この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第4話全ての巫女の原点 前編
「咲田様、お昼の時間ですよ」
考え事をしている間にいつの間にか眠っていた俺は、セリーナの声で目が覚める。
「起こしてくれてありがとう、セリーナ。向日葵達は起きたか?」
「向日葵様は先程。連れのもう一人の方も目覚めはしたのですが、何故か部屋から出てきていません」
「何やってるんだあいつ」
そんなに女性の裸を見るのが衝撃だったのだろうか。三十にもなって何やっているんだよ。
「咲田様は今日はこれからいかがなさいますか?」
「とりあえずこれから昼飯だろ。その後はまだ決めてないな」
「それでしたら、一度咲田様に案内したい場所があるので、一緒に行きませんか?」
「案内したい場所? この国に新しいスポットでもできたのか?」
「そうではないのですが、先程の話の延長線上になる場所なので、ぜひ来て欲しいのです」
先程の延長線上って事は、姫巫女達に関わる場所なのだろう。
「でもどうして俺がそこに?」
「正直二日でどうにかなるような話ではないのは、私も分かっています。しかし少しずつではありますが、世界はバランスを崩し始めているのです」
「ほとんどの巫女が形だけになって、本人達の預かり知らぬところで別の姫巫女が生まれているからな。ましてや、水の姫巫女もいないんだろ?」
「はい。このままだといずれは六年前のように戻ってしまう可能性があるんです」
「だから俺にも力を貸してほしい、って事だよな」
「正直に申しますとそうです」
自分の部屋をセリーナと一緒に出る。この話を聞いた時点で、協力を要請される事は分かってはいた。しかし問題なのは時間の足りなさだ。それを解決する方法はたった一つしかない。
「咲田様には迷惑をかける事になりますが、私はこう思っています。もう一度咲田様に水の姫巫女としてこの地にいてもらおうと」
「それが今回俺をこの世界に呼んだ本当の理由か」
「頭にだけは入れておいてください」
その究極の選択は、俺ではなく雄一や向日葵に迷惑がかかる。まさか夏休みの一環として過ごすつもりが、思いがけない方向に話が進んでしまいそうだ。
(明日には答えを出すなんて難しいよな……)
■□■□■□
昼食中、雄一がようやく部屋から出てきて、初めて同じ場に姫巫女達と俺達が勢揃いする。
「えっと、シャイニーさん、先程から俺の顔を見ていないのですが」
「咲田君ならともかく、全く知らないあなたに裸を見られたんですよ? 目なんか合わせたくもないですよ」
「あれは不可抗力だろ」
だが朝の一件でシャイニーは雄一を軽蔑している。元はと言えばセリーナのせいなのだが、ここはあえて黙っておこう。それの方が逆に楽しい。
「何ニヤニヤしながら見ているんだよ、咲田」
「いや、なんか見てて面白いからさ」
「俺は面白くないって」
昼食を終えた後は、改めて俺が向日葵と雄一を皆に紹介する。
「えっと、さっきからシャイニーが嫌っているのが雄一で、セリーナとかには既に紹介したけどもう一人が向日葵だ。二日かんだげだけどよろしくな皆」
「向日葵です。よろしくお願いします」
「俺は雄い……」
「名前なんて聞きたくないです」
「何たる理不尽」
ろくに自己紹介もさせてもらえない雄一が少し可哀想になってくる。
「なあセリーナ、誤解といてやれよ。雄一が少し可哀想なんだけど」
「そう言いながら楽しんでいるじゃないですか、咲田様も」
「まあ、こらはこれで楽しいけどさ」
「お二方、聞こえてますけど」
結局雄一の誤解を解く事はありませんでした。
■□■□■□
昼食後、セリーナとの約束を果たすため、俺は皆が解散した後に彼女と二人で残っていた。
「なあセリーナ、これから行くところって具体的にはどういう場所なんだ」
「具体的と言われますと、少々説明するには難しいのですが一言で言うならこの国の核とも言われる場所です」
「この国の核?」
「とりあえずついて来てくれば分かります」
俺はセリーナの案内で、彼女と共にその場所へと向かう。この国の核となる場所というとなると、水の姫巫女、もしくはそれ以上の何かが眠っている場所なのだろうか。俺には未だに見当がつかなかった。
「それで咲田様、私の先程の提案について考えてくれましたか?」
「俺がまた水の姫巫女になる話か? 一応考えはしたけどさ、やっぱりそれは難しいよ。だって俺には帰る場所があるし、向日葵達だっている。それを手放すなんてそんなの簡単にはできない」
「やはりそう仰ると思いました。だからこそ咲田様にはこれを見ていただいてほしいのです」
セリーナはある扉の前で足を止める。その場所はこの城の一番上の階にあった。二年前と六年前にはあまり使うことがなかった城の上層部。そこにはこの城には似合わないくらいの大きさの扉があった。
「こんな扉あったか? そもそも六年前に城は一度崩壊しているし、わざわざ新たに作ったのか?」
「元々ウォルティア城にも存在はしていたのですが、それが明るみになる事はありませんでした。何故ならこの部屋は……」
セリーナが話しながらその巨大な扉を開ける。そこで俺を待っていたのは、
「何だよこれ……」
クリスタルか何かの大きな水晶の中に眠らされている、一人の少女の姿があった。
「私達姫巫女の原点とも言える人物、原始の巫女様です」
「原始の……巫女?」
考え事をしている間にいつの間にか眠っていた俺は、セリーナの声で目が覚める。
「起こしてくれてありがとう、セリーナ。向日葵達は起きたか?」
「向日葵様は先程。連れのもう一人の方も目覚めはしたのですが、何故か部屋から出てきていません」
「何やってるんだあいつ」
そんなに女性の裸を見るのが衝撃だったのだろうか。三十にもなって何やっているんだよ。
「咲田様は今日はこれからいかがなさいますか?」
「とりあえずこれから昼飯だろ。その後はまだ決めてないな」
「それでしたら、一度咲田様に案内したい場所があるので、一緒に行きませんか?」
「案内したい場所? この国に新しいスポットでもできたのか?」
「そうではないのですが、先程の話の延長線上になる場所なので、ぜひ来て欲しいのです」
先程の延長線上って事は、姫巫女達に関わる場所なのだろう。
「でもどうして俺がそこに?」
「正直二日でどうにかなるような話ではないのは、私も分かっています。しかし少しずつではありますが、世界はバランスを崩し始めているのです」
「ほとんどの巫女が形だけになって、本人達の預かり知らぬところで別の姫巫女が生まれているからな。ましてや、水の姫巫女もいないんだろ?」
「はい。このままだといずれは六年前のように戻ってしまう可能性があるんです」
「だから俺にも力を貸してほしい、って事だよな」
「正直に申しますとそうです」
自分の部屋をセリーナと一緒に出る。この話を聞いた時点で、協力を要請される事は分かってはいた。しかし問題なのは時間の足りなさだ。それを解決する方法はたった一つしかない。
「咲田様には迷惑をかける事になりますが、私はこう思っています。もう一度咲田様に水の姫巫女としてこの地にいてもらおうと」
「それが今回俺をこの世界に呼んだ本当の理由か」
「頭にだけは入れておいてください」
その究極の選択は、俺ではなく雄一や向日葵に迷惑がかかる。まさか夏休みの一環として過ごすつもりが、思いがけない方向に話が進んでしまいそうだ。
(明日には答えを出すなんて難しいよな……)
■□■□■□
昼食中、雄一がようやく部屋から出てきて、初めて同じ場に姫巫女達と俺達が勢揃いする。
「えっと、シャイニーさん、先程から俺の顔を見ていないのですが」
「咲田君ならともかく、全く知らないあなたに裸を見られたんですよ? 目なんか合わせたくもないですよ」
「あれは不可抗力だろ」
だが朝の一件でシャイニーは雄一を軽蔑している。元はと言えばセリーナのせいなのだが、ここはあえて黙っておこう。それの方が逆に楽しい。
「何ニヤニヤしながら見ているんだよ、咲田」
「いや、なんか見てて面白いからさ」
「俺は面白くないって」
昼食を終えた後は、改めて俺が向日葵と雄一を皆に紹介する。
「えっと、さっきからシャイニーが嫌っているのが雄一で、セリーナとかには既に紹介したけどもう一人が向日葵だ。二日かんだげだけどよろしくな皆」
「向日葵です。よろしくお願いします」
「俺は雄い……」
「名前なんて聞きたくないです」
「何たる理不尽」
ろくに自己紹介もさせてもらえない雄一が少し可哀想になってくる。
「なあセリーナ、誤解といてやれよ。雄一が少し可哀想なんだけど」
「そう言いながら楽しんでいるじゃないですか、咲田様も」
「まあ、こらはこれで楽しいけどさ」
「お二方、聞こえてますけど」
結局雄一の誤解を解く事はありませんでした。
■□■□■□
昼食後、セリーナとの約束を果たすため、俺は皆が解散した後に彼女と二人で残っていた。
「なあセリーナ、これから行くところって具体的にはどういう場所なんだ」
「具体的と言われますと、少々説明するには難しいのですが一言で言うならこの国の核とも言われる場所です」
「この国の核?」
「とりあえずついて来てくれば分かります」
俺はセリーナの案内で、彼女と共にその場所へと向かう。この国の核となる場所というとなると、水の姫巫女、もしくはそれ以上の何かが眠っている場所なのだろうか。俺には未だに見当がつかなかった。
「それで咲田様、私の先程の提案について考えてくれましたか?」
「俺がまた水の姫巫女になる話か? 一応考えはしたけどさ、やっぱりそれは難しいよ。だって俺には帰る場所があるし、向日葵達だっている。それを手放すなんてそんなの簡単にはできない」
「やはりそう仰ると思いました。だからこそ咲田様にはこれを見ていただいてほしいのです」
セリーナはある扉の前で足を止める。その場所はこの城の一番上の階にあった。二年前と六年前にはあまり使うことがなかった城の上層部。そこにはこの城には似合わないくらいの大きさの扉があった。
「こんな扉あったか? そもそも六年前に城は一度崩壊しているし、わざわざ新たに作ったのか?」
「元々ウォルティア城にも存在はしていたのですが、それが明るみになる事はありませんでした。何故ならこの部屋は……」
セリーナが話しながらその巨大な扉を開ける。そこで俺を待っていたのは、
「何だよこれ……」
クリスタルか何かの大きな水晶の中に眠らされている、一人の少女の姿があった。
「私達姫巫女の原点とも言える人物、原始の巫女様です」
「原始の……巫女?」
コメント