異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編

ノベルバユーザー202613

第56話 全く大した話ではない

「ちょっ!ちょっとお父様!待ってください!」

連れて行かれそうだったがすぐにそれはマズイということに気付く。

「ん?何だ?」

(いやいや、ん?何だ?じゃないっすよ!)

「お父様、落ち着いて考えてください。僕が目立つのはあまり得策ではないかと思われます」

(本来お父様が言うことだぜ?)

「何故……、ああっとそうか……。
私とした事が……そうだったな、お前が目立つのはあまり得策ではないな」

ただでさえ、王達に能力がバレているのだ。王達だけならまだしもその他の者達にレインの異質さを知られるわけにはいかないのだ。

「と、言う訳で昨日からほとんど寝てませんので今日はもう帰って僕は寝ます。
お父様が皆々様に上手く誤魔化しながら伝えてください」

とりあえず作戦の中心人物にレインの案を伝えた。
王様と宰相と騎士団長などはレインの能力を知っている為、一緒に誤魔化してくれるだろうとレインは考える。

(まあ、お父様なら上手くやるだろう)

「そうか……わかった。
感謝するぞレイン!
明日また迎えに行くだろうから一応別館で待機しておけよ」

「分かりました。
では頑張ってください」

「ああ、おやすみ」

そう言ってお父様と別れる。
ちゃっかり付いてきているリサ達と一緒に別館に戻る。

そして、別館に帰り、体調にお疲れ様でした、と労ってから風呂などを終えてベットに飛び込む。

(フゥゥゥ〜〜、眠くて死にそうだったからな……、あんな状態で大人達に囲まれたら死んじゃうって……)

なんとか難所を乗り切ったレインは

(ファザー!ガンバ!!)

そう思いながら眠りに落ちるのだった。


次の日の朝、唐突にハッと眼が覚める。
なんとなくだが時間がわかるレインは12時間以上眠っていた事に気付く。

「ひっさびさにこんだけ寝たな」

前世なら夏休み中とかでよくある出来事だったのだが、今世になってからは赤ん坊の頃から魔法を鍛えていた為、何時もは長くもなく短くもない睡眠時間をとっていた。

だが未だに体がダルい。

それからすぐにリサが入ってくる。
昨日は大変だった為ちゃんと眠らせたのだ。
何時までも横で眠るのは可哀想だからだ。

「おはようございますレイン様」

「おはようございますリサさん」

「朝食のご準備が整っておりますのでいらっしゃってください」

「分かりました、すぐ向かいます」

そう言って気だるい体を起こし服を着替え、朝食を食べたあと、しばらく自室で前世の記憶を引っ張り出しているとドアがノックされる。

「どうぞ〜」

というとすぐにドアが開かれる。
そこにいたのはお父様と王様だった。
反射的にバッと飛び起き、膝をつく。

「は?え?お、王様!こ、この様なみすぼらしいところへな、何故おいでに」

このオリオン家別邸は王都では王城を除けば3指に入る程の豪邸な為みすぼらしい訳がないのだが、レイン自身焦って何を言っているのかが分からなくなってしまう。

「と、とにかく歓迎のご準備を」

「よいよい、気楽にせよ」

と王様が手でジェスチャーしながら言ってくる。

俺はは無言でお父様を冷たい眼で見る。
すると

「突然ですまんな。
何度もレインが王城に来るのは不自然であろう?
だから王にここまでおいでいただいた」

「は、はあ〜……」

(流石に一国の王が子供の部屋に来るのは…いやでも一応公爵家だしなぁ)

目の前で起きているいじょうはありなんだろうと解釈する。

「ではあまり時間もないことだし早速本題と行こうか」

とお父様が口を開く。

「昨日レインが話した相手の作戦を話し合った結果、その可能性が非常に高いと判断した」

「そ、そうですか……」

としか言えない。
それに対する対策でも聞きに来たのだろうか?
だとしたらそれは無理な相談だ。

「あの、もし対抗策をお聴きに来たのでしたら申し訳ないのですが…」

まだ全然出来ていない。

「そうか、いやよい。今日はレインを労いに来たのだよ。よくぞ敵の作戦を看破した。礼を言う」

と感謝される。

(いや重い!!これ以上俺に対する期待をレイズさせないでくれ!!
もし間違ってたらショックで立ち直れなくなるよ!!)

間違っていてほしいはずなのに来てくれないと困る状況にされた。
俺を追い詰めてるの誰だよチクショー!

……俺だった。

「は、いえ、一貴族として当然の事をしたまでです」

「うむ、感謝するぞ!それにしてもよくこの様な策を思いついたな?」

「いえ偶々でございます」

前世知識とこの世界の知識から導き出しただけの事だ。
本当に大した話ではない。

まず密偵からの報告だが、あの両親すら信用しようとしなかった男だぞ?
話した事もない、顔も知らない人間なんか信じるわけがない。
それに密偵から軍船が200と報告が入った。その船に乗れる兵の数は約2万だ。
だがそもそも2万程度では拠点と成り得る城一つ、落とせはしない。攻城機が載せられないからだ。
もちろん2万の軍勢で背後から奇襲されれば危険極まりないが軍艦が200も出たという報告はリュミオンも既に知っているだろう。
当然対策は練って沿岸地域は厳重警戒態勢になるはずだ。
それに見つからずに200もの船を岸につけおりられるだろうか?
厳しいんじゃないか?

水上戦と平地戦は違う。
揺れる船の上で戦うのにはそれ相応の訓練が必要なのだ。
もしリュミオンが船を出さずに地上での防衛戦になったら?
平地では地上用の精鋭より弱い水軍ではどれだけ被害が出るかわからない。多くても変わらない。
ならその2万を本陣と一緒に攻めさせた方が効率がいい。

ならなんだろう?
そもそも前回の敗因はポルネシア王国が参戦した事が問題なのだ。
ならば参戦できなくさせればいい。

ポルネシアとガルレアンは隣接していない為大軍を送ると国を横断する必要がある。
前回の敗因を踏まえて同じく数十万規模の兵が欲しい。
だがリュミオンにも送る必要があるのだ。
他国から攻められる可能性も考慮して自国にもある程度の兵を残す必要がある。

ここで水軍の出番だ。
国にもよるが、ガルレアンは地上用の兵と水上用の兵を別に用意している。
基本的に他国からの侵略は地上からの為水軍は出る幕がない。
だからこそ手空きの水軍を使いたいのだ。
この兵をポルネシアにぶつけたい。
出来るなら足止めも含めて。
ポルネシア水軍の戦力を事前に調べあげるのはさほど難しくなかっただろう。
単純に最低でも倍以上は欲しいと考えるはずだ。少なくとも前世での戦は大体そうであった。
ならどうやって兵を隠した?
こんなものは適当でいいのだ。
本当は方法が違った?
知るか!
こんな方法もありますよ、だから伏兵は可能ですよ、と証明できればいいのだ。
2+4=6でも3+3=6でもどうでもいいのだ。
重要なのは倍以上が攻めてきている事なのだから。
だが水軍が6万もいればポルネシア水軍にもほぼ間違いなく勝てるだろう。
だが勝つだけだ。そこからが繋がらない。余った軍勢では領土に拠点が作成できない。
なら後陣がいるだろう。
しかも地上用の兵かつ攻城機も載せた運搬専用の船が。

自国の領土が奪われたとなればリュミオンに送ったポルネシアの援軍も引き返さざるを得ない。

と、すげー頭よさげに語ったのだが敢えて言わせてもらおう。
全く大した話ではないと。
数学の証明をスラスラ解いていたら頭が良さがに見えるのと一緒だ。

あと俺の前世の趣味なのだが基本的に俺は多才だ。というか多彩だ。
暇だった高校時代かなりいろいろなものに手を出した。
いわば趣味オタクだ。
何か一つを極める、否、究めるのではなく様々な知識を集める事に邁進していた3年間だった。
後々になって本当に後悔している。
そのほとんどが広く浅くだったが中でも俺が一番ハマったものは三国志などの剣や弓で戦う形の戦ものだ。
当然本やゲームなども何十回とやっている。
そして段々とここはこうしたら勝てたのではないか?と考えるようになったのだ。
俺はそれらに対して大金というほどのお金をつぎ込んだ訳ではないが妄想戦闘シュミレーションをした時間だけならガチオタク達にも負けない自信がある。

知らない人間からすると凄くても、分かりきっている結論までの過程を考えたにすぎない。

「大したものだ!これからも頼むぞ!」

「ありがとうございます」

「では我もそろそろ帰らぬと宰相がうるさいからな」

「ハッ!わざわざお越しいただいて感謝申し上げます」

「よい、優秀な人材を労うのは上に立つものとして当然の事である。
では戻るか」

「畏まりました。
ではレイン、また後でな」

そう言って部屋を出て行った。
嵐のような出来事だった為、レインはしばらく呆然としていた。

(あっ、家の前までお見送りすべきだったかな……)

それに気づいたのは数分後だった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品