不老少女とふわふわたあめ
046 「休憩」
手頃な岩に座っていた錬金術士はひとしきり泣くと、段々と落ち着きを取り戻していった。泣き終えるまで黙って待っていたお手伝いさんは手を差し出す。
「さぁ、そろそろ行きましょう?」
「……うん」
さっきまでオオカミに襲われていたし、きっと怖い思いをしていたのだろう。まだ声が少し震えているが、いつまでもここに居る訳にはいかない。
もしかしたら追い払ったオオカミが戻ってくるかもしれないし、他の何かがやって来るかもしれない。
とにかく、動けるようになったのなら移動した方がいいだろう。
「歩けそうですか?」
「たぶん……」
足を庇いながらゆっくりと立ち上がる錬金術士。
「イタッ……!」
しかしすぐに座り込んでしまった。やはりまだ痛むらしい。
「無理しないでください。もう少しだけ休みましょうか」
本当はすぐにでも移動を開始して錬金術士の師匠の家へと向かう方が利口なのだろうが、当の錬金術士がこの調子ではそうも言っていられない。
それにお手伝いさんだって大蛇から命からがら逃げてきたのだ。休憩する時間くらいはやはり欲しかった。
「君……そろそろ肉球がカチカチになってきたのだが、あの肩掛けの予備は無いのかい?」
いぬねこが聞いてきた。
「そんなものありませんよ」
「燃料の予備はあるのに肩掛けの予備は無いと言うのかい⁈」
「ええそうです! コンパクトに纏まるタイプのが一つしか無かったんですよ! 意外にレアなアイテムだったんですよ! 高かったんですよ! それをしょうがなかったとは言えダメにしたんですよ……!」
言っていて悲しくなってきた。あれがなかったら大蛇から逃げることは出来なかっただろう。尊い犠牲だ。
今度街に出掛けに行った時に買おう。
心の中で密かにそう決めつつ、錬金術士を見るといまだに小さく震えていた。
「これでも羽織っていてください」
お手伝いさんは上着を脱ぐと錬金術士にかけてあげた。最初は怖い思いをしたから震えていたと思っていたのだが、少し考えてみればそれだけではないことはすぐに分かった。
長い間洞窟にいたから忘れていたが、ここは山なのだ。それもいつの間にか結構な高度まで登っていたし、当然気温も大変なことになってる。
ここまで来たらむしろ洞窟の中の方が暖かいくらいだ。
「お手伝い君は寒くないのー……?」
「さっき走ったりとかして体は温まってるので大丈夫ですよ!」
なんて強がりを言ってみる。
嘘は言っていない。全力疾走だった。
「ありがとう。あったかい……」
錬金術士はお手伝いさんの上着の襟に顔をうずめてホッとしたような表情を浮かべていた。
「さぁ、そろそろ行きましょう?」
「……うん」
さっきまでオオカミに襲われていたし、きっと怖い思いをしていたのだろう。まだ声が少し震えているが、いつまでもここに居る訳にはいかない。
もしかしたら追い払ったオオカミが戻ってくるかもしれないし、他の何かがやって来るかもしれない。
とにかく、動けるようになったのなら移動した方がいいだろう。
「歩けそうですか?」
「たぶん……」
足を庇いながらゆっくりと立ち上がる錬金術士。
「イタッ……!」
しかしすぐに座り込んでしまった。やはりまだ痛むらしい。
「無理しないでください。もう少しだけ休みましょうか」
本当はすぐにでも移動を開始して錬金術士の師匠の家へと向かう方が利口なのだろうが、当の錬金術士がこの調子ではそうも言っていられない。
それにお手伝いさんだって大蛇から命からがら逃げてきたのだ。休憩する時間くらいはやはり欲しかった。
「君……そろそろ肉球がカチカチになってきたのだが、あの肩掛けの予備は無いのかい?」
いぬねこが聞いてきた。
「そんなものありませんよ」
「燃料の予備はあるのに肩掛けの予備は無いと言うのかい⁈」
「ええそうです! コンパクトに纏まるタイプのが一つしか無かったんですよ! 意外にレアなアイテムだったんですよ! 高かったんですよ! それをしょうがなかったとは言えダメにしたんですよ……!」
言っていて悲しくなってきた。あれがなかったら大蛇から逃げることは出来なかっただろう。尊い犠牲だ。
今度街に出掛けに行った時に買おう。
心の中で密かにそう決めつつ、錬金術士を見るといまだに小さく震えていた。
「これでも羽織っていてください」
お手伝いさんは上着を脱ぐと錬金術士にかけてあげた。最初は怖い思いをしたから震えていたと思っていたのだが、少し考えてみればそれだけではないことはすぐに分かった。
長い間洞窟にいたから忘れていたが、ここは山なのだ。それもいつの間にか結構な高度まで登っていたし、当然気温も大変なことになってる。
ここまで来たらむしろ洞窟の中の方が暖かいくらいだ。
「お手伝い君は寒くないのー……?」
「さっき走ったりとかして体は温まってるので大丈夫ですよ!」
なんて強がりを言ってみる。
嘘は言っていない。全力疾走だった。
「ありがとう。あったかい……」
錬金術士はお手伝いさんの上着の襟に顔をうずめてホッとしたような表情を浮かべていた。
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