この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第1話そしてまた夏が始まる
こんな事を突然いうのもアレだが、俺は既に三回程転生をしている。何を言っているんだこいつ、と言わんばかりだが事実だ。
「本当お前って苦労人だよな咲田」
「苦労とかそんなレベルじゃないけどな」
今年でもう人生三十年。だが既に何度か死んでいるので実年齢なんて関係ない。ましてや今俺は、男から女に転生している。六年前の夏も同じような経験を二ヶ月ほどしたけど、今はもう二ヶ月なんてレベルを超えている。
「なあ咲田、それで本当に俺達はお前が言っていた異世界へ行けるのか?」
「ああ。どうやらまた例の扉が開いたらしくて、二日間だけ俺達は異世界旅行ができる」
「二日……。咲ちゃんと旅行ができるなんて久しぶりで嬉しい」
「色々あってこういう旅行してなかったからな」
六年前の事故以来、俺達は旅行という旅行をなるべく避けてきていた。理由は一種のトラウマによるもの。だからこうして三人で出かけられるのは、向日葵が言っていた通り嬉しいに越したことはない。
「普通では考えられない話だよな、それって。本来なら咲田が事故に遭わなければ、こんな事にはならなかったし」
「それは言うなよ。俺だって本来こんな姿になりたくなかったんだから」
何はともあれ、俺は二年ぶり、向日葵と雄一にとっては初めてあの異世界に明日向かう事になる。そこは俺が二ヶ月水の姫巫女として過ごした、大切な人たちが待つあの場所だった。
■□■□■□
「ほう、また咲田が来るのか妾達の世界に」
「はい。返事は返ってきていませんけど、彼なら帰ってきますよ。私は手紙も出しておきましたから」
「それはまた、楽しみじゃのうセリーナ」
「はい」
あれから二年が経った。
私達の国は未だに大きな争いは無く、姫巫女達の助力もあって平和は保たれている。しかしこれも、彼の力がなければ私がここに王妃として長い間立っていられる事もなかった。
春風咲田。
かつて中身は男でありながら、水の姫巫女として世界を変えるキッカケを与えてくれた人物。彼は既に死人であり、二度と会う事もないと思っていたのも束の間、四年経った一昨年彼は再び私達の目の前に現れた。
再会することはほぼ不可能に近いと思われていた私達にとっては、彼と共に過ごす三日間は至福の時間だった。それがつい二年前の話。そして今年、私達の世界と彼の世界の住む世界が、再び繋がる事になり、再び彼がこの世界にやってくる事になった。
「咲田、元気だといいんだけど」
その会話を聞いていたグリアラがそう呟く。
「元気ですよきっと。何せまた転生しても、ああやって元気だったんですから」
「確か女性に転生したんだっけ?」
「そう言っていました」
「普通ありえない話よねそれ。姫巫女でもそこまではないと思うし」
「何というか不思議な方なのは違いないですよね」
最初水の姫巫女の中身が男性になってしまったのは、皆驚いた。勿論それは咲田自身にとっても衝撃的な出来事ではあったのだろうけど、その二ヶ月は私達にとっても彼にとってもかけがえのないものになった事には違いない。
「咲田君にまたお会いできるんなんて、私嬉しいです」
「シャイニーは相変わらずじゃな。やはりお主、咲田の事を」
「ち、違いますよ。私は……その、ずっと会えなかったのが寂しかっただけで」
「じゃからそれを……」
「ムウナもその辺にしてあげなさいよ。まあ、私もその咲田には二年前に……」
「そういえば二年前に咲田様が去るときに、返事を聞かせてとか言っていましたよね」
「な、何でそんなこと覚えているのよセリーナは。でも、だからと言って告白したとかそんなわけじゃ……」
「顔赤いですよ、グリアラ」
咲田に対する姫巫女達の好意があるのは明らかだった。その中に
私がいる事を否定はできないけど、その想いを叶えられる事は難しい話なのかもしれない。もしその想いを叶える時は、恐らく彼がこの世界にずっといる事になる事が前提になる。
(でも、咲田様には住む世界がありますから)
それを強制できるような事は、私達にはできない。
「でも咲田君、また何日か後には帰らなければならないんですよね」
「時空門が開いているのは今回二日と短いです」
「二日……以前より短いのう」
「本来は開く事が例外ですから、その辺は仕方ないんですよ」
「それは私達も理解しているけど、改めて聞くと寂しいわね」
「しかし妾達ではどうにかできる話ではないからのう。それに関しては」
以前は二ヶ月私達の世界にいたからこそ、二日はすごく短く感じられるのは私もそうだった。二日だったら、遠くにも行けない上に帰るときや睡眠時間を考えると、もっと短く感じる。
「予定では明日に来ると思います。それまで私達は待ちましょう」
■□■□■□
セリーナ達のいる異世界への出発の朝。俺達はセリーナが指定したある場所へ来ていた。
「本当にこんな所に扉があるのか?」
「セリーナが言うからには、ここにあるらしい。というか向日葵は?」
「待って……二人とも……早い」
「どんだけ荷物持ってきているんだよ向日葵」
セリーナが指定したのは、ある山の山頂。自宅からは遠いので、先日に近くの宿で一泊して朝から山を登っているのだが、向日葵は登山には向かないほどの荷物をの持っていたので、時間がかかっていた。
「たった二日だろ?」
「二日でも、女性は荷物が多いの」
「そうですか」
この調子で時間足りるか不安だな……。
「本当お前って苦労人だよな咲田」
「苦労とかそんなレベルじゃないけどな」
今年でもう人生三十年。だが既に何度か死んでいるので実年齢なんて関係ない。ましてや今俺は、男から女に転生している。六年前の夏も同じような経験を二ヶ月ほどしたけど、今はもう二ヶ月なんてレベルを超えている。
「なあ咲田、それで本当に俺達はお前が言っていた異世界へ行けるのか?」
「ああ。どうやらまた例の扉が開いたらしくて、二日間だけ俺達は異世界旅行ができる」
「二日……。咲ちゃんと旅行ができるなんて久しぶりで嬉しい」
「色々あってこういう旅行してなかったからな」
六年前の事故以来、俺達は旅行という旅行をなるべく避けてきていた。理由は一種のトラウマによるもの。だからこうして三人で出かけられるのは、向日葵が言っていた通り嬉しいに越したことはない。
「普通では考えられない話だよな、それって。本来なら咲田が事故に遭わなければ、こんな事にはならなかったし」
「それは言うなよ。俺だって本来こんな姿になりたくなかったんだから」
何はともあれ、俺は二年ぶり、向日葵と雄一にとっては初めてあの異世界に明日向かう事になる。そこは俺が二ヶ月水の姫巫女として過ごした、大切な人たちが待つあの場所だった。
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「ほう、また咲田が来るのか妾達の世界に」
「はい。返事は返ってきていませんけど、彼なら帰ってきますよ。私は手紙も出しておきましたから」
「それはまた、楽しみじゃのうセリーナ」
「はい」
あれから二年が経った。
私達の国は未だに大きな争いは無く、姫巫女達の助力もあって平和は保たれている。しかしこれも、彼の力がなければ私がここに王妃として長い間立っていられる事もなかった。
春風咲田。
かつて中身は男でありながら、水の姫巫女として世界を変えるキッカケを与えてくれた人物。彼は既に死人であり、二度と会う事もないと思っていたのも束の間、四年経った一昨年彼は再び私達の目の前に現れた。
再会することはほぼ不可能に近いと思われていた私達にとっては、彼と共に過ごす三日間は至福の時間だった。それがつい二年前の話。そして今年、私達の世界と彼の世界の住む世界が、再び繋がる事になり、再び彼がこの世界にやってくる事になった。
「咲田、元気だといいんだけど」
その会話を聞いていたグリアラがそう呟く。
「元気ですよきっと。何せまた転生しても、ああやって元気だったんですから」
「確か女性に転生したんだっけ?」
「そう言っていました」
「普通ありえない話よねそれ。姫巫女でもそこまではないと思うし」
「何というか不思議な方なのは違いないですよね」
最初水の姫巫女の中身が男性になってしまったのは、皆驚いた。勿論それは咲田自身にとっても衝撃的な出来事ではあったのだろうけど、その二ヶ月は私達にとっても彼にとってもかけがえのないものになった事には違いない。
「咲田君にまたお会いできるんなんて、私嬉しいです」
「シャイニーは相変わらずじゃな。やはりお主、咲田の事を」
「ち、違いますよ。私は……その、ずっと会えなかったのが寂しかっただけで」
「じゃからそれを……」
「ムウナもその辺にしてあげなさいよ。まあ、私もその咲田には二年前に……」
「そういえば二年前に咲田様が去るときに、返事を聞かせてとか言っていましたよね」
「な、何でそんなこと覚えているのよセリーナは。でも、だからと言って告白したとかそんなわけじゃ……」
「顔赤いですよ、グリアラ」
咲田に対する姫巫女達の好意があるのは明らかだった。その中に
私がいる事を否定はできないけど、その想いを叶えられる事は難しい話なのかもしれない。もしその想いを叶える時は、恐らく彼がこの世界にずっといる事になる事が前提になる。
(でも、咲田様には住む世界がありますから)
それを強制できるような事は、私達にはできない。
「でも咲田君、また何日か後には帰らなければならないんですよね」
「時空門が開いているのは今回二日と短いです」
「二日……以前より短いのう」
「本来は開く事が例外ですから、その辺は仕方ないんですよ」
「それは私達も理解しているけど、改めて聞くと寂しいわね」
「しかし妾達ではどうにかできる話ではないからのう。それに関しては」
以前は二ヶ月私達の世界にいたからこそ、二日はすごく短く感じられるのは私もそうだった。二日だったら、遠くにも行けない上に帰るときや睡眠時間を考えると、もっと短く感じる。
「予定では明日に来ると思います。それまで私達は待ちましょう」
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セリーナ達のいる異世界への出発の朝。俺達はセリーナが指定したある場所へ来ていた。
「本当にこんな所に扉があるのか?」
「セリーナが言うからには、ここにあるらしい。というか向日葵は?」
「待って……二人とも……早い」
「どんだけ荷物持ってきているんだよ向日葵」
セリーナが指定したのは、ある山の山頂。自宅からは遠いので、先日に近くの宿で一泊して朝から山を登っているのだが、向日葵は登山には向かないほどの荷物をの持っていたので、時間がかかっていた。
「たった二日だろ?」
「二日でも、女性は荷物が多いの」
「そうですか」
この調子で時間足りるか不安だな……。
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