不老少女とふわふわたあめ
特別編8 「キスの日」
ふわふわな白衣にふわふわな髪飾りをつけた錬金術士は、自らが錬金したとあるアイテムを前に腕を組んで、ふわふわと妄想していた。
テーブルに置かれたのは、丈夫なガラス板。そして紙よりも薄くペラペラした何か。
どちらも正方形で、無色透明なところが共通点だが……錬金術士は何を考えているのだろう。
犬にも猫にも見える助手、いぬねこは屋根の上で昼寝中。行き倒れているところを助けたお手伝いさんは買出しを頼んで不在。
今だけは、完全に一人。
だが、いつも通りであればもうそろそろ一人ではなくなるはず。
「むふふ……」
脳内の妄想が、表情と声に乗ってあふれてきたようだ。とてもお手伝いさんといぬねこには見せられない。
コンコン。とノックの音が響く。
『ゆうびんでーす!』
「キター!」
外からの声に一気にテンションが上がる錬金術士。ウキウキな様子で玄関を開けて、その姿を出迎える。
大きなうさ耳が可愛らしい、小さな少女だ。彼女は郵便配達を生業としているチナという。
錬金術士は、『ふわふわ』と『かわいい』が大大大大好きなので、ここまで興奮しているのだ。
「はいどーぞっ! お届けものですっ!」
「いつもご苦労様ですー。今日もかわいーねー!」
ハキハキと明るい笑顔で元気良く喋る郵便ちゃんに、どっかのチンピラのような口説き文句を放り込みつつ錬金術士は小さな手からお届けものを受け取り、続ける。
「郵便ちゃん、いま少し時間あるー?」
「今ですか? 少しならだいじょぶですっ!」
まだ配達の仕事が残っているので長居はできないが、郵便ちゃんの俊足ぶりは他に類を見ないほど。多少の遅れは簡単に取り戻せる。
「じゃあ上がってー! ちょっと手伝ってほしいのー!」
「はぁ。……わかりましたっ!」
よくわからないままに、とりあえず了承した郵便ちゃん。お得意様なので邪険にもできなかったのだろうが、これが大きな間違いだった。
純朴な笑顔を招き入れると、カチャン……とちゃっかり鍵を閉める錬金術士。
「それで、お手伝いってなにすればいいですっ?」
「どっちかを選んでほしいのー」
錬金術士が指差す先には、先ほどの透明なアイテム。
片方は窓にも使われているガラス板なので見覚えはあったが、もう片方。
「これはなんですか?」
「とりあえずで〝ラップ〟と名付けてみましたー。すごいでしょ?」
「たしかにすごいかもですけど……これどう使うんですか?」
まじまじと薄っぺらくて透明なラップとやらを眺めながら聞く。
その質問を待ってましたとばかりに、錬金術士はラップを持って郵便ちゃんに詰め寄った。
「気になる? 気になるー?」
「え、えぇまぁ……」
これはもしかして、大変なことになるんじゃないかとようやく気付いて冷や汗を浮かべる郵便ちゃん。
「いぬねこちゃんの話によれば、今日は〝キスの日〟なんだってー」
「きす……?」
唇と唇を合わせる、アレのことだ。
「このラップがあれば、ノーカンでキスができると思わないー? 言い方を変えればキスなんて唾液の交換だから、それができなければキスに含まれない」
「かなり暴論だとおもわれますが……?」
「だからこそ、試させて欲しいんだよー郵便ちゃん?」
ニヤニヤと笑みを浮かべながらにじり寄ってくる錬金術士から同じように距離を取る郵便ちゃん。あわよくばそのまま玄関から脱出と行きたかったが、郵便ちゃんは気付いていない。
鍵がかかっていることに。
「お覚悟ー!」
「ギャーッ⁈」
そして割と本気の悲鳴をあげた郵便ちゃんだった。
テーブルに置かれたのは、丈夫なガラス板。そして紙よりも薄くペラペラした何か。
どちらも正方形で、無色透明なところが共通点だが……錬金術士は何を考えているのだろう。
犬にも猫にも見える助手、いぬねこは屋根の上で昼寝中。行き倒れているところを助けたお手伝いさんは買出しを頼んで不在。
今だけは、完全に一人。
だが、いつも通りであればもうそろそろ一人ではなくなるはず。
「むふふ……」
脳内の妄想が、表情と声に乗ってあふれてきたようだ。とてもお手伝いさんといぬねこには見せられない。
コンコン。とノックの音が響く。
『ゆうびんでーす!』
「キター!」
外からの声に一気にテンションが上がる錬金術士。ウキウキな様子で玄関を開けて、その姿を出迎える。
大きなうさ耳が可愛らしい、小さな少女だ。彼女は郵便配達を生業としているチナという。
錬金術士は、『ふわふわ』と『かわいい』が大大大大好きなので、ここまで興奮しているのだ。
「はいどーぞっ! お届けものですっ!」
「いつもご苦労様ですー。今日もかわいーねー!」
ハキハキと明るい笑顔で元気良く喋る郵便ちゃんに、どっかのチンピラのような口説き文句を放り込みつつ錬金術士は小さな手からお届けものを受け取り、続ける。
「郵便ちゃん、いま少し時間あるー?」
「今ですか? 少しならだいじょぶですっ!」
まだ配達の仕事が残っているので長居はできないが、郵便ちゃんの俊足ぶりは他に類を見ないほど。多少の遅れは簡単に取り戻せる。
「じゃあ上がってー! ちょっと手伝ってほしいのー!」
「はぁ。……わかりましたっ!」
よくわからないままに、とりあえず了承した郵便ちゃん。お得意様なので邪険にもできなかったのだろうが、これが大きな間違いだった。
純朴な笑顔を招き入れると、カチャン……とちゃっかり鍵を閉める錬金術士。
「それで、お手伝いってなにすればいいですっ?」
「どっちかを選んでほしいのー」
錬金術士が指差す先には、先ほどの透明なアイテム。
片方は窓にも使われているガラス板なので見覚えはあったが、もう片方。
「これはなんですか?」
「とりあえずで〝ラップ〟と名付けてみましたー。すごいでしょ?」
「たしかにすごいかもですけど……これどう使うんですか?」
まじまじと薄っぺらくて透明なラップとやらを眺めながら聞く。
その質問を待ってましたとばかりに、錬金術士はラップを持って郵便ちゃんに詰め寄った。
「気になる? 気になるー?」
「え、えぇまぁ……」
これはもしかして、大変なことになるんじゃないかとようやく気付いて冷や汗を浮かべる郵便ちゃん。
「いぬねこちゃんの話によれば、今日は〝キスの日〟なんだってー」
「きす……?」
唇と唇を合わせる、アレのことだ。
「このラップがあれば、ノーカンでキスができると思わないー? 言い方を変えればキスなんて唾液の交換だから、それができなければキスに含まれない」
「かなり暴論だとおもわれますが……?」
「だからこそ、試させて欲しいんだよー郵便ちゃん?」
ニヤニヤと笑みを浮かべながらにじり寄ってくる錬金術士から同じように距離を取る郵便ちゃん。あわよくばそのまま玄関から脱出と行きたかったが、郵便ちゃんは気付いていない。
鍵がかかっていることに。
「お覚悟ー!」
「ギャーッ⁈」
そして割と本気の悲鳴をあげた郵便ちゃんだった。
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