不老少女とふわふわたあめ
特別編2 「あけましておめでとうございます」
カチッ、カチッ、と時計の秒針が一定のリズムを静かに刻む。ちょうどてっぺんに来て、ただいまの時刻は23時57分となる。
「お待たせしました先生。年越しそばです」
「まってましたー! いい香り♪」
テーブルに置かれたそばには汁と麺だけのシンプルなそばが、出汁のこうばしい香りを周囲に撒き散らしている。
鼻をヒクつかせたいぬねこが、小生の分は無いのかい、と言いたげな瞳でお手伝いさんを見つめる。
「いぬねこちゃんはそば食べ辛いでしょう。だから代わりにそれっぽいものを用意してみました」
「ほう、それっぽいものとは一体何かな?」
期待するような声音を上げるいぬねこの前に、専用のお皿に盛られて出てきたのはいつも食べているペット用のフードだった。
「君……小生を馬鹿にしているとしか思えないのだが?」
「見た目はいつも通りですけど、味が違うんですよ! 今回は練習も兼ねて僕が錬金してみました。そば風味になってます」
なるほど確かに、言われてみればそばの香りがしなくもない。すでに錬金術士の前に出されたそばの香りがあるので紛らわしいが、いぬねこの鼻は飾りではない。
準備に少々手間取ってしまって時間ギリギリとなってしまったが、何とか間に合わせる事ができた。
お手伝いさんの分も自分でよそって準備完了。
「年越しそばは細く長いことから縁起が良いとされているのだよ。これを食べて、来年も細々とやっていこうではないか」
いぬねこがいつもの豆知識を披露するが、後半は若干言葉を間違えているような気がする。
いぬねこのフードをそばに分類してもいいのであれば、細く長くの要素は微塵もなく、細切れの人生となるのだろうか。
密かにそう思ったお手伝いさんだったが、空気を読んで黙っておいた。
「細々とって……まぁ元々そんな感じでやってきてますけど、どうせならどかーんと大きく出たいものです」
「そお? 私は今のままがいいかなー。忙しいの好きくないしー」
唇を尖らせるように言う錬金術士。そばを目の前にしてお預けを喰らっているので若干ご機嫌斜めになってきている様子。
そんな彼女の気持ちを汲み取って、お手伝いさんはそそくさと席に着き、
「それじゃあみんなで頂きましょう! ……せーのっ」
「「「いただきます」」」
手を合わせて年越しそばを啜り始める。
美味しそうに食べて顔を綻ばせる錬金術士。
「あっ! お手伝い君、もう年が変わるよ!」
「えぇ⁈ うわ、本当だ!」
慌てて錬金術士とお手伝いさんは席を立った。
急にどうしたのかと訝しむいぬねこだったが、あまり気にせずに自分の分を食べ続ける。本当にそばの味がするのでお手伝いさんの錬金は見事成功を収めていた。
「3、2、1、」
お手伝いさんが秒針を見てカウントし、ゼロになった瞬間、
「ジャーンプッ!」
錬金術士の合図とともに揃って床を蹴り上げて全力で跳躍した。
事前に、年を越す瞬間はジャンプしようと約束していたのだ。幼い頃よくやったのを思い出して、子供っぽいところがある錬金術士らしいと思ったお手伝いさんは快く承諾していた。
「あけましておめでとー! 今年もよろしくねー、お手伝い君!」
綺麗な花が咲いたような満面の笑みを浮かべる錬金術士。
「はい、今年もよろしくお願いします先生!」
眩しいくらいの可愛い笑顔を新年と同時に見られるなんて、今年は良い年になりそうだと思ったお手伝いさんだった。
「お待たせしました先生。年越しそばです」
「まってましたー! いい香り♪」
テーブルに置かれたそばには汁と麺だけのシンプルなそばが、出汁のこうばしい香りを周囲に撒き散らしている。
鼻をヒクつかせたいぬねこが、小生の分は無いのかい、と言いたげな瞳でお手伝いさんを見つめる。
「いぬねこちゃんはそば食べ辛いでしょう。だから代わりにそれっぽいものを用意してみました」
「ほう、それっぽいものとは一体何かな?」
期待するような声音を上げるいぬねこの前に、専用のお皿に盛られて出てきたのはいつも食べているペット用のフードだった。
「君……小生を馬鹿にしているとしか思えないのだが?」
「見た目はいつも通りですけど、味が違うんですよ! 今回は練習も兼ねて僕が錬金してみました。そば風味になってます」
なるほど確かに、言われてみればそばの香りがしなくもない。すでに錬金術士の前に出されたそばの香りがあるので紛らわしいが、いぬねこの鼻は飾りではない。
準備に少々手間取ってしまって時間ギリギリとなってしまったが、何とか間に合わせる事ができた。
お手伝いさんの分も自分でよそって準備完了。
「年越しそばは細く長いことから縁起が良いとされているのだよ。これを食べて、来年も細々とやっていこうではないか」
いぬねこがいつもの豆知識を披露するが、後半は若干言葉を間違えているような気がする。
いぬねこのフードをそばに分類してもいいのであれば、細く長くの要素は微塵もなく、細切れの人生となるのだろうか。
密かにそう思ったお手伝いさんだったが、空気を読んで黙っておいた。
「細々とって……まぁ元々そんな感じでやってきてますけど、どうせならどかーんと大きく出たいものです」
「そお? 私は今のままがいいかなー。忙しいの好きくないしー」
唇を尖らせるように言う錬金術士。そばを目の前にしてお預けを喰らっているので若干ご機嫌斜めになってきている様子。
そんな彼女の気持ちを汲み取って、お手伝いさんはそそくさと席に着き、
「それじゃあみんなで頂きましょう! ……せーのっ」
「「「いただきます」」」
手を合わせて年越しそばを啜り始める。
美味しそうに食べて顔を綻ばせる錬金術士。
「あっ! お手伝い君、もう年が変わるよ!」
「えぇ⁈ うわ、本当だ!」
慌てて錬金術士とお手伝いさんは席を立った。
急にどうしたのかと訝しむいぬねこだったが、あまり気にせずに自分の分を食べ続ける。本当にそばの味がするのでお手伝いさんの錬金は見事成功を収めていた。
「3、2、1、」
お手伝いさんが秒針を見てカウントし、ゼロになった瞬間、
「ジャーンプッ!」
錬金術士の合図とともに揃って床を蹴り上げて全力で跳躍した。
事前に、年を越す瞬間はジャンプしようと約束していたのだ。幼い頃よくやったのを思い出して、子供っぽいところがある錬金術士らしいと思ったお手伝いさんは快く承諾していた。
「あけましておめでとー! 今年もよろしくねー、お手伝い君!」
綺麗な花が咲いたような満面の笑みを浮かべる錬金術士。
「はい、今年もよろしくお願いします先生!」
眩しいくらいの可愛い笑顔を新年と同時に見られるなんて、今年は良い年になりそうだと思ったお手伝いさんだった。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
1
-
-
4
-
-
4112
-
-
310
-
-
37
-
-
439
-
-
49989
-
-
127
-
-
107
コメント