不老少女とふわふわたあめ

鶴亀七八

042 「作戦会議・2」

「いぬねこちゃんが『ここを通してくれ』と説得するのはどうですか?」
「小生の意思疎通はお互いにその気がないと出来ないのだよ。人間だってお互いに分かり合おうとする気持ちが無ければ、話にすらならないだろう? さっきから試しているのだが、全く取り付く島も無い。完全に警戒されていると思っていい」
「そうですか……」

 お手伝いさん的にはいきなり会心の提案が出たと思っていたのだが、やはり世の中そんなに上手くはいかないものだった。

「小生からもいくつか提案してもいいだろうか?」
「いいですけど念のため手短にお願いします」

 いぬねこはいちいち言い回しが回りくどい時がある。ただでさえ、こうやって蛇の前でのうのうと作戦会議が出来る事自体不思議でしょうがないのに、時間を掛けていてはどうなるか分からない。

「見た所、巨体の割に目が小さすぎるので奴は視覚が退化しているんだと思う。そこを上手く利用するのはどうだろうか」
「目が悪いから、音を立てないように移動すればいい……って事ですね?」

 さすがはいぬねこと言ったところか。なんだかんだ言ってその知識があれば作戦なんて大それたもの考えなくても何とかなってしまうのではないだろうか。
 目が退化しているとか、そんなこと考えもしなかったお手伝いさんは、いぬねこの着目点の違いに驚かされた。

「物は試しと言うし……ここは一つ、やってみてはどうだろうか」
「え……いきなり試すんですか? 他にも色々考えてみて、一番適切そうなものを試す方がいいんじゃ……」
「おや、さっきの勢いはどうしたんだい。あの子を迎えに行くのだろう? こんな所で尻込みをしている場合ではないはずだが」

 いぬねこの言っている事はごもっともである。が、錬金術士の事は心配でたまらないにしても、もしここで焦って蛇に丸呑みでもされたら、それこそ本末転倒である。慎重に行動するべきタイミングは分かっているつもりだ。
 だがやはり、ここはなるべく急ぎたい。

「……わかりましたよ」

 無駄だとは思うが念のため(いまだにいぬねこを抱えているため)片手で銃とナイフを合体させて構える。
 蛇は広い空間のど真ん中を陣取っているので、そーっと足を動かして、壁伝いに蛇を迂回する。


 …………………………………………………ザ…………………。


 その一歩目で、蛇はピクリと反応した。
 可能な限り足音を立てないように、極限なまでのゆっくりさで動いたつもりだったのに。
 今一度、今度こそはほとんど無音の状態で二歩目を目指す。


 …………………………………………………………………………………z……………………。


 よし。これならほぼ無音。耳が良いらしい錬金術士もさすがにこの音を拾う事なんて出来ないはず。それならこの蛇だってきっと……!
 ピクリ。
 しかし蛇は反応していた。

「ふむ……考えてみれば目が退化した分、聴覚が進化するのは当たり前の事かも知れないね」
「デスヨネー……」

 肝心な事を見逃していた二人だった。
 この作戦の成果。横に二歩。

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