不老少女とふわふわたあめ

鶴亀七八

130 「錬金術士は人嫌い?」

 なんとかアトリエの片付けは済んだものの、随分とスッキリとした内装に変貌していた。

「まさかここまで物が壊れるとは思ってませんでした……」
「私も、ここまで大失敗したのはいつぶりかわからないくらいだよー」

 錬金術士が練金を本格的に失敗したところを見たことがないお手伝いさんは、練金の恐ろしい部分を肌で感じることとなった。

 使い物にならなくなってしまったものはまとめて外に置いてあるが、山のようになってしまった。

 郵便物を届けに定期的にやってくる郵便ちゃんことチナあたりは何事かと驚きそうだ。

「錬金術士はこれがあるから人が多いところでは仕事できないんだよねー」
「そういうことだったんですね。僕はてっきり——」
「てっきり?」
「あ、いえ……なんでも」

 言いかけてやめるお手伝いさん。

 そこまで言われてしまってはどうしても気になってくるのが人間という生き物だ。

「なになにー? てっきりー?」

 にじり寄るように言う錬金術士。あまりいい言葉が後に続くとは思えなかったが、気になってしまってはしょうがない。

 しつこく言い寄ってくる錬金術士に折れたお手伝いさんは、口を割った。

「てっきり……人が苦手なのかと」
「グサァ!?」

 心に刺さる発言にショックを隠せない錬金術士。

「いやいやお手伝い君ー!? 私ほど博愛主義の錬金術士はいないんだよー?! 知らないのー?!」
「知りませんよ! 錬金術士界の常識の話なんて!」

 お手伝いさんが会ったことのある錬金術士は、他にはあの野蛮な師匠くらいのものである。

 錬金術士にもいろんな人がいるということをその時に知ったが、つまりは彼の中で錬金術士の基準となる人がそれだけということだ。

「そもそもだよ? 私が人嫌いだったらお手伝い君を助けたり、ここに置いたりしませんからー!」

 顔を真っ赤にしてプンスカと怒る錬金術士。

 それもそうですね、とお手伝いさんは小さく笑った。

「まー確かに? 基本的に錬金術士は人が嫌いだから人里離れた場所に暮らしてるんだけどねー」
「やっぱりそういうことだったんですね。そしたら先生は錬金術士の中でも特殊な方なんですね? 王国に近いところにアトリエがあるわけですし」
「あんまり気にしたことなかったけど、そういうことだねー。ちなみにお師匠さんは『殺したくなるくらいに嫌いだ』っていって唾吐き捨ててたー」
「だから僕のこと散々痛めつけたんですね?!」

 修行していた頃の記憶が蘇ってきて、激しく身震いしてしまったお手伝いさんだった。

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