異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編

ノベルバユーザー202613

第52話 プリムとお花畑

次の日の朝、目が覚めて瞼を開けると

「うおっ!!??」

と驚いてしまった。
プリムが目の前で寝てたからだ。

「……可愛い」

寝顔も無茶苦茶可愛い。
このままじっと見ていよう。
そもそも前世からかわいいもの好きという一面が俺にはあった。
彼女はかわいい。そういうことにしておこう。

それからどれだけ時間が経ったか分からないが、俺はじっと見続けた。

すると急にプリムはパッと目を覚ました。目があってしまった。
誤魔化すために取り敢えず挨拶をする。

「お、おはようございます」

するとプリムは暫く

「む〜〜……」

と唸っていた。
プリムは朝が弱いみたいだ。

「おはようごじゃ〜まふ〜……」

とプリムも挨拶してきた。

「では、プリムさん。
一緒に朝のお食事にしましょう」

と内心ドキドキだがそんな事は表面上はおくびも出さずに爽やかに挨拶をする。

ちゃんと意識がしっかりしている人が見たら俺の目尻がヘナヘナになっている事に気づけただろう。

だがプリムは寝ぼけている為気付かない。

すると突然背後から、

「おはようございます、レイン様、プリム様」

と声を掛けられた。

「!!!???」

驚きすぎて声も出ない。
ゆっくり後ろを見てみるとリサがいた。

「な、何故ここに?」
「いつも私はレイン様がお眠りになる際はここにいたはずですが?」

(そうだった……。
1週間以上いなかったから忘れてた。
てか昨日の夜、俺が寝るまでいなかったじゃん!!)
昨日は確かにいなかった……筈だ。
いたら俺の恥ずかしい話し語りが聞かれていたことになる。
(あのつっかえつっかえの震えながら話した物語を他の人に聞かれるとか……恥ずかしさで爆発しそうだ)

相変わらずのリサであった。

「そういえば昨夜はどこにおいでになっていたのですか?」

「ん?いえトイレですよ」

二人の話を聞いた後トイレに行ったのは事実だ。

「そうでしたか。
それはそうと朝ご飯の準備がそろそろ出来るかと。
お召し物にお着替えになって食堂にいらしてください」

するとすぐにハーバー家の侍女がドアをノックし、リサさんが返事を返したので入ってくる。

(あんたが返事するのかよ!!)

「……おれのプライベートは?」

ありません。
そんな声が聞こえた気がした。


もそもそと着替えをして朝を食べに行く。
家はそれほど大きくない二階建ての為、(それでも小学校の体育館の半分くらいはある)すぐにリビングに着く。
食卓の所々にかなり豪華な料理が並んでいた。
プリムが

「お、お父さん!どうしたのこれ!?」

と、目を輝かせている。

「ハッハッハッハ!驚いただろう?
レイン君が家から持って来てくれたものだ!レイン君にありがとうを言いなさい!」

そう。もちろん俺が家から持って来たものだ。
5日は日が持つものばかりで、若干物足りないがどれも一級品だ。
プリムが食いしん坊キャラなのは俺はもちろん忘れていない。

「レイン様!ありがとうございます!!」

と今までで一番の笑顔で言った。
食べ物に負けてしまった事に傷付きながらも

「いえいえこれ位は」

と大人な対応をしておく。

「レイン君はご立派ですな!プラムにも見習って欲しいものです!ハッハッハ!」

子供の対応をしなければいけないのをすっかり忘れていた。

それから暫く和やかな食事の最中に問題が発生する。

「プリム、野菜も食べなさい!でないと立派な淑女になれませんよ」
とプリムの母親が注意する。

「む〜……だって美味しくないもん!」

「そんなこと言ってないで、ほらレイン君を見習いなさい」

と言って俺を見る。

「え?……」

「む……」

俺も野菜を残しているのだ。
俺を見習うと食べなくていい事になる。
ちゃんと確認してから言って欲しい。

「ハ、ハ、ハッハッハ」

と乾いた笑い声を俺が出す。
すると後ろに控えていたリサさんが後ろからプレッシャーを掛けてくる。

「レイン様、ここは男の見せ所ですよ!食べないとお相手のご両親の好感度が下がりますよ」

6歳児に何を囁いているんだと思わなくもないが、そう言われると食べないといけない気がしてくる。

「す、好きなものは最後に残す癖がありまして、ハッハッハ、ハア〜……」
と最後に溜息をつき一息に掻っさらう。

「流石はレイン様です。
プリム様もレイン様を見習って野菜を食べてみるのはどうでしょう?」

「う〜、わかりました」

と言ってチビチビと野菜を食べ始める。
上手い具合に俺をダシにしてプリムに野菜を食べさせていた。


無事に食事も終わり、プリムと一緒に外にお散歩に行くことになった。

リサ達も後ろからついてくる。

ハーバー領には城壁が無い。かろうじて魔物が来ないようにする為の柵があるだけだ。
なので定期的に魔物を狩る必要がある。

(初めてハーバー領に来たが、やっぱりオリオン領とは全然違うな。
街っていうか村に近い)

ハーバー領は街というよりは村に近く、ハーバー家が建てられている丘の上から見渡すと柵のすぐ外側には畑が広がっており、オリオン領よりも領の大きさも圧倒的に小さい。

「いい雰囲気の村ですね」

お世辞でも何でもない。
レインは街も好きだがどちらかといえばこじんまりした村の方が好きなのだ。

プリムも故郷を褒められて嬉しいのか照れている。

可愛いね、そんな言葉をアッサリ言えるほどの勇気もないので案内を促す。

「あ、あのねお花畑があるの!
一緒に行こう!」

「わかりました!一緒に行きましょう」

そう言って手を差し出してみた。
手からは汗が滲みプルプルと震えている。
プリムに抱きつかれた事はあるがあれぐらいでもう慣れた、と吹っ切れる程レインの人間恐怖症はあまくない。
それでも一歩ずつ進みたかったのだ。

(嫌な顔とかされたら死ぬかも……)

そんな縁起でもない事を考えながら手を伸ばす。つい恥ずかしくて目をそらす。

ギュッ

と手を握る感触があり、見てみるとプリムも笑顔で俺の手を握り返してくれていた。

「あ、あの、あ、汗がちょっと出てまして、い、嫌ならあの……」

もう充分だ。そうレインは思った。
ちゃんと一歩進めた。

「うう〜ん嫌じゃないよ!嬉しいよ!」


「しょ、しょですか、それはよきゃ……よかったです、はい!本当に!」

とつい噛んでしまったが、気持ち的には天にも登りそうだ。

それから手を繋ぎながら村の柵を出てお花畑に向かう。
外はちょっと怖いので一応神眼は発動しておく。

二人で手を繋ぎながら花畑を歩く。
菊によく似た黄色の花がまるで絨毯のように咲き誇っている。

まあもちろんレインが見ているのはプリムの顔だ。

「ね、綺麗でしょ?」

「うんそうですね」
(君がね)

「お気に入りの場所なんだ!!」
と咲き誇る様な笑顔でそう言った。

「そうでしたか。
黄色い花がまるで絨毯の様に咲き誇っていて綺麗ですね」

(よし!言えた!

出来れば、まあプリムさんの方が綺麗ですがね、ぐらい言えたらよかったのだが)

とことんヘタレだった。

「うん!
あのねお花の冠を作ってあげる!!」

そう言って手を離し、しゃがもうとする。
だが俺は手を離せなかった。

「?
ねえ、レイン様おてて離さないと冠作れないよ?」

そうあどけた表情で言われてしまった。
レインも慌てて手を離す。

「あ、あは、あははは、す、すいません。急にしゃがまれたもので、手を離し損ねてしまいました」

そう言って誤魔化す。
プリムも気にした様子もなく冠作りに入る。

「はぁ〜……」

溜息を吐きながら落ち込む。

(あ!そうだ)

「プリムさん、冠の作り方を教えてもらってもよろしいでしょうか?」

「うん?いいよ!!」

そう!
上手くいきませんね、どうすればいいんでしょうか?作戦だ。

案の定、手が触れる。

(今、俺は青春をしている。無くしてしまった、いや何もなかったあの時代……、なんて美しいんだ)

心の中で咽び泣く。

そして冠ができ、俺の方は不恰好だけど喜んでくれたから良しとする。

「俺もう一生手を洗わない」

そう固く決心した。


だがそのすぐ後にリサさんに無理やり手を洗わされたのは言うまでもない事だろう。

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