０６１　「こりゃ驚いた」

「なんだこれ⁉︎」

　突然バラバラになってしまったブロードソードを見てお手伝いさんは驚愕する。

　ただ単純に壊れてバラバラになった訳では無くて、一つ一つが柄から伸びる紐のような物で繋がれていたのだ。
　そのままムチのような軌道を通ってブロードソードの欠片が師匠に襲い掛かる。

　軽く驚いたような表情を浮かべた師匠だったが、ここに転がっているガラクタ達は全て彼女の手によって作られ破壊された物。
　まだ使えることに驚いたのか、お手伝いさんが使えたことに驚いたのかは分からないが、驚愕の表情はすぐに消え失せた。

「甘いね！」

　石を投げつけた時のように難なくスプーンで弾き返されてしまう。

「くっ……！」

　よく分からないまま勢いで攻撃したお手伝いさんだが、反撃が来る可能性を考えてすぐさま距離を取る。

　柄を握る力を緩めると、紐に繋がれたブロードソードの欠片達はガシャンガシャン、と音を立てながら、まるで磁石に吸い寄せられているかのように元の形へと戻っていく。

「なんだこの武器……」

　いきなり剣らしからぬ変形を見せたブロードソードに怪訝な視線を送る。

　今は奇麗に元通りになっていて、バラバラになった形跡は見当たらない。それでも確かにお手伝いさんは見た。バラバラになった欠片が紐のような物で繋がれているところを。

「そいつはアレだ。蛇腹剣とか鞭剣とか色々呼び方あっけど、個人的には連結刃ってのが気に入ってるね」
「れんけつじん……？」

　そう、まさにアレは連結。蛇腹剣も鞭剣も確かに的を射た名前だと思うが、連結刃の方がハマっている気がするし、しっくり来た。

「構造上耐久性が低くてね、実戦では使い物にならなかったガラクタだ」

　ついでに言えば使い勝手が良いように思えてかなり使い辛い、と師匠は付け加えた。

「そうかな……？」

　だがお手伝いさんの感想は違った。
　確かにいきなり変形して驚きはしたものの、これは使える、と。

　先ほどは闇雲に振るったが、手の感覚は残っている。恐らく握り方や力加減が変形のスイッチとなっているのだろうと推測して、もう一度。

　間合いの限界がどれほどのものかは実際に使ってみないことには分からないが、使いこなすことができれば、接近しなくてはいけないリスクを軽減できる。

「っだぁ！」

　柄を握る手に力を込め、その場で水平になぎ払うようにブロードソードを振ると、思った通りバラバラになり、紐で繋がれた欠片達が師匠に襲いかかる。

「こりゃ驚いた。ーーけど」

　かなりの大振りで、それもしなるような軌道なので見切るのは容易い。
　師匠はひょいとしゃがむだけで躱し、どころかスプーンを使って紐を絡め取って、そのまま一本釣りをするかのごとく思い切り引っ張ると、スポーンッ！　とお手伝いさんの手からブロードソードは攫われてしまった。

「なんてこった……！」
「握りが甘いんだよクズ。はい、仕切り直しな」

　せっかく得た使えそうな武器を速攻で没収されてしまったお手伝いさんだった。