不老少女とふわふわたあめ
120 「心臓に悪いイタズラ」
食料をたんまりと買い込んだおかげで、しばらくは食べるものには困らない。
王国からの要請である「武器の大量生産」も、お手伝いさんが寝込んでいる間に進められていたようで、お金もいつの間にか結構あった。
「でっきた~♪」
ウキウキ気分で錬金釜から完成したものを取り出す。
それは、一本のナイフであった。刃渡15センチほどの銀色がギラギラ輝く本格的なもの。
「また危なっかしいものを……」
すっかり箒を握る姿が板についてしまったお手伝いさんは、少々心配そうにつぶやいた。いままでは武器を練金しようとしてもなぜか調理器具になっていたのでよかったが、オリジナル練金棒を作ってからは失敗することも少なくなった。
包丁もまともに握ったことがないのに刃物を持たせるなんて、怖くて見ていられない。
「危なくないよ~。だってこれ本物じゃないもん」
そう言うと錬金術士はナイフを逆手に握り、切っ先が完全に見えなくなるまで腹部に突き立てた。
あまりにも自然に、当たり前のように、自分の腹をそのナイフで突き刺したのだ。
「…………なっ」
突然すぎてお手伝いさんは止めることもできなかった。ただ錬金術士の腹部から柄が生えるかのように刺さっている。
あっという間に血の気が引いていくお手伝いさん。
「何してるんですかバカ!」
我に返って慌てて駆け寄ると、錬金術士はけろっとした表情をしていて。
「……あれ?」
「バカとは失礼な。本物じゃないって言ったでしょ~?」
錬金術士の手にはナイフが握られている。血の一滴も付着していなければ、怪我の一つもしていない。
どういうこと?
「子供騙しのおもちゃみたいなものだよ~」
先端を指で押し込むと、約15センチの刃渡りがスッポリと柄の内側へと沈み込んだ。離すとバネ仕掛けのように飛び出して元の状態へと戻る。
よくよく見てみれば、刃も潰れていて切れない。
「お、脅かさないでくださいよ……」
本気で驚いたお手伝いさんは腰が抜けそうになった。声だって震えてしまっている。
「やれやれ。趣味の悪いイタズラはその辺にして、仕事を再開したらどうだい? 彼が元気になってくれて嬉しいのはわかるけど、まだ病み上がりなんだ。ほどほどにしたまえ」
いぬねこが横から口を挟む。いつものように昼寝をしていたが、騒がしいので目が覚めてしまったのだ。
「いぬねこちゃん。誰が嬉しいって~?」
「いや、聞き間違いじゃないかな。誰もそんなことは言っていないよ」
無駄に凄まれてしまったので、簡単にいぬねこは自分の言ったことを曲げてしまった。
「でもま~、病み上がりっていうのは確かだし、真面目に仕事しよっと~」
満足したのか、クルリと錬金釜へと向き直る。
「もうこんなイタズラやめてくださいよ?」
「わかったわかった~♪」
本当にわかってくれたのか怪しい軽い返事だったが、貴重な収入源である彼女の仕事を邪魔するわけにはいかない。それをサポートするのが自分の仕事なのだから、と言い聞かせて、文句を吐き出したい気持ちを飲み込んだのだった。
王国からの要請である「武器の大量生産」も、お手伝いさんが寝込んでいる間に進められていたようで、お金もいつの間にか結構あった。
「でっきた~♪」
ウキウキ気分で錬金釜から完成したものを取り出す。
それは、一本のナイフであった。刃渡15センチほどの銀色がギラギラ輝く本格的なもの。
「また危なっかしいものを……」
すっかり箒を握る姿が板についてしまったお手伝いさんは、少々心配そうにつぶやいた。いままでは武器を練金しようとしてもなぜか調理器具になっていたのでよかったが、オリジナル練金棒を作ってからは失敗することも少なくなった。
包丁もまともに握ったことがないのに刃物を持たせるなんて、怖くて見ていられない。
「危なくないよ~。だってこれ本物じゃないもん」
そう言うと錬金術士はナイフを逆手に握り、切っ先が完全に見えなくなるまで腹部に突き立てた。
あまりにも自然に、当たり前のように、自分の腹をそのナイフで突き刺したのだ。
「…………なっ」
突然すぎてお手伝いさんは止めることもできなかった。ただ錬金術士の腹部から柄が生えるかのように刺さっている。
あっという間に血の気が引いていくお手伝いさん。
「何してるんですかバカ!」
我に返って慌てて駆け寄ると、錬金術士はけろっとした表情をしていて。
「……あれ?」
「バカとは失礼な。本物じゃないって言ったでしょ~?」
錬金術士の手にはナイフが握られている。血の一滴も付着していなければ、怪我の一つもしていない。
どういうこと?
「子供騙しのおもちゃみたいなものだよ~」
先端を指で押し込むと、約15センチの刃渡りがスッポリと柄の内側へと沈み込んだ。離すとバネ仕掛けのように飛び出して元の状態へと戻る。
よくよく見てみれば、刃も潰れていて切れない。
「お、脅かさないでくださいよ……」
本気で驚いたお手伝いさんは腰が抜けそうになった。声だって震えてしまっている。
「やれやれ。趣味の悪いイタズラはその辺にして、仕事を再開したらどうだい? 彼が元気になってくれて嬉しいのはわかるけど、まだ病み上がりなんだ。ほどほどにしたまえ」
いぬねこが横から口を挟む。いつものように昼寝をしていたが、騒がしいので目が覚めてしまったのだ。
「いぬねこちゃん。誰が嬉しいって~?」
「いや、聞き間違いじゃないかな。誰もそんなことは言っていないよ」
無駄に凄まれてしまったので、簡単にいぬねこは自分の言ったことを曲げてしまった。
「でもま~、病み上がりっていうのは確かだし、真面目に仕事しよっと~」
満足したのか、クルリと錬金釜へと向き直る。
「もうこんなイタズラやめてくださいよ?」
「わかったわかった~♪」
本当にわかってくれたのか怪しい軽い返事だったが、貴重な収入源である彼女の仕事を邪魔するわけにはいかない。それをサポートするのが自分の仕事なのだから、と言い聞かせて、文句を吐き出したい気持ちを飲み込んだのだった。
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