不老少女とふわふわたあめ
026 「あーれー」
「先生」
「分かってるよ」
お手伝いさんは目で、錬金術士は耳で、その異常に気づいた。
山の入り口も目前というところで、お手伝いさんは山の大きさゆえに空を見上げた。するとそこに小さな黒い影が見えたのだ。距離はかなり遠いはずなのに見えるという事は、かなり大きいのかも知れない。
錬金術士は、いつものようにのほほんと歩いていたが、よく聞こえるらしい耳で風の吹き抜けるような音ではなく、切る音を捉えていた。
今までに見た事もない、真剣な表情を浮かべている。
いぬねこは、足手まといにならないようにお手伝いさんの体にしっかりとしがみついた。
「イテテっ! いぬねこちゃん、爪が!」
「おっと、失礼したね。でも我慢しておくれ」
そうこう言っている間に、上空を旋回していたそれが一気に急降下を始める。
「先生伏せて!」
言われるまでもないように絶妙なタイミングで襲いかかってきたそれの体当たりを回避する。
そしてそれはあっという間にまた上空へ。
一瞬ではあったがその大きさゆえ、5メートルはあるであろう巨大な怪鳥だと判明できた。
空を飛び回っている間はこちらから攻撃なんて出来ない。
先程のように襲いかかってきたところを返り討ちにするか、それとも大人しく逃げるか。選択肢としてはこの二つに限られるだろう。
だが逃げるを選択した所で、大人しく逃がしてくれるかどうか。
「先生の武器はその槍だけですか?」
「そうだよー。山を登る時の杖として持ってきたんだけどね、こんな使い方をする時が来るなんて思わなかったよー」
「その使い方が正解ですからね⁈」
魔物に襲われているというのに、何とも暢気な会話を繰り広げている二人。
そしてもう一度、猛スピードで体当たりをしてきた。今度の狙いはお手伝いさんだ。
「おわっ⁈」
ギリギリで回避する事は出来たが、通り過ぎる際の突風がとんでもなかった。
「お手伝い君のはその腰についてるやつだけ?」
「そうです。組み立て式の小剣銃が二丁」
腰についたホルスターには、6発装填のリボルバーが二丁に、銃のグリップ部分に組み合わせる専用のナイフが二本収まっている。
「ではそれで撃ち落とせばいいんじゃないのかい?」
変わらずしっかりとしがみついているいぬねこが言う。
「それはそうですけど、あの高度にあのスピードですからね。大きいとはいえ当てるのは至難の業ってやつですよ」
お手伝いさんは、武器に銃を選択しているとはいえ、その腕に自信はなかった。むしろ装着したナイフで接近戦闘を行い、銃はあくまで敵を牽制するための戦法として使っていた。
「前回お師匠さんの所に行った時は、飛び回ってるだけで襲ってこなかったのにねー。お腹でも空いてるのかなー?」
言いつつも錬金術士は危なげなく怪鳥の体当たりを回避している。真剣な表情をしているわりにはセリフから緊張感があまり感じられない。
「それだ!」
突然お手伝いさんが叫んだ。錬金術士のセリフから、あの怪鳥を撃退する方法を思い付いたようだ。
「先生! まだあのカゴ残ってますよね⁈」
「あのカゴ? ああうん、あるよー。食べるのー?」
「僕は食べませんよ! 食べるのはあの怪鳥です!」
お手伝いさんを昏倒させたおにぎりの他にもう一つ、錬金術士は食べ物を作ってきていた事を思い出したのだ。
「なるほどそういう事か。上手くいけば確実に撃退出来るだろう」
いぬねこはお手伝いさんの作戦を察したようだ。
「先生ちょっと失礼しますね!」
錬金術士が背負っているリュックから慌てて残ったカゴを引っ張り出す。おにぎりと同様に危なっかしい靄を発しているが、怪鳥なら気にしないだろう、きっと。
「行きます!」
怪鳥と真っ向勝負をする覚悟を決めたお手伝いさんは、素っ頓狂な声を上げながらあっけなく怪鳥に攫われていった。
「分かってるよ」
お手伝いさんは目で、錬金術士は耳で、その異常に気づいた。
山の入り口も目前というところで、お手伝いさんは山の大きさゆえに空を見上げた。するとそこに小さな黒い影が見えたのだ。距離はかなり遠いはずなのに見えるという事は、かなり大きいのかも知れない。
錬金術士は、いつものようにのほほんと歩いていたが、よく聞こえるらしい耳で風の吹き抜けるような音ではなく、切る音を捉えていた。
今までに見た事もない、真剣な表情を浮かべている。
いぬねこは、足手まといにならないようにお手伝いさんの体にしっかりとしがみついた。
「イテテっ! いぬねこちゃん、爪が!」
「おっと、失礼したね。でも我慢しておくれ」
そうこう言っている間に、上空を旋回していたそれが一気に急降下を始める。
「先生伏せて!」
言われるまでもないように絶妙なタイミングで襲いかかってきたそれの体当たりを回避する。
そしてそれはあっという間にまた上空へ。
一瞬ではあったがその大きさゆえ、5メートルはあるであろう巨大な怪鳥だと判明できた。
空を飛び回っている間はこちらから攻撃なんて出来ない。
先程のように襲いかかってきたところを返り討ちにするか、それとも大人しく逃げるか。選択肢としてはこの二つに限られるだろう。
だが逃げるを選択した所で、大人しく逃がしてくれるかどうか。
「先生の武器はその槍だけですか?」
「そうだよー。山を登る時の杖として持ってきたんだけどね、こんな使い方をする時が来るなんて思わなかったよー」
「その使い方が正解ですからね⁈」
魔物に襲われているというのに、何とも暢気な会話を繰り広げている二人。
そしてもう一度、猛スピードで体当たりをしてきた。今度の狙いはお手伝いさんだ。
「おわっ⁈」
ギリギリで回避する事は出来たが、通り過ぎる際の突風がとんでもなかった。
「お手伝い君のはその腰についてるやつだけ?」
「そうです。組み立て式の小剣銃が二丁」
腰についたホルスターには、6発装填のリボルバーが二丁に、銃のグリップ部分に組み合わせる専用のナイフが二本収まっている。
「ではそれで撃ち落とせばいいんじゃないのかい?」
変わらずしっかりとしがみついているいぬねこが言う。
「それはそうですけど、あの高度にあのスピードですからね。大きいとはいえ当てるのは至難の業ってやつですよ」
お手伝いさんは、武器に銃を選択しているとはいえ、その腕に自信はなかった。むしろ装着したナイフで接近戦闘を行い、銃はあくまで敵を牽制するための戦法として使っていた。
「前回お師匠さんの所に行った時は、飛び回ってるだけで襲ってこなかったのにねー。お腹でも空いてるのかなー?」
言いつつも錬金術士は危なげなく怪鳥の体当たりを回避している。真剣な表情をしているわりにはセリフから緊張感があまり感じられない。
「それだ!」
突然お手伝いさんが叫んだ。錬金術士のセリフから、あの怪鳥を撃退する方法を思い付いたようだ。
「先生! まだあのカゴ残ってますよね⁈」
「あのカゴ? ああうん、あるよー。食べるのー?」
「僕は食べませんよ! 食べるのはあの怪鳥です!」
お手伝いさんを昏倒させたおにぎりの他にもう一つ、錬金術士は食べ物を作ってきていた事を思い出したのだ。
「なるほどそういう事か。上手くいけば確実に撃退出来るだろう」
いぬねこはお手伝いさんの作戦を察したようだ。
「先生ちょっと失礼しますね!」
錬金術士が背負っているリュックから慌てて残ったカゴを引っ張り出す。おにぎりと同様に危なっかしい靄を発しているが、怪鳥なら気にしないだろう、きっと。
「行きます!」
怪鳥と真っ向勝負をする覚悟を決めたお手伝いさんは、素っ頓狂な声を上げながらあっけなく怪鳥に攫われていった。
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