この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第7話悪夢再来の前奏曲
「それがお前の意志、何だな咲田」
「そうだ。お前達には辛い選択になるかもしれないけど、俺はもう迷うのをやめた」
「お前らしいというか、なんというか。昔からお前はそうだったな」
「迷惑をかけて悪いとは思ってる。現に俺は向日葵を泣かせてしまっているんだから」
「咲ちゃん、もう一度考え直してほしいの」
「ごめんな向日葵、それはできない」
「どうして」
「今俺がやるべき事がそれなんだと思ったからだよ」
たった一日考えただけで、何度も考え直したとかそんな偉そうな事は言えない。でもここまで俺を動かす事になったのは、かつてこの世界がピンチに陥った時に皆で救ったように、今回も俺はこの世界を守るために立ち上がりたい。
それは自分の正義とかそういう類のものではない。単純に俺はセリーナを傷つけた奴が許せなかった。そしてそれを守る事ができなかった自分さえも許せなかった。
「向日葵、雄一、もう一度だけ言わせてくれ。俺はこの世界を、セリーナや姫巫女の皆を守るために、水の姫巫女にもう一度なろうと思う。二人が残るか帰るかは、明日までに決めてほしい。俺はどちらかと言えば、二人とは離れたくはない」
「咲田……」
「咲ちゃん……」
「一生のお願いだ、頼む!」
一生なんて大げさかもしれないけど、これは俺ではなく二人にとっても重大な決断だ。いつ帰れるか分からない元の世界へ帰らず、この世界に残って俺と一緒にいてくれるか、それとも帰って普通の生活を過ごすか。
「明日の二人の答えを、俺は待っているよ」
■□■□■□
向日葵と雄一がそれぞれの部屋へと戻って行った後、シャイニーとグリアラが俺の部屋を訪ねてきた。
「随分と大きな決断に出たわね、咲田」
「何だよ聞いてたのか?」
「すみません。盗み聞きするつもりはなかったのですが」
「まあ話すつもりではいたからいいんだけどさ」
セリーナも含めて一緒に話そうと思ったけど、聞かれてしまっていたなら仕方ない。
「その、雄一と向日葵ちゃんはやはり帰るのでしょうか?」
「既に雄一を呼び捨てなのは置いておいて、それは二人の気持ち次第だと思う。俺は二人に強制するつもりがないから謝ったし、それぞれが考える時間も与えた。あとは本人次第だよ」
「水の姫巫女に戻ろうと決めたのはいつなの?」
「昼にセリーナとこの城の最上階に連れてかれたんだよ。そこで俺は、原始の姫巫女様の話をされた」
「咲田も見たのね、あれを」
「ああ。シャイニーも知っていたらしいけど、グリアラもか?」
「ええ」
そこまで話をして俺はある人物が先程からいない事に気がついた。
「あれ、そういえばムウナはどこへ行ったんだ?」
「そういえば昼頃から私も姿を見ていません。どこへ行ったのでしょうか?」
「グリアラはどうだ?」
「言われてみれば私も見てないわ」
過去に一度彼女がこっそり一人でいなくなった事があるが、その時は誘拐された時だった。当時彼女は大地の民から裏切り者として扱われていたが、今は違うはずだ。
(いや、その可能性は否めなくはないが)
ムウナが今朝言っていたセリーナ達地上人をよく思わない輩がいる。だからその地上人と仲間になったムウナを、姫巫女として認めていない可能性がなくはない。
「いい予感はしないな」
「そういえば以前も似たような事がありましたからね」
「じゃあまさかムウナは」
「一概に否定はできないな」
「だったらすぐにロクランスタに行かないと」
「待ったグリアラ」
急いで部屋を出ようとするグリアラを俺は引き止める。
「ムウナの姿がない事でもう一つ気になる事があるんだ」
「気になる事?」
「実はセリーナを見つける前、俺とシャイニーは誰かが逃げていく影を見たんだ」
「影?」
「そういえばセリーナさんの部屋から出てきましたけど、現場はあの場所ではありませんでしたし、一体誰だったんでしょうか」
セリーナの事件の後からずっと引っかかっていたのは、シャイニーが今言ったことだった。何故あの影は、現場ではなくセリーナの部屋から出てきたのだろうか。もしあれがセリーナの襲撃犯だとしたら、それもおかしい話になる。
「俺とセリーナを襲った人物と、その人影はもしかしたら別人の可能性があるんだよ。そしてそいつは何かしらの形でムウナと関わっているかもしれない」
「どうして同一人物じゃないって言えるの?」
「俺としてシャイニーがセリーナを見つけたのは、それからすぐの事だったんだ。それにシャイニーがグリアラ達を呼びに一度、部屋も出ている。もしそいつが戻ってきていたら、シャイニーに見つかるリスクもあるだろ?」
「確かに」
「それに俺は意識を失う直前、声を聞いたんだ。今回の襲撃犯の」
「襲撃犯の声を?」
「意識が朦朧としていたからか不確かかもしれないけど、俺はその声に聞き覚えがある」
「え?」
ありえないかもしれないけど、奴の事だから可能性はゼロではない。かつてこの世界を闇で覆った人物。
「恐らくあの声は闇の姫巫女、ラファエルだ」
「嘘……ラファエルが生きているというの?」
「あいつの事だ、可能性はゼロじゃない」
彼女はかつて俺達と戦って自害をしながらも、この世界を闇で覆い尽くした。言わば六年前の事件の首謀者だ。そいつが仮に生きていたとしたら、
(また何かが始まろうとしていのか)
「そうだ。お前達には辛い選択になるかもしれないけど、俺はもう迷うのをやめた」
「お前らしいというか、なんというか。昔からお前はそうだったな」
「迷惑をかけて悪いとは思ってる。現に俺は向日葵を泣かせてしまっているんだから」
「咲ちゃん、もう一度考え直してほしいの」
「ごめんな向日葵、それはできない」
「どうして」
「今俺がやるべき事がそれなんだと思ったからだよ」
たった一日考えただけで、何度も考え直したとかそんな偉そうな事は言えない。でもここまで俺を動かす事になったのは、かつてこの世界がピンチに陥った時に皆で救ったように、今回も俺はこの世界を守るために立ち上がりたい。
それは自分の正義とかそういう類のものではない。単純に俺はセリーナを傷つけた奴が許せなかった。そしてそれを守る事ができなかった自分さえも許せなかった。
「向日葵、雄一、もう一度だけ言わせてくれ。俺はこの世界を、セリーナや姫巫女の皆を守るために、水の姫巫女にもう一度なろうと思う。二人が残るか帰るかは、明日までに決めてほしい。俺はどちらかと言えば、二人とは離れたくはない」
「咲田……」
「咲ちゃん……」
「一生のお願いだ、頼む!」
一生なんて大げさかもしれないけど、これは俺ではなく二人にとっても重大な決断だ。いつ帰れるか分からない元の世界へ帰らず、この世界に残って俺と一緒にいてくれるか、それとも帰って普通の生活を過ごすか。
「明日の二人の答えを、俺は待っているよ」
■□■□■□
向日葵と雄一がそれぞれの部屋へと戻って行った後、シャイニーとグリアラが俺の部屋を訪ねてきた。
「随分と大きな決断に出たわね、咲田」
「何だよ聞いてたのか?」
「すみません。盗み聞きするつもりはなかったのですが」
「まあ話すつもりではいたからいいんだけどさ」
セリーナも含めて一緒に話そうと思ったけど、聞かれてしまっていたなら仕方ない。
「その、雄一と向日葵ちゃんはやはり帰るのでしょうか?」
「既に雄一を呼び捨てなのは置いておいて、それは二人の気持ち次第だと思う。俺は二人に強制するつもりがないから謝ったし、それぞれが考える時間も与えた。あとは本人次第だよ」
「水の姫巫女に戻ろうと決めたのはいつなの?」
「昼にセリーナとこの城の最上階に連れてかれたんだよ。そこで俺は、原始の姫巫女様の話をされた」
「咲田も見たのね、あれを」
「ああ。シャイニーも知っていたらしいけど、グリアラもか?」
「ええ」
そこまで話をして俺はある人物が先程からいない事に気がついた。
「あれ、そういえばムウナはどこへ行ったんだ?」
「そういえば昼頃から私も姿を見ていません。どこへ行ったのでしょうか?」
「グリアラはどうだ?」
「言われてみれば私も見てないわ」
過去に一度彼女がこっそり一人でいなくなった事があるが、その時は誘拐された時だった。当時彼女は大地の民から裏切り者として扱われていたが、今は違うはずだ。
(いや、その可能性は否めなくはないが)
ムウナが今朝言っていたセリーナ達地上人をよく思わない輩がいる。だからその地上人と仲間になったムウナを、姫巫女として認めていない可能性がなくはない。
「いい予感はしないな」
「そういえば以前も似たような事がありましたからね」
「じゃあまさかムウナは」
「一概に否定はできないな」
「だったらすぐにロクランスタに行かないと」
「待ったグリアラ」
急いで部屋を出ようとするグリアラを俺は引き止める。
「ムウナの姿がない事でもう一つ気になる事があるんだ」
「気になる事?」
「実はセリーナを見つける前、俺とシャイニーは誰かが逃げていく影を見たんだ」
「影?」
「そういえばセリーナさんの部屋から出てきましたけど、現場はあの場所ではありませんでしたし、一体誰だったんでしょうか」
セリーナの事件の後からずっと引っかかっていたのは、シャイニーが今言ったことだった。何故あの影は、現場ではなくセリーナの部屋から出てきたのだろうか。もしあれがセリーナの襲撃犯だとしたら、それもおかしい話になる。
「俺とセリーナを襲った人物と、その人影はもしかしたら別人の可能性があるんだよ。そしてそいつは何かしらの形でムウナと関わっているかもしれない」
「どうして同一人物じゃないって言えるの?」
「俺としてシャイニーがセリーナを見つけたのは、それからすぐの事だったんだ。それにシャイニーがグリアラ達を呼びに一度、部屋も出ている。もしそいつが戻ってきていたら、シャイニーに見つかるリスクもあるだろ?」
「確かに」
「それに俺は意識を失う直前、声を聞いたんだ。今回の襲撃犯の」
「襲撃犯の声を?」
「意識が朦朧としていたからか不確かかもしれないけど、俺はその声に聞き覚えがある」
「え?」
ありえないかもしれないけど、奴の事だから可能性はゼロではない。かつてこの世界を闇で覆った人物。
「恐らくあの声は闇の姫巫女、ラファエルだ」
「嘘……ラファエルが生きているというの?」
「あいつの事だ、可能性はゼロじゃない」
彼女はかつて俺達と戦って自害をしながらも、この世界を闇で覆い尽くした。言わば六年前の事件の首謀者だ。そいつが仮に生きていたとしたら、
(また何かが始まろうとしていのか)
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