不老少女とふわふわたあめ
084 「誰にそんなこと」
一通り師匠が胸の谷間から出したアイテムの山を漁り終え、お手伝いさんは頭を抱えていた。
(どうしよう……使えそうなアイテムが無い……)
崖からころげ落ち、わずかに飛び出した足場に助けられたものの身動きが取れなくなってから気付けば数時間。お手伝いさんばかりがあれこれ手がないか探し回っている中で、師匠は何かをやるわけでもなく堂々とのんびりしていた。
(この人は助かりたくないのかな……)
このままではどうしたって凍死するか餓死するかの未来が待っている。
そんな事にはなりたく彼は必死になって脱出する方法を考えているのに、何もしないなんて人としてどうかしているんじゃないか。
(いやいや、先生の先生なんだから……きっと何か考えているんだ)
あまり良くない方向へ物事を考えるのは好ましくない。常に最悪の状況を想定して行動した方がいいと教わってきたが、このままでは最悪を通り越したその先へ行ってしまいそうだ。
(待て……誰にそんなこと教わったんだ?)
あまりにも自然な思考だったため見逃すところだった。しかし教えられた覚えはないのに知識としてしっかり吸収されているということは、やはり誰かに教わった可能性が大きい。
(いってて……。今はそんなことを考えてる場合じゃない、か。きっといぬねこちゃんにでも教わったんだ)
洞窟の中で感じた頭痛と同じ痛みを感じたので、適当な理由を見つけて無理やり納得させ、思考を切り替えることに専念。
兎にも角にも、ここを離脱しなければお話にならない。
(役立ちそうなものはあの布だけかな……)
重苦しいため息が出そうになるのをグッと堪え、とにかく思考を回し続ける。
布を硬化させるために必要な電気だが、この問題はあっけなく解消された。師匠が持っているアイテムの中に大量の電気を帯びたオーブが含まれていたからだ。
師匠の家には電気は通っていないが、しっかりと灯りはあった。その明かりに必要な電力はこれで補っているのだとか。
「大先生、もういいですよ。だいたい探したので戻しちゃってください」
「あ〜」
「大先生? どうしたんですか?」
狭い足場に大量のアイテムがあっても邪魔なだけなので片付けて欲しかったのだが、声をかけても生返事。顎に手を当て、目を瞑っては空を見上げて何かを考えている。
というよりは、何かを思い出そうとしているそぶりに見える。
お手伝いさんが眉根をひそめて首をかしげる。
その瞬間——、
「思い出した!」
「うわぁ!?」
——よく通る声で師匠が叫んだ。
突然の大声に思わず驚いてしまうお手伝いさん。
「……いや、だがまさか、そんな……」
そして訝しむように声が小さくなっていく。先ほどと比べれば幾分かスッキリした表情を浮かべているが、納得がいっていない様子。
「思い出したって、何をですか?」
「なんでもねーよ気にすんな。そんなことより、さっさとここから脱出すんぞ」
「それができたらここまで苦労してませんて……」
何かを思い出すのに必死だったらしい師匠は、お手伝いさんのお願いを全く聞いてなかった。
(どうしよう……使えそうなアイテムが無い……)
崖からころげ落ち、わずかに飛び出した足場に助けられたものの身動きが取れなくなってから気付けば数時間。お手伝いさんばかりがあれこれ手がないか探し回っている中で、師匠は何かをやるわけでもなく堂々とのんびりしていた。
(この人は助かりたくないのかな……)
このままではどうしたって凍死するか餓死するかの未来が待っている。
そんな事にはなりたく彼は必死になって脱出する方法を考えているのに、何もしないなんて人としてどうかしているんじゃないか。
(いやいや、先生の先生なんだから……きっと何か考えているんだ)
あまり良くない方向へ物事を考えるのは好ましくない。常に最悪の状況を想定して行動した方がいいと教わってきたが、このままでは最悪を通り越したその先へ行ってしまいそうだ。
(待て……誰にそんなこと教わったんだ?)
あまりにも自然な思考だったため見逃すところだった。しかし教えられた覚えはないのに知識としてしっかり吸収されているということは、やはり誰かに教わった可能性が大きい。
(いってて……。今はそんなことを考えてる場合じゃない、か。きっといぬねこちゃんにでも教わったんだ)
洞窟の中で感じた頭痛と同じ痛みを感じたので、適当な理由を見つけて無理やり納得させ、思考を切り替えることに専念。
兎にも角にも、ここを離脱しなければお話にならない。
(役立ちそうなものはあの布だけかな……)
重苦しいため息が出そうになるのをグッと堪え、とにかく思考を回し続ける。
布を硬化させるために必要な電気だが、この問題はあっけなく解消された。師匠が持っているアイテムの中に大量の電気を帯びたオーブが含まれていたからだ。
師匠の家には電気は通っていないが、しっかりと灯りはあった。その明かりに必要な電力はこれで補っているのだとか。
「大先生、もういいですよ。だいたい探したので戻しちゃってください」
「あ〜」
「大先生? どうしたんですか?」
狭い足場に大量のアイテムがあっても邪魔なだけなので片付けて欲しかったのだが、声をかけても生返事。顎に手を当て、目を瞑っては空を見上げて何かを考えている。
というよりは、何かを思い出そうとしているそぶりに見える。
お手伝いさんが眉根をひそめて首をかしげる。
その瞬間——、
「思い出した!」
「うわぁ!?」
——よく通る声で師匠が叫んだ。
突然の大声に思わず驚いてしまうお手伝いさん。
「……いや、だがまさか、そんな……」
そして訝しむように声が小さくなっていく。先ほどと比べれば幾分かスッキリした表情を浮かべているが、納得がいっていない様子。
「思い出したって、何をですか?」
「なんでもねーよ気にすんな。そんなことより、さっさとここから脱出すんぞ」
「それができたらここまで苦労してませんて……」
何かを思い出すのに必死だったらしい師匠は、お手伝いさんのお願いを全く聞いてなかった。
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