不老少女とふわふわたあめ
179 「魔女の遺産」
王国の上空。
風を切るように空を飛ぶ怪鳥の脚に掴まりながら、お手伝いさんは訝しむように眉根を寄せていた。
「なんか王国が騒がしい……?」
ボヤけてよく確認することはできないが、たくさんの人が慌ただしく走り回っているように見えた。
またお祭りでもやっているのだろうかとも思ったが、そんな華やかな雰囲気でもない。
「もっと高度を下げて、よく見える高さまで下りてもらえませんか?」
気になったお手伝いさんは怪鳥に頼むと、正しく彼の意思を汲んで高度を下げて旋回してくれた。
空に大きな鳥が飛んでいることに気づかないくらいには騒がしい。新たな騒ぎのタネにならない程度の高さまで下がると、お手伝いさんは目を凝らしてよく見てみる。
「……裸?」
騒ぎの中心。人集りができているところには複数の男が素っ裸で倒れていた。
どうやらそこだけではなく、王国のあちこちで同じことが起きているらしい。
この騒ぎを鎮圧するために奔走する騎士団たちも、なんだかやりづらそうだった。
「よくわからないけど、あの様子なら大丈夫そうかな」
もし暴動や、あるいは殺人のような事件が発生しているのだとしたら一大事だったが、お手伝いさんは先を急ぐことにした。
「アトリエまで大急ぎでお願いします!」
怪鳥は大きな翼をはためかせると、速度がグングン上がっていく。
錬金術士がいるであろうアトリエに向かう途中の草原で、お手伝いさんは信じられない異様な光景を見た。
草原に、大量の武器やら鎧やらが転がっていたのだ。それも、どれもこれも王国に依頼されて作った物ばかり。
「なにがどうなってるんだ……?」
極め付けは、アトリエの周りを囲むように穿たれたクレーター。建物は無事だが、地面はえぐれてめくれ上がり、付近の草花はその威力に吹き飛ばされて倒れている。
地面に降り立ったお手伝いさんは呆然と呟く。
どこからどう見ても戦闘の跡だ。この穏やかな草原で、激しいやり合いがあったようにしか見えない。
そしてそれは事実その通りである。
「先生は?!」
転がり込むように急いでアトリエに入ると、中には錬金術士どころかいぬねこの姿もなく、もぬけの殻だった。
「先生!」
自室にいるのかもしれないと思ったお手伝いさんは悪いと思いながらも錬金術士の部屋のドアを開けて中に入り込んだ。
何度か掃除をするために入ったことはあるが、
「こんなのあったっけ……?」
ベッドの位置が大きくズレていて、地下へ続く階段が大きく口を開けていた。
唾を飲み込んで恐る恐る降り、重厚な扉が出迎える。しかし隙間があることから、閉まってはいないらしい。
一つ息をついて呼吸を整えてから、錬金術士の姿を求めて扉をくぐってみる。
「これは……」
目の前に広がったのは、見たこともない、複雑怪奇な魔法陣が描かれた床。読めない字で書かれた大量の本の山。埃をかぶった棚には眼球、骨、毛――何かの生き物がパーツごとにバラされ、瓶に詰められ綺麗な状態で保存されている。
錬金術士の師匠のアトリエでも、同じような光景を見たことがある。
そこには大量の、魔女の遺産が眠っていたのだった。
風を切るように空を飛ぶ怪鳥の脚に掴まりながら、お手伝いさんは訝しむように眉根を寄せていた。
「なんか王国が騒がしい……?」
ボヤけてよく確認することはできないが、たくさんの人が慌ただしく走り回っているように見えた。
またお祭りでもやっているのだろうかとも思ったが、そんな華やかな雰囲気でもない。
「もっと高度を下げて、よく見える高さまで下りてもらえませんか?」
気になったお手伝いさんは怪鳥に頼むと、正しく彼の意思を汲んで高度を下げて旋回してくれた。
空に大きな鳥が飛んでいることに気づかないくらいには騒がしい。新たな騒ぎのタネにならない程度の高さまで下がると、お手伝いさんは目を凝らしてよく見てみる。
「……裸?」
騒ぎの中心。人集りができているところには複数の男が素っ裸で倒れていた。
どうやらそこだけではなく、王国のあちこちで同じことが起きているらしい。
この騒ぎを鎮圧するために奔走する騎士団たちも、なんだかやりづらそうだった。
「よくわからないけど、あの様子なら大丈夫そうかな」
もし暴動や、あるいは殺人のような事件が発生しているのだとしたら一大事だったが、お手伝いさんは先を急ぐことにした。
「アトリエまで大急ぎでお願いします!」
怪鳥は大きな翼をはためかせると、速度がグングン上がっていく。
錬金術士がいるであろうアトリエに向かう途中の草原で、お手伝いさんは信じられない異様な光景を見た。
草原に、大量の武器やら鎧やらが転がっていたのだ。それも、どれもこれも王国に依頼されて作った物ばかり。
「なにがどうなってるんだ……?」
極め付けは、アトリエの周りを囲むように穿たれたクレーター。建物は無事だが、地面はえぐれてめくれ上がり、付近の草花はその威力に吹き飛ばされて倒れている。
地面に降り立ったお手伝いさんは呆然と呟く。
どこからどう見ても戦闘の跡だ。この穏やかな草原で、激しいやり合いがあったようにしか見えない。
そしてそれは事実その通りである。
「先生は?!」
転がり込むように急いでアトリエに入ると、中には錬金術士どころかいぬねこの姿もなく、もぬけの殻だった。
「先生!」
自室にいるのかもしれないと思ったお手伝いさんは悪いと思いながらも錬金術士の部屋のドアを開けて中に入り込んだ。
何度か掃除をするために入ったことはあるが、
「こんなのあったっけ……?」
ベッドの位置が大きくズレていて、地下へ続く階段が大きく口を開けていた。
唾を飲み込んで恐る恐る降り、重厚な扉が出迎える。しかし隙間があることから、閉まってはいないらしい。
一つ息をついて呼吸を整えてから、錬金術士の姿を求めて扉をくぐってみる。
「これは……」
目の前に広がったのは、見たこともない、複雑怪奇な魔法陣が描かれた床。読めない字で書かれた大量の本の山。埃をかぶった棚には眼球、骨、毛――何かの生き物がパーツごとにバラされ、瓶に詰められ綺麗な状態で保存されている。
錬金術士の師匠のアトリエでも、同じような光景を見たことがある。
そこには大量の、魔女の遺産が眠っていたのだった。
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