には調べてもらい、その間に俺は別の事をする。多分今後もグリーンウッド以外の国にも回るだろうから、時間はあるだろう。
「咲ちゃん、私は準備できたよ」
「じゃああとはグリアラを呼んで、セリーナにも出発前の挨拶と頼みごとをしないとな」
「頼み事?」
まだ形が残っていれば良いけど、グリーンウッドに行く手段としてはあれが一番最適だ。使うならセリーナの許可も得ないとな。
「あの飛行船は一応残っていますが、運転する方がいませんよ?」
「え、でも六年前は運転手みたいなのがいたはずじゃ」
「それは六年前の話ですからね。今はいませんよ」
「じゃ、じゃあグリーンウッドまでは」
「今は馬車も出せませんから、歩いていくしかありません」
「えー!」
長い長い徒歩での旅は、苦難の幕開けとなった。
■□■□■□
「そもそもグリーンウッドにまで遠いから、私達もなかなか行けなかったのよ」
「もしかして旧グリーンウッドにお前が行かなくなった本当の理由って」
「そういう事」
グリーンウッドに向けて出発してもうすぐ半日が経つ。時々休憩しながら道を進んでいるとはいえ、飛行船で二日はかかった場所を歩いて行ったらどれだけ掛かるかなんて計り知れない。
「咲ちゃん、疲れたよ私」
「さっき休んだばかりだろ。もう少し頑張れよ」
「でももう夜だよ? 私眠い」
「それは俺もそうだけどさ」
昼に出発してもう既に空は真っ暗。グリアラ曰くまだ三分の一も歩いていないらしい。おまけに気温が高いせいで、熱帯夜の中を歩いているような気分になる。
「この調子だとどのくらいかかるんだ? グリアラ」
「多分五日くらいは歩くとは思う。でも一度行かないと駄目でしょ」
「今まで行こうとしなかったくせに言うなよ」
ひたすら歩く俺達。それから更に歩き、向日葵の疲れが限界に達したので、今日は野宿する事になった。
「まさかこの世界に来て野宿をする事になるなんてな」
「しかも暑いし。もう、咲田がもう少し考えて行動すればよかったのよ」
「まさかの俺のせい?! グリアラは反対すらしなかっただろ」
「まあ、咲田の意見には賛成だったからこうして付いてきたんだけどね」
すっかり眠ってしまった向日葵を見ながら、俺とグリアラは会話する。
「ねえ咲田は本当に世界を変えたいの?」
「ああ」
「咲田もシャイニーも本当にいなくなるかもしれないのよ?」
「それでこの世界を本当に救えるなら、俺は迷わないよ」
「でも他の皆の気持ちは考えたの?」
「それは……」
シャイニーからも、向日葵からも色々言われた。特にシャイニーなんかは当事者になってしまうのだから、ああいう言葉になる気持ちも分かる。
「私まだ咲田の気持ちも聞いてないのに、別れるような事になるのは嫌だなぁ」
グリアラがそんなことを言う。俺も男としての責任があるのは理解しているつもりだけど、シャイニーにも告白された以上、すぐに答えを出すことは俺にできない。
「悪いグリアラ。まだ答えは出せない」
「答えを出してくれるって約束はしてくれるの?」
「それはするよ。しないと男として格好悪いしな」
「外見は女だけどね」
「うるせえ」
そんな話をしている間に俺も眠気がやってくる。流石に半日歩いてばかりだったから、明日にも備えて少し眠らないと。
「どうしたグリアラは寝ないのか?」
「私も寝る。でももう少し考え事をしたいの」
「考え事?」
「咲田には分からないことよ。先に寝ちゃっていいよ」
「じゃあお言葉に甘えて、お先におやすみ」
「うん、おやすみ」
俺はグリアラより先に眠りについた。
咲田が眠った後、一人起きていたグリアラは、二人が寝ている場所から少し離れる。
(咲田が考えている事は間違っていない。でも私は……)
好きな人と親友を同時に失うのは、辛すぎる。だから……。
(ごめんね、咲田。今度ちゃんと謝りに行くから)
翌朝、咲田達の元にグリアラの姿はなかった。
「なあ咲田、本当に向日葵も連れて行って大丈夫なのか?」
「俺以外にグリアラも連れて行く。シャイニーにはムウナとセリーナの様子も見ていてもらいたいし、雄一にも残っている間に仕事をしてもらいたい」
「俺に仕事?」
雄一に仕事の説明を一通りする。この世界に来て三日の人間にまともな仕事を頼めない事は分かっているので、この世界の知識を得てもらうための仕事だ。
「はあ? 本の解読?」
「そうだ。この城には大きな書庫がある。そこにある、とあるジャンルの本を探してひたすら読み漁ってもらいたい」
「とあるジャンルの本?」
「まあ簡単に言えばこの世界の姫巫女の原点の事だ。どこから姫巫女が生まれる事になったのか、そして原始の姫巫女とはどんな人物なのか、それを俺達がグリーンウッドに行っている間に調べてほしいんだ。そうすれば雄一もこの世界について知ることもできるだろ?」
「まあ確かに、一石二鳥ではあるけどさ。それってその、原始の姫巫女様に直接聞いても良いのか?」
「それもアリかもな。それにこの世界の姫巫女はかなり長生きだ。色々知れると思うぞ」
「そうか。分かった」
正直俺は原始の姫巫女という存在を知るまで、この姫巫女の原点を知らなかった。だからそれを雄一には調べてもらい、その間に俺は別の事をする。多分今後もグリーンウッド以外の国にも回るだろうから、時間はあるだろう。
「咲ちゃん、私は準備できたよ」
「じゃああとはグリアラを呼んで、セリーナにも出発前の挨拶と頼みごとをしないとな」
「頼み事?」
まだ形が残っていれば良いけど、グリーンウッドに行く手段としてはあれが一番最適だ。使うならセリーナの許可も得ないとな。
「あの飛行船は一応残っていますが、運転する方がいませんよ?」
「え、でも六年前は運転手みたいなのがいたはずじゃ」
「それは六年前の話ですからね。今はいませんよ」
「じゃ、じゃあグリーンウッドまでは」
「今は馬車も出せませんから、歩いていくしかありません」
「えー!」
長い長い徒歩での旅は、苦難の幕開けとなった。
■□■□■□
「そもそもグリーンウッドにまで遠いから、私達もなかなか行けなかったのよ」
「もしかして旧グリーンウッドにお前が行かなくなった本当の理由って」
「そういう事」
グリーンウッドに向けて出発してもうすぐ半日が経つ。時々休憩しながら道を進んでいるとはいえ、飛行船で二日はかかった場所を歩いて行ったらどれだけ掛かるかなんて計り知れない。
「咲ちゃん、疲れたよ私」
「さっき休んだばかりだろ。もう少し頑張れよ」
「でももう夜だよ? 私眠い」
「それは俺もそうだけどさ」
昼に出発してもう既に空は真っ暗。グリアラ曰くまだ三分の一も歩いていないらしい。おまけに気温が高いせいで、熱帯夜の中を歩いているような気分になる。
「この調子だとどのくらいかかるんだ? グリアラ」
「多分五日くらいは歩くとは思う。でも一度行かないと駄目でしょ」
「今まで行こうとしなかったくせに言うなよ」
ひたすら歩く俺達。それから更に歩き、向日葵の疲れが限界に達したので、今日は野宿する事になった。
「まさかこの世界に来て野宿をする事になるなんてな」
「しかも暑いし。もう、咲田がもう少し考えて行動すればよかったのよ」
「まさかの俺のせい?! グリアラは反対すらしなかっただろ」
「まあ、咲田の意見には賛成だったからこうして付いてきたんだけどね」
すっかり眠ってしまった向日葵を見ながら、俺とグリアラは会話する。
「ねえ咲田は本当に世界を変えたいの?」
「ああ」
「咲田もシャイニーも本当にいなくなるかもしれないのよ?」
「それでこの世界を本当に救えるなら、俺は迷わないよ」
「でも他の皆の気持ちは考えたの?」
「それは……」
シャイニーからも、向日葵からも色々言われた。特にシャイニーなんかは当事者になってしまうのだから、ああいう言葉になる気持ちも分かる。
「私まだ咲田の気持ちも聞いてないのに、別れるような事になるのは嫌だなぁ」
グリアラがそんなことを言う。俺も男としての責任があるのは理解しているつもりだけど、シャイニーにも告白された以上、すぐに答えを出すことは俺にできない。
「悪いグリアラ。まだ答えは出せない」
「答えを出してくれるって約束はしてくれるの?」
「それはするよ。しないと男として格好悪いしな」
「外見は女だけどね」
「うるせえ」
そんな話をしている間に俺も眠気がやってくる。流石に半日歩いてばかりだったから、明日にも備えて少し眠らないと。
「どうしたグリアラは寝ないのか?」
「私も寝る。でももう少し考え事をしたいの」
「考え事?」
「咲田には分からないことよ。先に寝ちゃっていいよ」
「じゃあお言葉に甘えて、お先におやすみ」
「うん、おやすみ」
俺はグリアラより先に眠りについた。
咲田が眠った後、一人起きていたグリアラは、二人が寝ている場所から少し離れる。
(咲田が考えている事は間違っていない。でも私は……)
好きな人と親友を同時に失うのは、辛すぎる。だから……。
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