不老少女とふわふわたあめ

鶴亀七八

025 「色んな意味で凄い人」

「あの、先生!」
「んー? どうしたのー?」

 錬金術士に後ろから声をかけると、歩調を緩めてお手伝いさんの隣まで下がってきた。

「先生の師匠って、どんな人なんですか?」

 最初にその単語を聞いた時からずっと気になっていた。
 先生の師匠という事はつまり、お手伝いさんにとっては大先生という事になる。
 なるべく事前に情報を貰っておいて、粗相の無いように振る舞わなくてはいけないと思ったのだ。

「お師匠さんはねー、何て言うか……色んな意味ですごい人だよー」
「色んな意味?」

 それはどんな意味だろう。錬金術士の師匠なんだから凄い人というのは簡単に想像出来るのだが、どんな感じに凄いのかが全然分からない。

「錬金術だけじゃなく、戦闘技術などにおいても才覚があるという事さ」

 変わっていぬねこが答えてくれた。

「本当はお手伝い君には会わせたくないんだけどねー」

 なんて事を錬金術士は言う。
 お手伝いさんとしては是非とも会ってみたかった。伝説の錬金術士とまで呼ばれた人を育てた訳だから、興味は尽きない。

「小生も彼女には会いたくないところなのだが、君達が行って小生が行かなかったら後で何を言われるか分からないからね」

 いぬねこは錬金術士の師匠には会いたくないようだ。加えて、その錬金術士も師匠に会う事を若干ではあるが躊躇っているように見えなくもない。
 二人にここまで言わせる師匠って、一体どんな人だろう。
 興味は募るばかりだ。
 だが、乗り気じゃない二人に質問をしたところでちゃんとした答えが返ってくるだろうか。錬金術士はいまいち要領を掴めない曖昧な返答しか帰ってこないだろうし、ここはいぬねこに聞いてみるべきだろう。
 そう判断したお手伝いさんはいぬねこに問う。

「他には何かないんですか?」
「何かとは何かな?」
「例えば、性格とか特徴とか」

 適当に例を挙げて聞いてみた途端、急にいぬねこの表情が険しくなった。ような気がしただけで気のせいかも知れないが。

「それは聞かないでいてくれるととても助かる。何度も聞いていると思うが、行けば分かるさ。実際にその目で見て、その耳で聞いて、その頭で実感した方がいい」

 いぬねこですら答えてくれなかった。
 こうなると期待通りの返事は返ってこないかも知れない。錬金術士に聞いても同じような事を言われる気がする。
 自分で振った話題ではあるが、ここで打ち切った方が良いとお手伝いさんは判断した。
 結局、掴めた情報は「色んな意味で凄い人。戦闘技術もある」くらいだった。

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