不老少女とふわふわたあめ

鶴亀七八

053 「気になる写真」

 部屋に戻って掃除を再開していたお手伝いさんだったが、

「予想以上に重労働だぞこれ……」

 なぜだろう、ゴミを取っても取っても無くならない。こう言っては何だが、ゴミ屋敷を軽く通り超している。次から次へとゴミが生成されているんじゃないかと錯覚するほど。
 いや、ここは錬金術士の師匠の家、もしかしたら生成じゃなく錬成されているのかも。
 だからといって手を休めるわけにもいかない。キレイにしておかないと師匠に許してもらえないかも知れない。

(ん? 何を許してもらうんだ?)

 失礼な事を言ってしまった事に対して許してもらおうとしているんだ。
 師匠の裸を見てしまった事を何故か忘れているお手伝いさんはそう考えた。
 取っても取っても、掃いても掃いても無くならないゴミ達と格闘しつつ、お手伝いさんは別室にいる錬金術士達の事も気になっていた。

 今何をしているのだろう、と。

 武器の作り方を教えてもらうと言っていたが、あのガサツそうな師匠が真面目に教えてくれているとはどうも思えない。適当に教えている姿なら容易に想像出来るが。

 いけない、こんなだから失礼な奴と言われてしまうんだ。

「写真か、これ」

 掃除のし辛い隙間と格闘していたら一枚の古びた写真が滑り出てきた。師匠の事だし、取るのも面倒くさいとか言って放置していたものだろう。

 そこに写っていたのは、師匠と小さな女の子。
 師匠は今と全く同じ格好をしていてちっとも変わってない。だが、隣にいる小さな女の子は、よくよく見てみれば錬金術士のような。ふわふわした髪の毛も、ふわふわした笑顔も、ふわふわした雰囲気も、紛れもなく錬金術士だ。

「待てよ、この女の子が先生だとしたら、撮影した日から少なくとも数年……いや十年とかは経過してるはず。なのに師匠はちっとも変わってないぞ……」

 世の中にはそういう人もいると聞いた事はあるが、実際に目の当たりにしたのは初めてだ。凄い人なら月日が経つにつれて逆に奇麗になる人だっているらしいが、師匠はその類の人間なのか。

「うーん……そういうのとはなんか違うんだよな。師匠だけ時間が止まっていると言うか、老化が止まっているというのか……」

 年を経っても若く見えたり、逆に奇麗になったりする人間にもそれなりの変化が見られるはず。でも師匠にはそれが一切見られない。
 魔女か。やはり魔女なのか。

(いやいや、魔女だから年を経らないとか聞いた事ないし)

 師匠はきっとあれだ、普通に年を経っても若く見える類いの人間なんだ。
 そうだ、そうに決まってる。また失礼な奴とか思われたくないし、そう思う事にする。

「そうと決まれば掃除再開! 頑張れ僕!」

 写真をポケットに仕舞い、気合いを入れ直して箒を操り続けるお手伝いさん。
 果たして、この部屋の掃除はいつ終わる事やら。

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