不老少女とふわふわたあめ
134 「お手伝いさん、怒る」
失った家具たちを少しでも補填しようと、初めての日曜大工にお手伝いさんは挑戦している。
イスは出来たので、今度はテーブルを作っていたのだが――、
釘を打ち付ける手が唐突に止まった。
「うん? どうしたんだい?」
ずっと淀みなく動いていた手が止まって、それを見ていたいぬねこが怪訝な声を上げる。
それに「いえ……」と曖昧に答えてから、お手伝いさんは錬金術士に向き直る。
金色の瞳を猫のように細め、気持ち良さそうに日向ぼっこをする彼女。その姿はまさに猫のようだが、真の正体は【伝説の錬金術士】である。
「先生……」
低めの唸るような声がお手伝いさんの喉から溢れてきた。声音にはどことなく、怒りが滲んでいるように感じる。
「んー? どうしたのお手伝い君ー?」
そんな彼の怒りなど素知らぬフリで、錬金術士は口だけを動かした。
「サラッと言ってたから危うく聞き逃すところでしたよ……」
金槌の柄を握る力が自然と強くなる。
「さっき『携帯用の練金釜ならある』って言ってましたよね?!」
「――ハッ!?」
しまった! とでも言うような表情になり、あわあわと震え出す。
「そ、そそそそそんなものあるわけないじゃーん?」
「あからさまに動揺してませんか?」
「してないです」
指摘すると急にキリッと否定してきた。ますます怪しい。
しかしお手伝いさんは問いかける矛先をいぬねこへと向けた。
いぬねこであれば、錬金術士のパートナーなのだから、その辺りの事情は把握しているはずである。これ以上彼女に問いかけるよりは有益な情報を吐いてくれそうと判断した。
「いぬねこちゃん」
「う、うむ?」
「携帯用の練金釜とやらがありますよね?」
「え、と。ど、どうだったかなぁ?」
しきりに錬金術士の方をチラチラと見やりながら、なんとか言い逃れしようと適当なことを言ういぬねこ。
お手伝いさんは、軽く脅迫することにした。
「いぬねこちゃんは、ダイエットをしてるんですよね?」
「そ、そうだが……それがどうしたと言うんだい?」
「僕が完璧に栄養管理して、ギリギリ餓死しない程度に食事を制限しましょうか。――痩せますよ?」
最後は飛びっきりの悪い笑みを浮かべてやった。
すると、いぬねこは青い顔をして首をブンブン振って口を割った。毛皮に覆われているので本当に青くなったのかはわからないが。
「確かにある! 携帯用の練金釜!」
「あるんですね?」
「ある!」
いぬねこがここまではっきりと言うのだから、あると言うのは本当のことで間違いなさそうだ。
「先生」
「は、はい」
つい先程まで眠そうだった錬金術士も、話の流れから逃げられないと悟り、その場で正座していた。
「携帯用の練金釜がどんなものなのか、僕は見たことがないからわかりませんけど、それがあればある程度の錬金術は使えるんですよね?」
「はい……」
「だったら、それでもできる仕事をまず片付けてください! いいですね?!」
「はいぃ!」
プンスカ怒るお手伝いさんに恐れをなした錬金術士は、慌ててアトリエの中に飛び込んでいった。
「もお、最近のお手伝い君ちょっと怖いよぉ~……」
聞こえないようにコッソリと呟いた錬金術士。
「仕事をしなくてもいい理由を見つけたから、一緒にゆっくり過ごせると思ったんだけどな……」
ポロリとこぼれた本音も、お手伝いさんには届かなかった。
イスは出来たので、今度はテーブルを作っていたのだが――、
釘を打ち付ける手が唐突に止まった。
「うん? どうしたんだい?」
ずっと淀みなく動いていた手が止まって、それを見ていたいぬねこが怪訝な声を上げる。
それに「いえ……」と曖昧に答えてから、お手伝いさんは錬金術士に向き直る。
金色の瞳を猫のように細め、気持ち良さそうに日向ぼっこをする彼女。その姿はまさに猫のようだが、真の正体は【伝説の錬金術士】である。
「先生……」
低めの唸るような声がお手伝いさんの喉から溢れてきた。声音にはどことなく、怒りが滲んでいるように感じる。
「んー? どうしたのお手伝い君ー?」
そんな彼の怒りなど素知らぬフリで、錬金術士は口だけを動かした。
「サラッと言ってたから危うく聞き逃すところでしたよ……」
金槌の柄を握る力が自然と強くなる。
「さっき『携帯用の練金釜ならある』って言ってましたよね?!」
「――ハッ!?」
しまった! とでも言うような表情になり、あわあわと震え出す。
「そ、そそそそそんなものあるわけないじゃーん?」
「あからさまに動揺してませんか?」
「してないです」
指摘すると急にキリッと否定してきた。ますます怪しい。
しかしお手伝いさんは問いかける矛先をいぬねこへと向けた。
いぬねこであれば、錬金術士のパートナーなのだから、その辺りの事情は把握しているはずである。これ以上彼女に問いかけるよりは有益な情報を吐いてくれそうと判断した。
「いぬねこちゃん」
「う、うむ?」
「携帯用の練金釜とやらがありますよね?」
「え、と。ど、どうだったかなぁ?」
しきりに錬金術士の方をチラチラと見やりながら、なんとか言い逃れしようと適当なことを言ういぬねこ。
お手伝いさんは、軽く脅迫することにした。
「いぬねこちゃんは、ダイエットをしてるんですよね?」
「そ、そうだが……それがどうしたと言うんだい?」
「僕が完璧に栄養管理して、ギリギリ餓死しない程度に食事を制限しましょうか。――痩せますよ?」
最後は飛びっきりの悪い笑みを浮かべてやった。
すると、いぬねこは青い顔をして首をブンブン振って口を割った。毛皮に覆われているので本当に青くなったのかはわからないが。
「確かにある! 携帯用の練金釜!」
「あるんですね?」
「ある!」
いぬねこがここまではっきりと言うのだから、あると言うのは本当のことで間違いなさそうだ。
「先生」
「は、はい」
つい先程まで眠そうだった錬金術士も、話の流れから逃げられないと悟り、その場で正座していた。
「携帯用の練金釜がどんなものなのか、僕は見たことがないからわかりませんけど、それがあればある程度の錬金術は使えるんですよね?」
「はい……」
「だったら、それでもできる仕事をまず片付けてください! いいですね?!」
「はいぃ!」
プンスカ怒るお手伝いさんに恐れをなした錬金術士は、慌ててアトリエの中に飛び込んでいった。
「もお、最近のお手伝い君ちょっと怖いよぉ~……」
聞こえないようにコッソリと呟いた錬金術士。
「仕事をしなくてもいい理由を見つけたから、一緒にゆっくり過ごせると思ったんだけどな……」
ポロリとこぼれた本音も、お手伝いさんには届かなかった。
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