不老少女とふわふわたあめ

鶴亀七八

165 「脳筋悪魔」

「まぁ及第点かしらね」

 余裕綽々と言った様子で、お手伝いさんの全力戦闘を難なくいなしきった隊長。

 上には上がいるということをこれ以上ないくらいに実感したお手伝いさん。

「サミのやつ、だいぶ遊んでるようだったな。どうだった?」

 仰向けに転がり、乱れまくった呼吸を整えるお手伝いさんのそばに、看守がしゃがんで囁いてきた。

 みぞおちに強力な一撃を打ち込まれてもんどり打っていたが、お手伝いさんが戦っている間に復活したらしい。

「隊長の名は伊達じゃないって感じでした……」
「脳筋悪魔とかの方がしっくりくるよな絶対」
「それは……否定できませんね」
「だろ?」
「ちょっとあんたら! なんか失礼なこと話してないでしょうね?!」
「「いえまったく!」」

 声量からして隊長には届いていないはずだが、なかなかに鋭い勘をお持ちでいらっしゃる。

 意図せずハモり、お互い尻に敷かれるなこりゃ、と心の中でも二人は同じことを考えていた。

「サミよー、相手は素人なんだからもうちょっと手加減してやってもよかったんじゃないか?」
「それじゃ正確な実力が測れないでしょ。あたし不器用だし」

 看守が肩を貸してくれて、ボロボロになったお手伝いさんは立ち上がる。「ありがとうございます」とお礼を言うと、「おう、気にすんな。これでおたくも疾風はやて隊の仲間入りだ」と親指立ててサムズアップ。

「もしかして、この部隊の人たちはみんな通ってきた道なんですか?」
「おうよ。サミのやつが隊長になったその日からな」

 そこそこ人数が揃っている部隊全員と手合わせしたということか。不器用もそうだが、彼女の体力は底なしなのだろうか。

「なにはともあれ無事、五体満足で終わってよかったな」
「それはちょっと容赦なさすぎませんかね、隊長さん……」
「あたしはそこまで鬼じゃないわよ!」

 冗談めかして言うふたりにご立腹の隊長。実際問題、彼女がその気になれば簡単な話かもしれない。

「付き合わせて悪かったわね。知りたいことは知れたから、ふたりとももう休んでいいわよ。てか休みなさい。明日は早いんだから」
「そうします……」

 練習試合のようなものであれ、戦うというのはやっぱり慣れないお手伝いさん。体力以上に気疲れが相当だった。

 看守のグランデに肩を貸してもらいながら、割り振られたテントへと向かい、移動と模擬試合でその日は終えたのだった。

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