この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

第11話今こそ手を取り合って 前編

「何だよそれ、どういう事だよ咲田」

「詳しくは俺にも分からないが、原始の姫巫女は俺に頼んできたんだ。この姫巫女の呪いを解いて欲しいって」

「でも咲ちゃんとは関係はないはずじゃ」

「それがそうでもないんだよ」

「あ、もしかして咲田君がもう一回記憶を持ったまま転生したのって」

「そう、俺もシャイニー達と同じように本当の意味で死ぬ事が出来ない呪いにかかっているんだ」

 それは原始の姫巫女が証明してくれた。何故なら原始とも呼ばれている姫巫女が今も息をしている。何年生きているかは俺には定かではないが、多分俺達が考えられない年月は生きているに違いない。だから彼女は願ったのだ。この呪いを解いて、安らかに眠らせて欲しいと。

「でもそんな事したら、この世界から姫巫女が消える事になるわよ」

「今のこの世界には、最もな選択肢だと俺は思うんだ。姫巫女の力を頼ってきたからこそ、今度は自分達の手で自然を守るんだ。それが簡単な話ではないのは分かっている。でもそれが、本当の意味で世界を変えるキッカケになるはずだ」

「お前はそれでいいのか?」

「元々俺は死んでいるんだ。今こうしてこの場所に立っている事、本来ありえない話なんだ」

 六年間、俺は大きなロスタイムをもらった。このままずっと生きていたい気持ちはあるけど、この世界はもう一度変わる必要がある。ラファエルのような闇を生み出さないためにも。

「だから二人は別れが辛くなるだろうから、自分達の世界に戻って」

「だったら、尚更私達は元の世界に帰りたくないよ。咲田君と今別れるなんてできない」

「だな。どちらにしても、お前一人を置いて元の世界に戻れないな」

 一通り説明を終えて、二人が出した結論は俺の予想外のものだった。俺は今このまま別れれば悲しみが増えなくて済むと思った。だから帰ってもらう事にしたんだけど、二人は違かった。

「いいのか? 元の世界に戻らなくて。いつ帰れるかも分からないんだぞ」

「友の為に力になるのが、親友の役目だろ? 最後までお前のやろうとしている事に付き合ってやるよ」

「しばらく戻れないのは少し未練はあるけど、二度と帰れないわけじゃないし、咲田君とここで一生の別れになるより全然いい」

「二人とも……」

「姫巫女の力を失うのは強いけど、私も協力するわよ咲田」

「わ、私も咲田君の力になります」

「皆……ありがとう」

 俺は色々言っておきながら、心のどこかでは二人が力になってくれるんじゃないかって思っていた。だから嬉しかったし、少しだけ悲しくもなった。

「どうやら決まったようですね、姫巫女の皆さん」

 タイミングを見計らったかのように、部屋の入口から声がする。全員が振り返ると、そこには原始の姫巫女が立っていた。

「えっとあなたは、原始の姫巫女様ですよね?」

 それを見てまずシャイニーが第一声を発する。俺達は声が出ない。

「そうです。私が原始の姫巫女のフィオナですが」

「とりあえず服を着た方がいいですよ」

 ■□■□■□
 原始の姫巫女の着替えが終わった後、改めて彼女は俺達に名を名乗った。

「知っている方がいらっしゃるとは思いますが、私は原始の姫巫女であるフィオナです。そこの元水の姫巫女の方に全てを話したものです」

 フィオナは水晶で見た眠っている姿より、身長は小さく顔も少々幼めだった。一見すればただの少女だが、彼女がもう何百歳だと考えると、ちょっと信じられない。

「原始の姫巫女様、お初にお目にかかれて光栄です。まさか生きていらっしゃるとは思いませんでした」

 グリアラが似つかない挨拶をする。原始の姫巫女は言わば姫巫女達の始祖みたいなものだから、この位の態度は当たり前なのかもしれない。

「そんなに固くならなくてていいですよ。水の中姫巫女の方は敬語すら使っていませんから」

「そ、それは。後俺はちゃんと咲田って名前があるんだよ」

「では咲田、こちらへ来てください」

「は、はい」

 呼ばれたので俺はフィオナの元へ行く。

「この度は私を助けてくださってありがとうございました。そしてこれからよろしくお願いします」

 頬に何か触れる。一瞬何が起きたか分からなかった。

「なっ」

「咲ちゃん、後で説教ね」

「皆がいる前で堂々と……。恐るべしです、フィオナ様」

 女子三人がこちらを睨みながらそんな事を言う。

「ま、待て、何で俺まで睨まれる」

「咲田、今日中に二年前の返事をしなさい」

「今すぐ帰るわよ、咲ちゃん」

「咲田君、これはあとで世にも恐ろしい罰ゲームです」

「待て待て、俺は中身は男だが見た目は女だぁぁ」

 この後俺はそれはもう酷い目に遭わされました。


 ひと騒ぎの後、改めてフィオナは今回の事について口を開いた。

「今回咲田に私が話しかけたのは、咲田にはこの世界を変える力を持っているからです。その力と姫巫女の力があれば、必ずや世界を変えることができます」

「それが姫巫女という概念をこの世界から消すことなんだな」

「はい。その代償は大きなものになってしまいますが、これ以上呪いで死者を苦しませるのは見ていられません」

「でも姫巫女の力がなくなったら、この世界はどうなるのでしょうか?」

「姫巫女の力で守られてきたあらゆる自然達は、守護がなくなり枯れ果ててしまうでしょう。そしたら今度は、人間だけの力で世界をもう一度一から構築していくのです」

「世界を一から……到底想像できないな」

「でもそうしないと、いつかはこの世界は滅びます。それは姫巫女のせいとかではなく、人間達の手によって」

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