不老少女とふわふわたあめ
049 「師匠登場」
「おや? ……やれやれ」
錬金術士もお手伝いさんも眠りに落ちてしまったようだ。
一人体力に余裕のあったいぬねこは、二人の上にかけてやれそうな物は無いか周囲を見回してみる。
しかし逆に物がありすぎてどこに何があるのか分からない。
こういう時は家主に直接尋ねるのが一番な訳だが、肝心の家主である師匠が見当たらない。今は別の部屋にいて来客に気付いていないだけなのか。
「ガサツで大雑把で適当な性格は寸分違わず変わっていないようだな……」
以前に訪れた時はもう少しマシな部屋だったような気がするのだが、おまけに頑張って掃除をした記憶もあるのにどうして悪化しているのだろう。
「ほほぅ……アタシは『ガサツで大雑把で適当』という評価だったんだな、クソダヌキめが」
背後から、声が。
「ったく、来るなら来るって連絡しとけってんだよ。そしたら前みたいに軽ーく掃除くらいはしといたのによ」
振り返るとそこにはこの家の主であり、錬金術士の師匠である偉大なお方が立っていた。背後からきた=玄関から入ってきたと言う事になるので、どこかに出掛けていて今帰ってきたところらしい。
「あの惨状でも掃除していたというのか……」
「ァアン?」
「いや、何でも無い」
それにしてもこの女は今も昔も変わらないままだ。いい意味でも悪い意味でも。
「んで? 何の用だよ。見ねー顔が一人いるみてーだけど?」
床に座り込んで先程眠ってしまったお手伝いさんを指差している。
「まさかアタシの弟子が男を連れ込むとは、どーゆー風の吹き回しなんだか」
「ああ、彼についてはあとで紹介しよう。その前に毛布とかは無いのかい? 二人にかけてやりたいのだが」
「毛布? 毛布ならこの辺に……」
そう言うと師匠は床に積み重なった本を蹴り倒し、蹴り倒し、蹴り倒し、そして何かを拾い上げた。
その何かは一瞬分からなかったがよく見てみればご所望の毛布だった。端っこに乗っかっていたのか、拾い上げる時にさらに積まれた本が崩れていった。
「ホーラあった。ちゃんとよく探せば見つかんだよ」
「その前に掃除をやっておけば探す手間すらいらなんだけれども」
「なんか言ったかクソダヌキ?」
「いいや何も」
都合が悪くなるとすぐに凄むのも相変わらずだ。しかし本気で怖いので余計な事は言わないでおく。
師匠は拾った毛布の埃を雑に叩いて払うと、投げ捨てるようにソファーで寝ている錬金術士に放った。そんなやり方では全身に毛布をかける事なんか出来ないのは当たり前で、顔にかかって足は飛び出したまま。
いぬねこは毛布を咥えて器用に正してやった。
お手伝いさんの分は……残念ながら無さそうだ。お手伝いさんには悪いが新たに毛布が見つかるか目が覚めるまではそのままでいてもらうしか無さそうである。
 それでも冷たい風が凌げるだけで助かるし、暖炉に火も点っているので、凍えてしまう心配はない。
「それはそうと、どこかに出掛けていたようだが、どこに行っていたんだい?」
「妙な地響きがあったから外の様子を見に行ってたんだよ。何もなかったがな。とんだ無駄骨だったよ全く……」
「そうだったのか、それは何よりだね」
その地響きの原因は洞窟での爆発だろうと分かっていたが、いぬねこは黙っておくことにした。正直に話したところで、この人は何をしでかすか分かったものじゃない。
「もし誰かの所為だったら錬金の材料にしてやる」
何をしでかすか分からないが、今回だけは生き地獄に決定のようだった。
(彼にも言わないように釘を刺しておかないと大変な事になりそうだ……)
お手伝いさんが目覚めたら、何よりも先にまずは爆発の事は黙っておくように言ってやろうと決意したいぬねこでした。
錬金術士もお手伝いさんも眠りに落ちてしまったようだ。
一人体力に余裕のあったいぬねこは、二人の上にかけてやれそうな物は無いか周囲を見回してみる。
しかし逆に物がありすぎてどこに何があるのか分からない。
こういう時は家主に直接尋ねるのが一番な訳だが、肝心の家主である師匠が見当たらない。今は別の部屋にいて来客に気付いていないだけなのか。
「ガサツで大雑把で適当な性格は寸分違わず変わっていないようだな……」
以前に訪れた時はもう少しマシな部屋だったような気がするのだが、おまけに頑張って掃除をした記憶もあるのにどうして悪化しているのだろう。
「ほほぅ……アタシは『ガサツで大雑把で適当』という評価だったんだな、クソダヌキめが」
背後から、声が。
「ったく、来るなら来るって連絡しとけってんだよ。そしたら前みたいに軽ーく掃除くらいはしといたのによ」
振り返るとそこにはこの家の主であり、錬金術士の師匠である偉大なお方が立っていた。背後からきた=玄関から入ってきたと言う事になるので、どこかに出掛けていて今帰ってきたところらしい。
「あの惨状でも掃除していたというのか……」
「ァアン?」
「いや、何でも無い」
それにしてもこの女は今も昔も変わらないままだ。いい意味でも悪い意味でも。
「んで? 何の用だよ。見ねー顔が一人いるみてーだけど?」
床に座り込んで先程眠ってしまったお手伝いさんを指差している。
「まさかアタシの弟子が男を連れ込むとは、どーゆー風の吹き回しなんだか」
「ああ、彼についてはあとで紹介しよう。その前に毛布とかは無いのかい? 二人にかけてやりたいのだが」
「毛布? 毛布ならこの辺に……」
そう言うと師匠は床に積み重なった本を蹴り倒し、蹴り倒し、蹴り倒し、そして何かを拾い上げた。
その何かは一瞬分からなかったがよく見てみればご所望の毛布だった。端っこに乗っかっていたのか、拾い上げる時にさらに積まれた本が崩れていった。
「ホーラあった。ちゃんとよく探せば見つかんだよ」
「その前に掃除をやっておけば探す手間すらいらなんだけれども」
「なんか言ったかクソダヌキ?」
「いいや何も」
都合が悪くなるとすぐに凄むのも相変わらずだ。しかし本気で怖いので余計な事は言わないでおく。
師匠は拾った毛布の埃を雑に叩いて払うと、投げ捨てるようにソファーで寝ている錬金術士に放った。そんなやり方では全身に毛布をかける事なんか出来ないのは当たり前で、顔にかかって足は飛び出したまま。
いぬねこは毛布を咥えて器用に正してやった。
お手伝いさんの分は……残念ながら無さそうだ。お手伝いさんには悪いが新たに毛布が見つかるか目が覚めるまではそのままでいてもらうしか無さそうである。
 それでも冷たい風が凌げるだけで助かるし、暖炉に火も点っているので、凍えてしまう心配はない。
「それはそうと、どこかに出掛けていたようだが、どこに行っていたんだい?」
「妙な地響きがあったから外の様子を見に行ってたんだよ。何もなかったがな。とんだ無駄骨だったよ全く……」
「そうだったのか、それは何よりだね」
その地響きの原因は洞窟での爆発だろうと分かっていたが、いぬねこは黙っておくことにした。正直に話したところで、この人は何をしでかすか分かったものじゃない。
「もし誰かの所為だったら錬金の材料にしてやる」
何をしでかすか分からないが、今回だけは生き地獄に決定のようだった。
(彼にも言わないように釘を刺しておかないと大変な事になりそうだ……)
お手伝いさんが目覚めたら、何よりも先にまずは爆発の事は黙っておくように言ってやろうと決意したいぬねこでした。
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