この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第5話全ての巫女の原点 後編
「グリアラ様や咲田様達姫巫女は、この原始の姫巫女様の加護があったからこそ、その不死に近い力を手に入れられるんです。私もこの事実を知ったのは最近なのですが、古い書物にしか書かれていない文献でした」
「何でその姫巫女の体がここにあるんだ?」
「実はそれは私達にも分からないんです。ウォルティア城が一度崩壊した際、これだけが傷一つなく瓦礫の中にあったので、私達は調べるための意味も込めて今日この日まで保存しておいたんです」
つまりこれはアライア姫がいる頃からあったのだろう。でも原始とも呼ばれる姫巫女が何故一国がこうして保管していたのか、少し疑問が残る。
「咲田様達姫巫女の力はこの加護があるからこそ成り立っているので、他の地で加護を受けてないものが姫巫女を名乗るのは、本来あってはならない事なのです」
「つまり加護がないと、グリーンウッドの森達を守る力がなくなるって事か。それって下手すれば、森を枯らしてしまう可能性があるのか」
「そしてそれが、世界の崩壊を招くかもしれないんです」
「だからお前も必死なのか」
それを防ぐ為には、姫巫女達を元の地に戻して六年前の形に戻す必要がある。だが新たな姫巫女が存在している以上、それをどうにかする必要がある。
「また時間がかかりそうな事をやる必要があるのか」
「六年前ほど大きな事件ではないと考えていますが、かつての事件も咲田様の力もあったからこそ成せたことなんです。だから私は、いえ私達は咲田様にはもう一度水の姫巫女になってもらいたいのです」
「セリーナの言いたい事は分かるんだけど、それは何度も言うようにすぐには了承できないんだ。ただでさえ向日葵達を一度悲しませてしまっているんだ。だから二人だけで世界に帰す事は俺にはできない」
「三人で世界に残るという選択はどうなのでしょうか」
「それは……二人に聞いてみないと分からないよ。俺には決められない」
「では先に咲田様の意志はどうなのでしょうか?」
「俺は……」
四年前の夏、三ヶ月この世界で過ごして、二年前も三日間だけこの世界で過ごした。正直別れる時は本当に辛くて、この六年一時もセリーナ達の事を忘れた事はない。
今までは戻らなければならなかったけど、今俺はこの世界に残るという選択肢もある。だけどそれを向日葵達がどう思うかは分からない。確実に反対はするだろう。
「また戻れるのなら、この世界で過ごすのも悪くはないと思っている。元の世界に戻っても、今の俺は何かやりたい事があるわけではないし、両親もいない。だったら、この世界でもう一度水の姫巫女の仕事を全うしてもいいかなとは思う」
「その言葉を聞けただけでも嬉しいです。本当の答えは明日聞かせてもらいますが、いい返事を期待しています」
「ああ」
長居するのもアレなので、俺とセリーナは部屋を出ようとする。だけど俺は出る直前に足を止めた。
「どうかされましたか?」
「セリーナ、ちょっと先に戻っててくれないか? 俺もう少しだけこの部屋にいる」
「それは構いませんけど、何かあったのですか?」
「ちょっとだけ見たい事があるから、頼む」
「分かりました。では部屋の鍵だけ渡しておきます」
セリーナはこの部屋の鍵を俺に渡して先に出る。一人残された俺は、改めて水晶の中で眠る少女を見た。
「なあ原始の姫巫女様、今俺に何か言わなかったか?」
『やはりあなたには届いたんですね、私の声が』
■□■□■□
それから一時間ほど経った後、俺は部屋を出た。
(もし原始の姫巫女が語った言葉が本当なら、俺達は……)
まさか水晶の中から声が聞こえてくるなんて思っていなかった。最初聞き間違いかと思いはしたけど、気になったので一人で部屋に残ったけどどうやら正解だったらしい。
「あれ、咲田君?」
「お、シャイニーか」
部屋を出て階段を降りると、シャイニーと丁度シャイニーと鉢合わせる。
「しばらく姿を見かけないからどこへ行ったのかと思いましたけど、最上階にいたんですね」
「ああ。ちょっとな」
「最上階という事は、もしかして咲田君もあれを?」
「何だ知っているのか」
「最近私も教えてもらったんですよ」
シャイニーと廊下を歩きながら会話をしていると、廊下の端で何やら怪しげな事をしている影を発見。もしかして侵入者だろうか。
「おい、そこで何を……」
俺の声に反応した影は、慌ててその場から去っていく。追おうにも距離がかなりあったので、間に合いそうにない。
「確かあそこの近くにセリーナさんのお部屋がありましたけど」
「セリーナの部屋が?」
何か嫌な予感がした俺は、急いでセリーナの部屋と向かう。だが中には誰もいなかった。どうやらセリーナの身には何もなかったらしい。
「きゃゃ」
だが一安心をしたのもつかの間、別の場所を調べていたシャイニーの悲鳴が上がる。
「どうしたシャイニー」
「あ、あれ」
シャイニーが震えながらある部屋の中を指差す。その先で俺を待っていたのは、
「セリーナ!」
血を流して首吊りの状態で宙へ浮いているセリーナの姿が。俺は急いで彼女の首にかかっているロープを取り、彼女の脈と息を確認する。
「シャイニー、急いで誰でもいいから呼んでこい!」
「は、は、はい」
脈はあり、呼吸も確認できたので急いでシャイニーに誰かを呼びに向かわせる。
(くそっ、どうしてセリーナが……)
だが後悔しているのも束の間、今度は俺の頭部にも鈍い痛みが入る。まさかまだ誰かがこの部屋に……。
「まさか……まだこの世界に……」
遠のく意識の中で聞こえたその声は、どこかで聞いた事があるような宿敵の声だった。
「何でその姫巫女の体がここにあるんだ?」
「実はそれは私達にも分からないんです。ウォルティア城が一度崩壊した際、これだけが傷一つなく瓦礫の中にあったので、私達は調べるための意味も込めて今日この日まで保存しておいたんです」
つまりこれはアライア姫がいる頃からあったのだろう。でも原始とも呼ばれる姫巫女が何故一国がこうして保管していたのか、少し疑問が残る。
「咲田様達姫巫女の力はこの加護があるからこそ成り立っているので、他の地で加護を受けてないものが姫巫女を名乗るのは、本来あってはならない事なのです」
「つまり加護がないと、グリーンウッドの森達を守る力がなくなるって事か。それって下手すれば、森を枯らしてしまう可能性があるのか」
「そしてそれが、世界の崩壊を招くかもしれないんです」
「だからお前も必死なのか」
それを防ぐ為には、姫巫女達を元の地に戻して六年前の形に戻す必要がある。だが新たな姫巫女が存在している以上、それをどうにかする必要がある。
「また時間がかかりそうな事をやる必要があるのか」
「六年前ほど大きな事件ではないと考えていますが、かつての事件も咲田様の力もあったからこそ成せたことなんです。だから私は、いえ私達は咲田様にはもう一度水の姫巫女になってもらいたいのです」
「セリーナの言いたい事は分かるんだけど、それは何度も言うようにすぐには了承できないんだ。ただでさえ向日葵達を一度悲しませてしまっているんだ。だから二人だけで世界に帰す事は俺にはできない」
「三人で世界に残るという選択はどうなのでしょうか」
「それは……二人に聞いてみないと分からないよ。俺には決められない」
「では先に咲田様の意志はどうなのでしょうか?」
「俺は……」
四年前の夏、三ヶ月この世界で過ごして、二年前も三日間だけこの世界で過ごした。正直別れる時は本当に辛くて、この六年一時もセリーナ達の事を忘れた事はない。
今までは戻らなければならなかったけど、今俺はこの世界に残るという選択肢もある。だけどそれを向日葵達がどう思うかは分からない。確実に反対はするだろう。
「また戻れるのなら、この世界で過ごすのも悪くはないと思っている。元の世界に戻っても、今の俺は何かやりたい事があるわけではないし、両親もいない。だったら、この世界でもう一度水の姫巫女の仕事を全うしてもいいかなとは思う」
「その言葉を聞けただけでも嬉しいです。本当の答えは明日聞かせてもらいますが、いい返事を期待しています」
「ああ」
長居するのもアレなので、俺とセリーナは部屋を出ようとする。だけど俺は出る直前に足を止めた。
「どうかされましたか?」
「セリーナ、ちょっと先に戻っててくれないか? 俺もう少しだけこの部屋にいる」
「それは構いませんけど、何かあったのですか?」
「ちょっとだけ見たい事があるから、頼む」
「分かりました。では部屋の鍵だけ渡しておきます」
セリーナはこの部屋の鍵を俺に渡して先に出る。一人残された俺は、改めて水晶の中で眠る少女を見た。
「なあ原始の姫巫女様、今俺に何か言わなかったか?」
『やはりあなたには届いたんですね、私の声が』
■□■□■□
それから一時間ほど経った後、俺は部屋を出た。
(もし原始の姫巫女が語った言葉が本当なら、俺達は……)
まさか水晶の中から声が聞こえてくるなんて思っていなかった。最初聞き間違いかと思いはしたけど、気になったので一人で部屋に残ったけどどうやら正解だったらしい。
「あれ、咲田君?」
「お、シャイニーか」
部屋を出て階段を降りると、シャイニーと丁度シャイニーと鉢合わせる。
「しばらく姿を見かけないからどこへ行ったのかと思いましたけど、最上階にいたんですね」
「ああ。ちょっとな」
「最上階という事は、もしかして咲田君もあれを?」
「何だ知っているのか」
「最近私も教えてもらったんですよ」
シャイニーと廊下を歩きながら会話をしていると、廊下の端で何やら怪しげな事をしている影を発見。もしかして侵入者だろうか。
「おい、そこで何を……」
俺の声に反応した影は、慌ててその場から去っていく。追おうにも距離がかなりあったので、間に合いそうにない。
「確かあそこの近くにセリーナさんのお部屋がありましたけど」
「セリーナの部屋が?」
何か嫌な予感がした俺は、急いでセリーナの部屋と向かう。だが中には誰もいなかった。どうやらセリーナの身には何もなかったらしい。
「きゃゃ」
だが一安心をしたのもつかの間、別の場所を調べていたシャイニーの悲鳴が上がる。
「どうしたシャイニー」
「あ、あれ」
シャイニーが震えながらある部屋の中を指差す。その先で俺を待っていたのは、
「セリーナ!」
血を流して首吊りの状態で宙へ浮いているセリーナの姿が。俺は急いで彼女の首にかかっているロープを取り、彼女の脈と息を確認する。
「シャイニー、急いで誰でもいいから呼んでこい!」
「は、は、はい」
脈はあり、呼吸も確認できたので急いでシャイニーに誰かを呼びに向かわせる。
(くそっ、どうしてセリーナが……)
だが後悔しているのも束の間、今度は俺の頭部にも鈍い痛みが入る。まさかまだ誰かがこの部屋に……。
「まさか……まだこの世界に……」
遠のく意識の中で聞こえたその声は、どこかで聞いた事があるような宿敵の声だった。
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