異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編

ノベルバユーザー202613

第36話 倉庫強襲作戦

しばらく待っているとお父様が自分の騎士を連れてやって来た。
そして目の前の光景を見て唖然としている。
そんなに散々たる状態でも無いのだが大人4人も倒したというのが信じられないらしい。

(あ、やべー、こうなった時どうするか考えてなかった)

相変わらず脇の甘い男だった。

「お、お前、レイン、これどうやって倒したのだ?」

やっぱりこの質問が来た。

「お、お父様!!今はそんな事よりも王女殿下救出が先です!」

と誤魔化す事にする。

「う、うむ・・・そうだな!そちらは一刻を争う!それで王女殿下は何処にいるのだ?」

「はい、サルス地区の四番倉庫、仲間の数は全部で38、彼等を除けば35人程いるそうです!レベルは20から30いかないくらいだそうです!敵のボスはヴァグドという男だそうです」

と聞かれるであろう事は答えておいた。

「うむ、ご苦労!後は任せてゆっくり・・・いや出来るなら一緒に来てくれ」

・・・どうしよう。

(正直怠いけどあの王女にちょっと言いたい事もあるからな〜。仕方ない・・・行くか)

「分かりました!では一緒に参りましょう」


お父様の精鋭25名と衛士60名で倉庫の辺りまで行く。

行くまでにやはり見張りが入る。
まだ彼方はこちらに気づいていない。
というか神眼で家数軒飛ばして見ているから気づかれる訳が無い。

2人だけだったのでスクナとアイナにそれとなく指示して裏から制圧させる。
倒す前に敵に鈍足をかけたのは言うまでもない。
念には念だ。

「レイン、スクナとアイナは如何したのだ?」

「あ〜っとトイレでは?」

苦しい言い訳をする。
するとお父様は

「・・・そうか」

と言っただけだった。

分かってる。これは確実にさっきの事と合わせて後で膝をコンコンと付き合わせてのO・HA・NA・SHIが待っている。

まあしょうがない。
今から対策と言う名の言い訳を考える。

それからしばらく走り、途中で10名ほど追加して4番倉庫とやらの前に到着する。

最初に口を開いたのはお父様だった。

「ふむ、情報に間違いはなさそうだな」

確かに素人の目から見ても物々しい空気が漂っていて明らかに普通ではない。
何か重要なものを守っているのだろうという事は一目瞭然だ。
しかも神眼で見ると王女が真ん中で椅子に縛られている。

(本当にいたよあいつ、マジ何やってんだ)

しかも恐怖で震えてるとかではなく助けが来る事を確信しているようなふてぶてしい顔をしている。
助け甲斐のない王女だ。

「さて、如何するか・・・」

とチラッと俺を見た。

(そんな所で頼られても困るんだが・・・)

さっきの戦闘から分かったのだが、スクナとアイナには戦闘の実戦経験が圧倒的に足りない。
魔法才能がないレベル30越えという事はそれなりの猛者だ。
当然戦闘の実戦経験はスクナ達とは雲泥の差だろう。
つまりステータスが倍でもかなり手こずるのだ。
だからさっきの手は使えない。

俺らだけで裏手から行くのもいいがボスが王女のすぐ横にいる。
ボス戦は本当に遠慮したい。
ボスのレベルが聞いてた話と違う。
あいつらは36と言っていたのだが神眼でみた結果レベル38と2レベも違うのだ。

(レベルだけで一級冒険者並みじゃねーかよ!)

ヴァリア・ヴァグド/Lv. 38]
[男性/B/6471/12/13]
[狼人族/人攫い ヴァグド盗賊団]
[HP 565
MP 425
STR 135
VIT 126
AGI 116
[魔法]
火魔法    レベル4
土魔法    レベル5

(いや、さっきの奴よりもふた周りくらい強いんですけど・・・
 しかもデュオの魔法使いって、聞いてないことだらけだ)

かなり強いのは確かだ。
あれとぶつかるのは無しだ。
しかも人数も5人くらい多い。

(くそっ!こういう時のための口裏合わせをしてやがったのか!)

四番倉庫だけが事実なのは行くまでに絶対に索敵が気づいてくれるという仲間への信頼か。
なかなか頭が回る奴らしい。

「これはなかなか厄介ですね、相手は獣人で固めてきています。
当然正面衝突など以ての外ですから」

臭いは臭い消しのアイテムを走ってる最中に全員に使ってある。
かといってこれ以上この人数で近づけば気配で気付くだろうというお父様の判断だ。

「勿論だ。だから迷っておるのだ。
何か良い案はないか?」

・・・ない。

というのは流石にマズイので案を考える。

(前世の知識で言えば、フラッシュからの突入・・・、からの不意打ち・・・ん?いや?そういえば・・・)

家から色々魔導具を持ってきているのを忘れていた。

「あ、出来ました、作戦考えましたよお父様」

「おお!そうかそうか!!で、どんな作戦なのだ?」

「それはですね・・・」

ーーーー

「ふむ・・・、お前が一番危険なのではないか?」

「ですがこれが一番確実かと思いますが。
どうであれ一戦は免れませんし」

「そうだな、よし!その案で行こう!!
頼んだぞレイン!」

「はい!お任せください」

と言って俺とスクナとアイナは配置に着き俺は後手に縛られながら待つ。

お父様が全員に説明をし終えたのを確認し、倉庫の方に歩いていく。

「おい!!止まれ!!何者だお前らは」

アイナが話す。

「あ、えっとあの、あのわ、ワルオ・バリアントさんという方から、その、で!伝言です!」

「あ!?バリアントの兄貴からだと?
てめー何者だ?」

「あ、あのど、奴隷です」

「あ?・・・確かに本物だ。で?こいつは?」

「あ、あのこの小僧に俺らの取引がばれた。この人をヴァリア・ヴァグドという方に会わせて指示を仰げとバリアントさんから・・・」

しばらく沈黙が走り、持ち物検査される。
アイナがバリアントさんから危ないからとナイフを渡されましたと言って素直に渡す。

「・・・おいヴァグド兄貴に知らせろ」

と後ろにいた獣人に知らせる。

「ウスッ!」

と言って倉庫の中に戻る。

俺は神眼でその様子をガン見だ。

何言っているかはわからないが顔でなんとなくわかる。

 あん?!ガキ三人できただと?
 罠じゃないのか?
 娘2人は奴隷だそうです。
 そうかなら強制的にやらされている可能性がある。
 ですが子供を人質にするでしょうか?
 みたところかなり良い服を着たお坊ちゃんでしたぜ
 ふむ・・・持ち物は?
 持ち物検査しましたがナイフが一本、しかも素直に渡しましたぜ。
 そうかではここまで連れて来い。
 分かりやした!

と恐らく言っているだろうことがわかった。

「おい、ガキ共ついて来い!」

と言って倉庫の中に歩き出す。

俺らもそれについていく。

そしてヴァグドの前まで連れて行かれた。
隣に王女殿下もいる。
なんか嬉しそうな顔をしている。

ここまで来ておいて騙されたんじゃないだろうか?という思いが浮かんできた。

するとヴァグドがすぐさま立ち上がり近づいてくる。

「ああ!?こいつがか?本当にまだガキじゃないか!たくっあの野郎こんなガキに聞かれるとは、後で一発ぶん殴ってやらねーと!
んでガキンチョよー、オメー何処の家のボンボンだ?」

といって俺の顔を覗き込んでくる。

口を開け、何か話そうとするフリをして、舌を伸ばす。
次の瞬間

カッ!!!!!

と一瞬で部屋を真っ白に染まる。

口の中に光の魔力純度の高い魔石を入れておいたのだ。

「ぐあっ!!何だ!!」

と立ち眩みをする。

俺はすでに目を閉じ神眼で周りを見ている。スクナ達はさっき明かりに目を慣れさせたしタイミングを知っていたから手で目を塞ぎ、無事だった。

今のうちに動き出して王女の元に駆け寄り縄をスクナの口の中に入れておいた俺特注のカミソリレベルの小さな刃物で縄を切る。
刃の部分は最硬クラスの金属であるオリハルコンなので容易く縄が切れた。

「おい!ガキ共を殺せ!!王女だけは殺すな!!」

とヴァグドが吠える。

所詮口の中に入れられる程度だけあって周りの獣人にはあまり効果がなかった。
間近で受けたヴァグドは未だに目を抑 押さえている。

するとすぐにそとからドタドタという音と悲鳴が聞こえる。
魔石を使ったら表から突撃する様に指示しておいたのだ。
お父様がいるあたりから目潰し用の幾つもの光が照らされる。

「て、敵襲です!!ヴァグドの兄貴!!
王国の兵にこの場所がバレてます!
どうすれば!?」

と指示を求めてくる。

「そいつら捕えて人質にしろ!!予定は大幅に変更だ!!」

と言って全員の顔がこちらに向く。
俺達は背中を向けて猛ダッシュだ。獣人でも神速持ちの俺とバフ付きのスクナ達には追いつけない。
王女は俺の腕の中でお姫様抱っこされている。
俺の腕力なら余裕だ。
本当にいいご身分だこの野郎。

壁側まで到達する前に壁が溶けるよう土になる。
俺が指示した。
そちらに突撃すると後ろから

「フレイムボール!!!」

と言って背中側から熱波が押し寄せてくる。

火魔法レベル5フレイムボールだ。

「スクナ!アイナ!王女殿下を連れて先に行け!」

「「ハッ」」

といって王女を投げ渡し俺はヴァグドの方に向く。

「う、うおっ!あつ!熱い!!」

と熱気に翻弄されて下がりそうになりながらも手を前に掲げて立ち止まる。

「魔力全吸収ーーーー!!!!」

と叫びながら歯をくいしばる。

フレイムボールが手に触れる。
とその瞬間手に吸い込まれるように消える。

「な、なん、だと・・・おれのフレイムボールがいとも簡単に防がれただと?」

と若干放心している。
それも仕方ないだろう。
目の前で起きた光景はそれだけのものだったのだ。

その間に俺は空いた穴からとんずらをさせて貰う。

「まだだあぁぁーーー!!!!こんな所で終われないぃぃ!!!せめてガキだけでも!!!」

と叫び俺の前に土魔法で壁を作る。

(残念だけど・・・)

俺がその壁に触れた瞬間、ポロポロと砂のように崩れてしまった。

「な、なんで、だ?」

とMPを使い切ってしまったらしく倒れ込んでしまった。
レベル1魔法の土魔法を数十メートル先に俺を囲むよう使ったのだ。
レベル1の魔法は詠唱が短い代わりにMP効率が悪い。
倒れても仕方がないだろう。

俺はとうとう倉庫を出てスクナ達の所に向かう。

「ご主人様!ご無事でなによりです!!お怪我などはございませんか?」

「はい!大丈夫ですよ
それよりも王女殿下、お怪我などはございませんか?アイナ、ヒールを」

「ハッ」
とアイナがヒールを唱える。

「は、ははは、本当に来た!!本当に来た!!!」

と言って王女が突然俺に抱きついてきた。

「本当に来た!僕の前に来るのは君だと確信してたよ!!スゴイよ!本当に君はスゴイよ!!!」
と喜んでいる。

俺はというと、

「うおっ!!女の子に抱きつかれた!!
嬉・・・しくないな・・・
ビックリするぐらい自分が冷静だってわかる。
フーン・・・って感じだ
プリムに抱きつかれた時は危うく押し倒しそうだったからな
そういえばプリム今何してんだろ?途中で切り上げたことまだ怒ってなければいいけど・・・)

と既に別の女の子の事を考えていた。

「む〜、女の子が抱きついているのだから喜んだらどうだい?」

「いえ、まあ・・・嬉しいですよ、はい」

危うく適当に返事をする所だった。
心の中でこの人は王女、この人は王女と唱え気持ちを切り替える。

「全く君という男は・・・
だけど来てくれて本当に嬉しいよ。
ありがとう」

「いえいえ私は臣下として当然の事をしたまでですよ。
貴女様がご無事でなによりです」

と臣下としての態度を崩さない。

「む〜・・・」

と王女が次の言葉を述べる前に

「おーいレイン!!」

とお父様がこちらにやってくる。
中の制圧状況を神眼で見るともう終わっていた。
(流石お父様の精鋭。強い。)

「あ、お父様!こちらです!王女殿下はこちらにおります!」

と話題をそらす事に成功する。

「おお!これはこれは王女殿下!救出が遅くなり大変申し訳ありませぬ」

と臣下の礼をとった。

「いえ、構いませんわ。
それに今回の出来事は私の不注意が原因、公爵様には何も罪はございません」

と相変わらずの変わり身の早さだ。

「ハハッ!ありがとうございます
では私はお城の方に連絡などを致しますのでもうしばらくお待ちください」

と言って引き返す。

「あ、お父様!僕も!」

こんな所に残さないで欲しい。

「いやお前は王女殿下のお側に居てあげなさい!
それにしてもお手柄だ!婚約者を助けるなんてお前の未来は明るいな!ワッハッハッハ」

と俺を残して現場に戻っていく。

(いやそんな事言われても・・・)

と仕方なく王女殿下の元に戻る。

「それにしても本当にスゴイな君は!ビックリだよ!最後のアレは圧巻だったね!!」

と捲し立ててくる。

「ハッ、ありがとうございます」

「いいってそんな硬い話し方しなくて、お茶会の時の話し方で頼むよ」

・・・

「分かりましたよ、まあ最後は流石に焦りましたね。僕も初経験だったものでして」

「うん!手に吸い込まれていたからね!本当にスゴイよ!」

「そうですか・・・
因みに目標とか言ってましたけどあれはどういった意味なのでしょう?」

とついでに聞きたい事を聞いておく。

「うん?あれかい?そうだね・・・僕の存在意義というか生きる上での夢だよ。
僕はそのために生きていると言っても過言ではない。
君はその夢の延長線上に必ずたっていると思う。
僕はそれに乗っかりたいんだよ」

(・・・?
意味がわからない)

「えっと、すいません、よくわからないのですが・・・」

「詳しくは秘密だよ!だけどね・・・」

と突然真剣な顔で俺を見た。

「僕はそれが叶うのなら人生を投げ出しても構わない。王女という身分を捨ててもいい。君の奴隷になっても構わない」

と言った。




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