超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』 

チョーカー

サクラとオントの推理???

 アリスの館。客室に通されたサクラとオント。 

 「さて、お前はどう思う?」

 ドサリとソファに腰を落としたオントがサクラに尋ねた。

 「どうって、雑な話のふり方だね。……いや、もちろんドラゴン殺しの事なのはわかるけど」
 「あぁ、で? 犯人は?」
 「単刀直入には程がある! もう少し会話に脈略ってやつをだな」
 「ふん、脈略ね。 話難い話になると長引かせようとするのはお前の悪いくせだぞ」
 「……」
 「お前と違ってボンクラな俺にもわかるさ。俺たちの知らない間にあのダンジョンに入れた。あるいは入った人物は2人だ」
 「そうだね。あそこは特殊な鍵でしか入れない。もっとも、僕らの知らない所で他の鍵があるかもしれないが……」
 「あるかも知れない物をないと断じる事はできないってか? 悪魔の証明でも気取るのか?」
 「まさか。数学的に限りなく確率が0に近い事は起き得ないさ」

 サクラはおどけるように笑った。

 「つまり……鍵を他者が持っていたとしても、僕たちがダンジョンに突入する直前のタイミングでドラゴンを倒した。偶然はない。あるとしたら、原因は僕たちにはない」
 「俺たちにはない? あぁ、エドワードか。奴がダンジョンを発見して、あの場所が公になった。それが引き金トリガーになった? あり得なくはないが……」
 「そうだね。何者かが隠れて介入した可能性もなくはない。けど、普通に考えて、鍵は1つ。エドワードか、アリスが犯人だ」

 サクラは断言した。

 「身内びいきじゃないけど、エドワードとアリスだったら……エドワードだろうね」
 「ほう、その理由は?」
 「エドワードがダンジョンから出たのは遺体発見の3日前……」
 「ばっちり、アリバイあるじゃねぇか」
 「いや、検視した本人である僕が言うのも、あれだけど……死亡推定時間は当てならないよ」
 「死亡推定時間が当てにならない? それはどういうことだ?」
 「僕らは、南国のような気温状態のダンジョンしか知らないから忘れがちになってしまうが、エドワードの証言が正しいなら、あそこは凍りに包まれたダンジョンだ」
 「犯人の証言を信用するなら……か。お前の言いたい事はわかったぜ。つまり、ドラゴンを殺したエドワードが遺体を氷に閉じ込めた。冷凍保存って事か?」
 「その通りさ。 僕の力量だから分からなかったけれども、本職の人間が見たら通常時の遺体と冷凍保存された遺体の違いくらいわかるはず……結果はすぐに出るさ」

 「なるほど、なるほど」とオントは納得した。

 「いや、やっぱり疑問は残るさ」
 「ん? それはなに?」

 「どうやって、エドワードはドラゴンを殺せた? ドラゴンの首はどこに消えた? 何より、ダンジョンから魔物が消えてる理由はなんだ?」

 「あぁ、やっぱり、そこが気になるかい?」
 「おっ! 流石サクラだ。もう答えが出てるのか」
 「いや、さっぱりだ」
 「……」
 「まぁまぁ、そんな顔で見るなよ。方法はわからないけど、ドラゴンだって生物だ。生物なら殺せる……」

 しかし、オントは「フン」と鼻で笑う。

 「鏡見てみろよ。ドラゴンが殺せるって自分で言っておいて、凄い顔してるぜ」
 「そうかい? 気のせいじゃない?」
 「お前にとって、ドラゴンは彼女の事を指す言葉なんだろうけど、あのドラゴンはお前のドラゴンじゃない。混合するなよ」
 「混合しているつもりはないのだけど……」
 「そりゃ、たちが悪い。無意識なんだからな」
 「……」

 「だから、そんな顔するなって、切り替えろ、切り替えろ。まず、魔物がダンジョンから消滅した理由を考えようぜ」

 「あぁ」とサクラは頷いた。普段よりも力の抜けた相槌。
 やはり、ドラゴンはサクラにとって特別な言葉らしい。

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