超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』 

チョーカー

魔物はどうして消えたのか?


 「ダンジョンから魔物が消えた理由か……」とサクラが呟く。
 「……」とオントは無言だ。
 二人とも、原因が思いつかない。
 そもそも魔物を絶滅させる方法があるなら、この世界からダンジョンのいくつかは消滅しているだろう。
 けれども2人は考えなければならなかった。

 「……例えば病気はどうだ?」とオントが言う。

 「伝染病か……いや、それじゃ魔物だけじゃなくて僕らもウィルスに侵されていることにならないか?」
 「そういうことになるな。病院にでも行くか?」

 「一応は行くけど……」と前置きをするも、サクラは伝染病説を否定した。

 「仮に病気で魔物が全滅したとして、遺体はどうなる?」
 「どうなるって? あぁ、エドワードがダンジョンに入った時にドラゴンを目撃している。しかし、それで慌てて帰還したのだから、他の魔物は見ていない」
 「ん? それはつまり……どういう意味だ?」
 「あの時点で生きてる魔物はドラゴンだけだった。他の魔物は、昔に絶滅していた。遺体が残らないくらい、昔にな」
 「なるほど、そうなると……餓死かもしれないな」
 「餓死? 魔物が病気じゃなくて餓死したって意味か?」
 「いや、違う。魔物じゃなくて、あのドラゴンさ」
 「?」
 「そもそも、ラスボス級であるドラゴンがダンジョン1層で目撃されたこと自体が不自然。あのドラゴンは獲物を求めて上へ上へ移動して1層にたどりついたんだ」
 「なるほど、何かが起こりダンジョンの生態系が崩れたのか」

 魔物が何を食べて生きているのか?
 もちろん、種類によって違うのだろうが……魔物と捕食する魔物も、当然いただろう。
 魔物の数が激減した事によって、それに比例して食料も減少した。 

 「つまり、あのドラゴンが最下層から、1匹1匹念入りに魔物を捕食して行き、1層まで食べつくしたって事か? そいつは地獄だ想像したくもないね」

 「まぁ、この推理も憶測の域をでていないけれども……」
 「いや、それじゃ答え合わせにでかけるか」
 「答え合わせ? 答えがわかるって事か?」

 サクラの疑問にオントは「さぁな」と首を振り、こう続けた。

 「お前には、もう1人ドラゴンの知り合いがいるだろう? ソイツにお前の推理が正しいかどうかと聞けばいい。 君たちドラゴンは、お腹が空くと魔物を絶滅するまで食べちゃいますか? ってね」

 しかし、サクラはオントが言うドラゴンの知り合いが誰の事を言っているのか? 
 それに気づくのに時間がかかった。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 ―――シュット学園内ダンジョン―――

 サクラとオントは母校を訪ねると、許可を得て学園が保有しているダンジョンに向かっていた。

 「まさか、あの人が校長になってるとは予想外もいいところだったな。俺が知る限り3回はお前を解体しようと隙を狙っていたぞ」

 「……5回だよ」とサクラは短時間でゲッソリと痩せて見えるようになっていた。

 「さて、僕がこのダンジョンに入った事は伝わっていると思うけど……」

 サクラが言い終えるよりも早く、目前の空間が歪む。
 そして――――

 「ご無沙汰しています。お父さん」

 美少女が現れた。
 小柄な体に露出が多い踊り子風の衣装。
 初めて会った時は子供だったが、今の風貌は15歳くらいだろうか?
 最も実年齢はサクラたちよりも遥かに上だ。
 しかし、母親からラスボスの座を受け継ぎ――――

 成長していた。

 彼女は、サクラが初めてこのダンジョンに挑んだ日、出会った子供のドラゴン。
 その成長した姿だった。

 

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