この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第3話二年の歳月が作り上げた新たな形 後編
「二年前咲田が来た時に、それぞれの国が一つの国として出来上がったのは説明したじゃろ? それでセリーナがその王女なのは知っておるよな?」
「ああ勿論だ」
その二年前に大体の世界情勢は知ることが出来た。しかし同時にある問題も発生してしまったのだが、セリーナはそれを乗り越え今も一国の王女として務めを果たしている。
「六年前に私達姫巫女が守護していた王国が一つになった事により、ここ最近王女の存在が必要ないのではないかと言われていたの。私達はこうは言うのもアレだけど、各国の守り神みたいなものだったから」
「言われてみればそうだな。でも姫巫女の役割は、国の守護というよりは大地、光、水、森そのものを守っていく存在だったはずだろ? だったら姫巫女は今だって必要なはずじゃ」
「国を一つに統合してしまったがために、本来守護するはずの土地に私達の手が行き届かなかくなってしまったんです。大地の巫女はともかくとして、グリアラさんが守るべき森というのはここから距離がありますから」
いつの間にか戻ってきたセリーナが説明に入る。案内されていた向日葵は、朝からの疲れかそのまま眠ってしまったらしい。
(朝から山登りしたら、それは当たり前か)
しばらくは寝かしておいてあげるとしよう。
とりあえず話を元に戻す事に。
「確かに国が一つになったからと言えど、全てがそこに集まっているわけではないからな」
「昔は当たり前だった事が、今は無くなり始めているんです。水は別として」
元はこの地は水の都であったので、水は栄えているがその分森の木々がない。それ故にそれらを守護する役目であるグリアラの手は届かない。
「じゃあグリーンウッドは今どうなっているんだ?」
「実は最近、新たな森の姫巫女を誕生させて新しい国を作り上げているという噂があるの。私も一度確認しに行ったんだけど、門前払いされた」
「なるほど、だからか」
そうなってくると、グリアラは森の姫巫女と名乗るのは難しい。シャイニーのようにどこにでもあるものとは違い、森はグリーンウッドがあった場所周辺にしかない。統一してしまった事によって、皆が平和になるかと思いきや、そういう訳にはいかなくなってきているという事か……。
「ムウナなんて大地はこの世界に全てあるから、逆に手が行き届かなくなっているのか」
「妾達大地の民は、地上の者達と友好関係を保ってはいるものの、それを良しとしない者達もおる。その者達が妾を引きずり下ろし、新たな国を作ろうとしている噂も耳にしておる」
「それら全てを把握するのは難しい、か」
世界が一つになったとはいえど、皆が皆同じ思考を持っている訳でもない。だからこそどこからか綻びは生まれ始める。それが二年前からの悪い意味での変化なのか……。
「そういえば水の姫巫女はどうなっているんだ?」
「実はそれも一つの問題として、最近悩まされているんです」
「もしかしてまた見つかっていないのか?」
「この二年の間に一度、変わっているのですがちょっと深い事情がありまして」
「何か大きな事件でも起きたのか?」
「それに関しては後々説明させていただきます。それよりシャイニー、いつまでそこに隠れているのですか?」
「っ! い、いつから分かっていたんですか?」
「ずっとです」
セリーナの呼びかけに、柱の陰からシャイニーが姿を現す。俺は若干恥ずかしくなり、目を逸らしてしまう。
「そ、逸らさないでくださいよ、咲田君。悪いのはどちらかというとセリーナさんですから」
「さあ? 何のことでしょうか」
何はともあれ二年ぶりに元姫巫女含め四人と、元姫巫女のメイドだった現王女がこの場に揃う。とは言っても、会ってないのは俺だけなんだけどな。
「とにかくただいま、皆」
■□■□■□
朝から動いたからかすっかり疲れてしまった俺は、皆と一通り会話した後久しぶりの自室で少しばかり休みを取る事に。
「って、俺は相変わらずここなののかよ」
「今回は客人も多いですから」
俺が通された部屋は、全ての始まりの地とも言える姫巫女が誕生するあの部屋。俺も最初はここで目を覚ました。
「ではお昼頃になったら起こしにきますね」
「ああ、頼む」
一緒についてきたセリーナが部屋を出て、俺一人になる。一度崩壊はしたものの、城の設計自体を変えずに建て直したからなのか、窓の外には最初の頃に見た海中の景色が広がっている。
「ふぅ……」
俺はそれを眺めながら一息ついて、ベットに寝転がる。ただ眠いはずなのに、すぐに眠る事はできなかった。
(二年、いやそれ以上前から本当はセリーナが話していたような事は起きてたんだろうな、きっと)
さっきの話を思い返す限り、二年とかで出来上がる話ではないと俺は思っていた。大地の民の話に関しては尚更だ。六年前にあれだけ毛嫌いされていたのだから、全員が同じ思想を持っている訳ではない。
(何とかしてやりたいけど、たった二日で俺にできるのか?)
それはほぼ不可能に近い話だ。だとしたら俺に残されている選択肢は……。
(俺や向日葵や雄一ももう三十近い。そろそろこの関係も一度……)
「ああ勿論だ」
その二年前に大体の世界情勢は知ることが出来た。しかし同時にある問題も発生してしまったのだが、セリーナはそれを乗り越え今も一国の王女として務めを果たしている。
「六年前に私達姫巫女が守護していた王国が一つになった事により、ここ最近王女の存在が必要ないのではないかと言われていたの。私達はこうは言うのもアレだけど、各国の守り神みたいなものだったから」
「言われてみればそうだな。でも姫巫女の役割は、国の守護というよりは大地、光、水、森そのものを守っていく存在だったはずだろ? だったら姫巫女は今だって必要なはずじゃ」
「国を一つに統合してしまったがために、本来守護するはずの土地に私達の手が行き届かなかくなってしまったんです。大地の巫女はともかくとして、グリアラさんが守るべき森というのはここから距離がありますから」
いつの間にか戻ってきたセリーナが説明に入る。案内されていた向日葵は、朝からの疲れかそのまま眠ってしまったらしい。
(朝から山登りしたら、それは当たり前か)
しばらくは寝かしておいてあげるとしよう。
とりあえず話を元に戻す事に。
「確かに国が一つになったからと言えど、全てがそこに集まっているわけではないからな」
「昔は当たり前だった事が、今は無くなり始めているんです。水は別として」
元はこの地は水の都であったので、水は栄えているがその分森の木々がない。それ故にそれらを守護する役目であるグリアラの手は届かない。
「じゃあグリーンウッドは今どうなっているんだ?」
「実は最近、新たな森の姫巫女を誕生させて新しい国を作り上げているという噂があるの。私も一度確認しに行ったんだけど、門前払いされた」
「なるほど、だからか」
そうなってくると、グリアラは森の姫巫女と名乗るのは難しい。シャイニーのようにどこにでもあるものとは違い、森はグリーンウッドがあった場所周辺にしかない。統一してしまった事によって、皆が平和になるかと思いきや、そういう訳にはいかなくなってきているという事か……。
「ムウナなんて大地はこの世界に全てあるから、逆に手が行き届かなくなっているのか」
「妾達大地の民は、地上の者達と友好関係を保ってはいるものの、それを良しとしない者達もおる。その者達が妾を引きずり下ろし、新たな国を作ろうとしている噂も耳にしておる」
「それら全てを把握するのは難しい、か」
世界が一つになったとはいえど、皆が皆同じ思考を持っている訳でもない。だからこそどこからか綻びは生まれ始める。それが二年前からの悪い意味での変化なのか……。
「そういえば水の姫巫女はどうなっているんだ?」
「実はそれも一つの問題として、最近悩まされているんです」
「もしかしてまた見つかっていないのか?」
「この二年の間に一度、変わっているのですがちょっと深い事情がありまして」
「何か大きな事件でも起きたのか?」
「それに関しては後々説明させていただきます。それよりシャイニー、いつまでそこに隠れているのですか?」
「っ! い、いつから分かっていたんですか?」
「ずっとです」
セリーナの呼びかけに、柱の陰からシャイニーが姿を現す。俺は若干恥ずかしくなり、目を逸らしてしまう。
「そ、逸らさないでくださいよ、咲田君。悪いのはどちらかというとセリーナさんですから」
「さあ? 何のことでしょうか」
何はともあれ二年ぶりに元姫巫女含め四人と、元姫巫女のメイドだった現王女がこの場に揃う。とは言っても、会ってないのは俺だけなんだけどな。
「とにかくただいま、皆」
■□■□■□
朝から動いたからかすっかり疲れてしまった俺は、皆と一通り会話した後久しぶりの自室で少しばかり休みを取る事に。
「って、俺は相変わらずここなののかよ」
「今回は客人も多いですから」
俺が通された部屋は、全ての始まりの地とも言える姫巫女が誕生するあの部屋。俺も最初はここで目を覚ました。
「ではお昼頃になったら起こしにきますね」
「ああ、頼む」
一緒についてきたセリーナが部屋を出て、俺一人になる。一度崩壊はしたものの、城の設計自体を変えずに建て直したからなのか、窓の外には最初の頃に見た海中の景色が広がっている。
「ふぅ……」
俺はそれを眺めながら一息ついて、ベットに寝転がる。ただ眠いはずなのに、すぐに眠る事はできなかった。
(二年、いやそれ以上前から本当はセリーナが話していたような事は起きてたんだろうな、きっと)
さっきの話を思い返す限り、二年とかで出来上がる話ではないと俺は思っていた。大地の民の話に関しては尚更だ。六年前にあれだけ毛嫌いされていたのだから、全員が同じ思想を持っている訳ではない。
(何とかしてやりたいけど、たった二日で俺にできるのか?)
それはほぼ不可能に近い話だ。だとしたら俺に残されている選択肢は……。
(俺や向日葵や雄一ももう三十近い。そろそろこの関係も一度……)
「恋愛」の人気作品
書籍化作品
-
-
222
-
-
337
-
-
40
-
-
52
-
-
125
-
-
103
-
-
2813
-
-
516
-
-
353
コメント