不老少女とふわふわたあめ
112 「このもふもふ感」
それからしばしの時が流れ――、
いよいよ、お手伝いさんは負傷から復帰した。
彼は結局知らないままだったが、錬金術士の作った薬がバッチリと効き目を発揮して、かなり早い復帰となった。
「いままで迷惑をかけました。本日より復帰させてもらいます!」
「待ってたよお手伝い君~! ホント、色々と大変だったんだから~」
「主に小生がね……」
本人も錬金術士も喜んでいるが、何よりも彼の復帰を喜んでいたのは犬にも猫にも見える動物、いぬねこであった。
お手伝いさんが倒れているところを助けて拾ってからというもの、雑用に関してはすっかり彼に頼りきりになっていた。そのシワ寄せがやってきていたが、それも乗り切った。
これからは存分にお昼寝を堪能できるだろう。お手伝いさんが錬金術士の相手をしてくれるから。
「さてと、それじゃあ早速掃除でもしますか……」
復帰後早々に気が滅入るお手伝いさん。
常であれば毎日のように清掃をしていたため清潔だったアトリエも、長いこと掃除されていなければ埃もたまるし物も散らかる。
「先生はいつものように仕事をしていてくださいね。そんな心配そうな目で見なくても、僕ならもう大丈夫ですから」
「ホントだね? 信じるよ~?」
「はい。信じてください」
まるで親から離れない子供のようだが、これで本当に中身が子供だったら困りものだ。
錬金術士は言われた通り、仕事に取り掛かるため練金釜の前に立ち、師匠のアトリエで自作した彼女専用のオリジナル練金棒を構え、練金釜に素材を投入していく。
(あれが大先生のところで修行して作ったやつか。なんというか……)
体に若干の訛りを感じながらも、慣れた手つきで箒と塵取りを操るお手伝いさん。
そのついでとばかりに流し目で久々の作業風景を見やるが、彼女の扱う練金棒はまるで――、
(耳かきみたいだな)
巨大な耳かきにしか見えなかった。
先端がスプーン状に湾曲していて、反対側には彼女が大好きなもふもふがくっついている。まさに耳かきをそのまま大きくしたようなものだ。
「なに、お手伝い君~?」
こちらも久々にお手伝いさんが近くにいるという気まずさから、すぐに視線に気付いた。
「あ、いえ。その棒って……」
「お師匠さんのところで作ったやつだよ~。オリジナル練金棒!」
「先生らしいデザインですね。それ」
「かわいいでしょ~? とってもお気に入りなの! 性能も抜群なんだから~!」
お手伝いさんは練金棒の善し悪しについてはからっきしだったが、伝説の錬金術士とまで呼ばれる彼女が言うのだから、そうなのだろうと納得した。
「このもふもふ感を出すのに苦労したんだよ~。ここにかなり時間かかったの」
「そ、そうですか」
苦笑いを浮かべるお手伝いさん。
それはもふもふに謎のこだわりを見せて変に固執しなければ、もっと早く終わっていたということ。
この意味不明さは健在で、なぜかそれが懐かしく、そして嬉しく感じてしまうお手伝いさんであった。
いよいよ、お手伝いさんは負傷から復帰した。
彼は結局知らないままだったが、錬金術士の作った薬がバッチリと効き目を発揮して、かなり早い復帰となった。
「いままで迷惑をかけました。本日より復帰させてもらいます!」
「待ってたよお手伝い君~! ホント、色々と大変だったんだから~」
「主に小生がね……」
本人も錬金術士も喜んでいるが、何よりも彼の復帰を喜んでいたのは犬にも猫にも見える動物、いぬねこであった。
お手伝いさんが倒れているところを助けて拾ってからというもの、雑用に関してはすっかり彼に頼りきりになっていた。そのシワ寄せがやってきていたが、それも乗り切った。
これからは存分にお昼寝を堪能できるだろう。お手伝いさんが錬金術士の相手をしてくれるから。
「さてと、それじゃあ早速掃除でもしますか……」
復帰後早々に気が滅入るお手伝いさん。
常であれば毎日のように清掃をしていたため清潔だったアトリエも、長いこと掃除されていなければ埃もたまるし物も散らかる。
「先生はいつものように仕事をしていてくださいね。そんな心配そうな目で見なくても、僕ならもう大丈夫ですから」
「ホントだね? 信じるよ~?」
「はい。信じてください」
まるで親から離れない子供のようだが、これで本当に中身が子供だったら困りものだ。
錬金術士は言われた通り、仕事に取り掛かるため練金釜の前に立ち、師匠のアトリエで自作した彼女専用のオリジナル練金棒を構え、練金釜に素材を投入していく。
(あれが大先生のところで修行して作ったやつか。なんというか……)
体に若干の訛りを感じながらも、慣れた手つきで箒と塵取りを操るお手伝いさん。
そのついでとばかりに流し目で久々の作業風景を見やるが、彼女の扱う練金棒はまるで――、
(耳かきみたいだな)
巨大な耳かきにしか見えなかった。
先端がスプーン状に湾曲していて、反対側には彼女が大好きなもふもふがくっついている。まさに耳かきをそのまま大きくしたようなものだ。
「なに、お手伝い君~?」
こちらも久々にお手伝いさんが近くにいるという気まずさから、すぐに視線に気付いた。
「あ、いえ。その棒って……」
「お師匠さんのところで作ったやつだよ~。オリジナル練金棒!」
「先生らしいデザインですね。それ」
「かわいいでしょ~? とってもお気に入りなの! 性能も抜群なんだから~!」
お手伝いさんは練金棒の善し悪しについてはからっきしだったが、伝説の錬金術士とまで呼ばれる彼女が言うのだから、そうなのだろうと納得した。
「このもふもふ感を出すのに苦労したんだよ~。ここにかなり時間かかったの」
「そ、そうですか」
苦笑いを浮かべるお手伝いさん。
それはもふもふに謎のこだわりを見せて変に固執しなければ、もっと早く終わっていたということ。
この意味不明さは健在で、なぜかそれが懐かしく、そして嬉しく感じてしまうお手伝いさんであった。
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