不老少女とふわふわたあめ
特別編9 「恋人の日」
ふわふわの髪にふさふさの髪飾りを付け、ほわほわの白衣を纏った錬金術士が机を叩いて立ち上がり、突然の宣言。
「恋人ゴッコをしたいと思います!」
いつものアトリエに響き渡る錬金術士のほんわかした叫び声に、お手伝いさんは「はい?」と聞き返す。
いきなり意味不明なことを言い出すのは通常運転の証だが、また一段と困ったことを言い出したなと思うお手伝いさん。
「ところで、恋人ってどんなことをするのカナー?」
「分からないで言ったんですか……」
そういう自分も恋人など作ったこともないので、どういうものなのかサッパリだが、何となくの想像くらいでいいのなら分からなくもない。
ようは一緒に過ごせればいいのだ。
買い物に行ったり、食事をしたり、他愛もない話題で盛り上がったり……。
(あれ? それって普段と変わらなくないか……?)
たまにではあるが一緒に買い物には行くし、お手伝いさんは食事当番だし、こうして話もしている。
ということは、錬金術士とお手伝いさんは〝恋人〟の条件を満たしていると言っていい。
「恋人ゴッコなどしなくても、君たちはそのままでも充分恋人のようなものだろう」
犬にも猫にも見える動物、いぬねこも同じ考えに行き着いたようで、面倒くさそうに言う。
「そうなのー?」
「さ、さぁ……?」
あまり自覚がないようで、お手伝いさんに聞いても微妙な反応ではぐらかすしかない。まさかここで「そうですね」なんて言って肯定したら、自意識過剰と思われてしまいそうで。
「じゃあいっか」
「いいんですか⁈」
「だってもう恋人みたいなもんなんでしょー? いぬねこちゃんが適当言うはずないし」
「もちろんさ。小生はい・つ・で・も・大真面目だよ」
ニヤニヤとした含み笑いのニュアンスを込めたセリフを、視線とともにお手伝いさんへ送っているいぬねこ。
何が言いたいんだこの動物は……!
「恋人らしいことをしたいと言うのであれば、お互いの写真を交換するというのはどうだい? 胸ポケットにお互いの写真を入れているとか、あるいはロケットに入れているとか、実にロマンチックで恋人らしいとは思わないかね? そういった風に、お互いの持ち物を共有することによって恋人は信頼関係を育むものなのだと、小生は思うよ」
「ナルホドー……」
「そこ納得しちゃうんですね先生……少しはいぬねこちゃんの言葉を疑うことも覚えたほうがいいですって」
とは言いつつ、お手伝いさんも心の中では一理あるなと納得していた。恋人はそんなことをしているのか、と。
幸いにもここはアトリエで、伝説の錬金術士が目の前にいる。
カメラとかフィルムとかロケットとか、そういったアイテムには事欠かない。
「じゃあそれしよう! 私お手伝いくんの写真撮るから、お手伝いくんは私の写真撮ってー!」
がさごそと白衣のポケットから取り出したのは即席で現像される高性能カメラ。
「なんか、やけに準備がいいですね……」
「そんなコトないよー? ささ、撮って撮って!」
「はいはい……」
さっきから微妙にカタコトになっている気がしないでもなかったが、言う通りにしておかないといつまでたっても錬金術士のわがままは終わらない。
お手伝いさんは言われるがままに錬金術士の写真を撮り、錬金術士もまたお手伝いさんの写真を撮った。
「……よし、これでお手伝いくんの写真ゲット……!」
「……? なにか言いました?」
「ううん、なんでもなーい!」
錬金術士は嬉しそうに、お手伝いさんの優しい笑みの一瞬が切り取られた写真を大切そうにポケットにしまい込んだのだった。
「恋人ゴッコをしたいと思います!」
いつものアトリエに響き渡る錬金術士のほんわかした叫び声に、お手伝いさんは「はい?」と聞き返す。
いきなり意味不明なことを言い出すのは通常運転の証だが、また一段と困ったことを言い出したなと思うお手伝いさん。
「ところで、恋人ってどんなことをするのカナー?」
「分からないで言ったんですか……」
そういう自分も恋人など作ったこともないので、どういうものなのかサッパリだが、何となくの想像くらいでいいのなら分からなくもない。
ようは一緒に過ごせればいいのだ。
買い物に行ったり、食事をしたり、他愛もない話題で盛り上がったり……。
(あれ? それって普段と変わらなくないか……?)
たまにではあるが一緒に買い物には行くし、お手伝いさんは食事当番だし、こうして話もしている。
ということは、錬金術士とお手伝いさんは〝恋人〟の条件を満たしていると言っていい。
「恋人ゴッコなどしなくても、君たちはそのままでも充分恋人のようなものだろう」
犬にも猫にも見える動物、いぬねこも同じ考えに行き着いたようで、面倒くさそうに言う。
「そうなのー?」
「さ、さぁ……?」
あまり自覚がないようで、お手伝いさんに聞いても微妙な反応ではぐらかすしかない。まさかここで「そうですね」なんて言って肯定したら、自意識過剰と思われてしまいそうで。
「じゃあいっか」
「いいんですか⁈」
「だってもう恋人みたいなもんなんでしょー? いぬねこちゃんが適当言うはずないし」
「もちろんさ。小生はい・つ・で・も・大真面目だよ」
ニヤニヤとした含み笑いのニュアンスを込めたセリフを、視線とともにお手伝いさんへ送っているいぬねこ。
何が言いたいんだこの動物は……!
「恋人らしいことをしたいと言うのであれば、お互いの写真を交換するというのはどうだい? 胸ポケットにお互いの写真を入れているとか、あるいはロケットに入れているとか、実にロマンチックで恋人らしいとは思わないかね? そういった風に、お互いの持ち物を共有することによって恋人は信頼関係を育むものなのだと、小生は思うよ」
「ナルホドー……」
「そこ納得しちゃうんですね先生……少しはいぬねこちゃんの言葉を疑うことも覚えたほうがいいですって」
とは言いつつ、お手伝いさんも心の中では一理あるなと納得していた。恋人はそんなことをしているのか、と。
幸いにもここはアトリエで、伝説の錬金術士が目の前にいる。
カメラとかフィルムとかロケットとか、そういったアイテムには事欠かない。
「じゃあそれしよう! 私お手伝いくんの写真撮るから、お手伝いくんは私の写真撮ってー!」
がさごそと白衣のポケットから取り出したのは即席で現像される高性能カメラ。
「なんか、やけに準備がいいですね……」
「そんなコトないよー? ささ、撮って撮って!」
「はいはい……」
さっきから微妙にカタコトになっている気がしないでもなかったが、言う通りにしておかないといつまでたっても錬金術士のわがままは終わらない。
お手伝いさんは言われるがままに錬金術士の写真を撮り、錬金術士もまたお手伝いさんの写真を撮った。
「……よし、これでお手伝いくんの写真ゲット……!」
「……? なにか言いました?」
「ううん、なんでもなーい!」
錬金術士は嬉しそうに、お手伝いさんの優しい笑みの一瞬が切り取られた写真を大切そうにポケットにしまい込んだのだった。
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