異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編

ノベルバユーザー202613

第48話 魔力全吸収

 戦争が始まった。

正確にはポルネシア王国にではないのだが、やはり隣国だけあって飛び火は免れないだろう。
というかリュミオン王国が落とされたら次は遅かれ早かれポルネシア国なので援軍を送る必要がある。



俺に後継ぎの話をした次の日、お父様はその準備の為に王都にまた行ってしまった。

「僕は?」
と聞いたところ
「いや、まだ大丈夫だ」
と言われてしまった。
いいのか、とも思ったのだがまだ大丈夫らしい。

(というか6歳の少年に参戦せよと言うのもおかしいか)
と思い、いつも通り自己鍛錬(主に魔法訓練)と貴族礼儀作法などを学びながら日々が過ぎていく。

そしてこんな真剣な空気で言うのもなんなのだが、王都で約束した通り、プリムの家に遊びに行く事になった。

最初に遊びに行っていいのかという手紙を送り、大丈夫というお返事を頂いた。
プリムが書いたものらしく、丸っこくて可愛らしい字だった。
俺の宝物箱に入れておこう。

戦争だってこの世界ではよくある話だし、長い歴史の中、いや、ここ100年という短い時間で見てもバドラギアがリュミオンに攻め込んだのだって今に始まった事ではない。

 お母様も
「 よくあることだし大丈夫よ」
と言ってハーバー領に行くのを許可してくれた。

俺と第4夫人とその息子とスクナ達4人と騎士50人でハーバー領に行くことが決まった。
お母様は身籠っていて流石にこれ以上の馬車旅は無理だ。

という訳でハーバー領に行く当日の朝、緊張で全く寝れず寝不足のまま朝を迎える。
遠足に行く前の小学生か!って俺が自分に言いたい。
馬車での旅だと3日はかかる。
つまり、今日会える訳ではないのだ。
なのに異様に緊張し出し、何を話そうかなどと頭を悩ましていたら眠れなかった。

「レイン様、大丈夫ですか?」
とスクナが俺を心配する。

「……、全然眠れませんでしたよ」
と目の下に隈を作った顔で言った。
「緊張されるのもわかりますがご安心下さい!私達が必ずレイン様をお守り致します!」

(ん?え?なんで?何故そうなる?)
と疑問に思っているとすぐに答えがわかった。

「それに戦争が起こったのは西側です。南東のハーバー領までの道のりで敵がいるとは思えません」

(ああ、そっちか)
と納得する。
西で戦争が起こったので俺が怯えていると思ったのだろう。

「そちらの心配は……いえ、ありがとうございます。心強いです」
と否定しようかと思ったが本当の理由の方が恥ずかしいのでこのままにしておく。

「はい!お任せください!」
とスクナが力強く頷く。

ぶっちゃけると昔見た戦術本の一例に従うなら二千人位なら囲まれても問題はないと思う。
全員倒す必要がないのなら防御魔法で横に壁を作りつつ支援魔法で味方を援護し、回復魔法で傷を治しながら俺の乗る馬車を囲む様にして一方に突撃すれば他領の城の中に逃げる位までなら余裕で持つ。
因みに防御魔法は例外はあるが一応支援魔法に入る。
MP13000は伊達じゃない。

ただ一つ問題なのは俺がMPの効率の良い運用の仕方がよくわかっていないということだ。
MPを126使ってヒール、などと言う細かい芸当は俺には出来ない。
つい最近まで自分に魔法を使う時は千以下は誤差の範囲というレベルで使っていたのだ。
自分に魔法を掛けると一瞬で魔力が回復するため、細かい値が全く分からなかったのだ。

 あれ?物にも魔法はかけられるのでは?という疑問があるだろう。
だが、俺の前世知識だと魔法とは人にかけるものであるという常識があり、つい最近、というか先日スクナに相談するまで物にも魔法をかけれるという方法があったのをすっかり忘れていた。

他の人に魔法を使えば俺の魔力は当然回復しない訳で、これからは10単位でのMP運用は必須事項である。

ただ練習はしているのだが無詠唱のせいか俺の魔力を込める速度が異常に早い為、最近やっと二千以上からの三百単位での魔力運用に成功したところだ。
つまり二千以下の魔力を込める時は未だ千単位である。

それと魔力全吸収なのだが二千以上の魔力を一瞬で吸収することは出来ないらしく、二千を越えると千につき0.1秒の時間が必要だそうだ。
俺が一瞬だけ自分に魔法がかかる事に気付いた時は既にMPは4000を超えており、3,000以上でしか自分に魔法をかける事はなかった。
全然魔法に対して無敵じゃなかった。

しかも支援魔法を付与している仲間に触れると魔力を吸収してしまう為、支援魔法をかけている人には触れられない。

ここで一つ疑問が出る。
この前舌の上に光の魔石をのっけてなかった?と。
答えは外装型魔力と内封型魔力の違いだ。
外装とは主に支援魔法であり、例えば人に土魔法の硬化を掛けると同時に武器や盾なども含めて硬くなるのだ。すなわち外膜である。

内封とは魔力を入れ物に入れておく事で外側はあくまで入れ物で中に魔力を封じる事だ。

簡単に言うと水とスポンジがあるとしよう。
水を身体にかけたら当然外側に水滴ができる為、スポンジで身体を拭く事で吸収できる。

だが水を飲み込んで仕舞えばスポンジで吸収する事は出来ないという訳だ。
もちろん口の中に手を突っ込めば可能だが同じ事だ。容器を破壊すれば魔力を吸収する事は可能だ。

スキルであんな事があったので街にいた情報屋まで赴いて俺のスキルの説明を聞いてきた。(もちろん神眼と魔導王以外だ)
そしたら神眼の説明は不足が多すぎるという事がわかってしまった。
凄さが中途半端なんだよ、と神様に言いたい。
説明文に書いておいて欲しかった。

そういう訳でずっと魔力制御の練習をしているのだが道のりは険しそうだ。

地球感覚で10時頃になった時、とうとう出発の時間となる。
「では行きましょうか」
と俺が声をかけ、馬車に乗り込む。

あっさりと言ったが、今回の俺のお目付役は第四夫人だ。
ほとんど関わりが無かったためあまりよく知らない。

初っ端から不安を抱えながらオリオン城を馬車で抜けるのだった。



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