不老少女とふわふわたあめ

鶴亀七八

017 「お出かけという名の」

 翌日。
 錬金術士は荷物をまとめて出掛ける準備をしていた。お手伝いさんはとっくに準備を済ませているので、錬金術士の準備が終わるのを待っている感じ。
 行き先については「山の方に行く」と言っていただけで詳しい事は特に聞いていない。
 というか、教えてくれない。
 行けば分かるの一点張り。
 昨日から計画していたようだが訊いても訊いても「明日になれば分かる」とか「行けば分かる」とかそんなのばっかりでお手伝いさんは半ば呆れていた。

「先生、まだですかー?」

 家の外で待機しているお手伝いさんが声をかける。
 中でバタバタと慌ただしく準備をしている音だけが聞こえてくる。どうやらまだらしい。
 いぬねこは大した準備もなく、いや、そもそも準備なんて必要ないのでとっくにお手伝いさんの頭の上で昼寝を始めていた。
 頭の上で寝ないでくださいよ……。
 そんな事を思いつつ、どうしていぬねこはお留守番じゃないのだろうとも思っていた。
 街に買い物に行く時などは、付いてくる事もあるが基本は留守番をしている。
 家を無人にしたら何があるか分からないからという理由は恐らく建前で、本音は動くのが面倒くさいからだろう。

「おまたせー」

 ようやく家から出てきた錬金術士は準備に時間がかかっていた割には軽装備である。中くらいのリュックサックを背負って、手には魔物対策として簡単な槍が一本。
 それだけ。
 たったそれだけの準備でお手伝いさん達を30分近く待たせていた。

「それじゃシュッパーツ!」

 悪いとはこれっぽっちも思っていないようで、錬金術士は手を掲げて声を上げる。
 そして、言われていた通り東の方向、山がある方へ歩き出した。

「そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか? 先生ってば」

 幾度となく訊いても返ってくる言葉はいつも同じで「行けば分かる」だった。
 錬金術士が何を考えているのか本気で分からなくなってきた。お手伝いさんはもう諦めて大人しくついて行く事に決めた。これ以上聞いた所で帰ってくるのは同じ言葉。同じ質問をするも疲れたし。
 それに山までは結構な距離がある。こんな所で無駄に体力を消費するのは得策では無いだろうと、無理矢理に理由を付けて自分に言い聞かせた。
 山に行くんだから、減ってきた材料を調達するとか、きっとそんな感じだ。
 だいたいの予想をしつつ、先を歩く錬金術士の後をついて行った。

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