超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』
サヲリの再登場 アリスの立場?
場所は氷の迷宮へつながる地下道。
「それでは参りましょう」とアリス。
アリスの装備は基本的な探索者の装備のように見える。
しかし、靴の片方だけでも豪邸が建つほどの高級品だとサクラは知っていた。
(総額だといくらかな?)
そんな事を考えながら、先行するアリスを眺めている。
すると「いいのか?」とオントが聞いてきた。
「何がだい?」
「いや、ドラゴンが現れるって話のダンジョンに、彼女の同行を許してだよ」
「そうは言っても仕方がないじゃないか」
この依頼主はアリス。つまりは迷宮ダンジョン探索のメインスポンサーさまだ。
もしも、僕が「NO」とでも答えていたら、このダンジョンの場所すら教えてくれなかっただろう。
「それに……」とオントは言いかけて言葉を止める。
そして、こう続けた。
「ここで目撃されたドラゴンがお前の探している彼女とは限らないだろ」
「……あぁ、そうだな」
「俺は王妃を守りながらドラゴンと戦うなんて自信はないぞ? お前は?」
「まぁ、ないね」
「随分と返事が軽いな。何か秘策でも?」
「いや、そんなに心配するような事じゃないだろ。
「なに!?」
「王妃さまが探索するなんて話だ。近衛兵ガードたちが事前に先行して安全確認をしているだろ」
「なるほど、確かに……安全面は配慮されているのか」とオントは納得した。
しかし――――
「いえ、ダンジョンに入るには特別な鍵が必要であり、アリス様が持っているので、我々も入る事はできません」
そう横から声が聞こえてきた。
「?」とサクラは、その声の主を見ると――――
「久しいな。蛆虫めが! とりあえず、一発殴らせよ」
いつの間にかラン・サヲリがいた。
「さ、サヲリさん!」と叫ぶと同時にサクラは殴られた。
そして、殴った本人はと言うと――――
「悲しいな。僅かながらでも痛みを与えればと本気で殴ってみたが…… もう、私程度の実力では、痛みすら与えられないのか」
彼女の言うとおり、顔面に拳を受けてもサクラの表情に変化はなかった。
「いいえ、すいませんでした。常日頃からアリスの事を気にかけているように言われていましたのに……」
「いや、あれは誰にだってわからないよ。あんな闇が存在していたなんて私だって想像できなかった。
ん? それじゃ、なんで殴ったかって? 単純に最強の探索者の実力をみたかっただけだよ」
そんな理不尽さも変わっていなかった。
シュット学園で鬼軍曹として、僕を鍛えていた時と変わらない。
そうサクラは感じた。だから、こう言葉を続けた。
「いつだって、貴方は僕に……僕の心に痛恨の一撃を与えてくれました。その感謝を忘れた事はありません」
サヲリは「ふん」と照れくさそうな顔に変化した。
「女の扱い方も成長したみたいだな」とサヲリは皮肉めいた事を言う。だから――――
「えぇ、おかげさまで」とサクラも皮肉で返した。
「しかし、大丈夫なんですか? 事前の安全確認もしていないなんて」
「それがアリスさまの意思だ。それに、元王妃であるアリスさまの立場は弱い。政治利用を避けるために護衛はつけられているが……その命は重さは普通の人間と同じになっているのだよ」
「……」とサクラは無言で返す。
そういう政治の世界に疎いからだ。
アリスの立場が具体的にどのような状態なのか、想像もできない。
しかし、別に死んでも構わない。 そう思っている人間が何人もいる。
それだけはわかる。 そして、その――――アリスの心情を理解しようとする事はできる。
そんな事を考えていると、先行していたアリスの姿が見えてきた。
「ここがダンジョンの入り口です」
彼女が指差すのは足元。そこに鍵穴のようなものが存在していた。
アリスは雑嚢から鉄の棒を取り出す。 話に聞いていたダンジョンの鍵。
エドワードの話通り、鍵穴に近づくと棒に変化が起きる。
まるで生き物のように動き始めたかと思うと、すぐに鍵穴に合う形状に変わった。
「それでは、皆さん。準備はいいですか?」
「あぁ、大丈夫だ」と代表してサクラが答える。
そして、鍵は回されカッチと音が鳴る。
すると――――
地鳴りのような音。地面が揺れる。
そして、現れた入り口にサクラたちは足を踏み入れた。
しかし、事前情報と違う。
そこは氷のダンジョンではなかったのだ。
「それでは参りましょう」とアリス。
アリスの装備は基本的な探索者の装備のように見える。
しかし、靴の片方だけでも豪邸が建つほどの高級品だとサクラは知っていた。
(総額だといくらかな?)
そんな事を考えながら、先行するアリスを眺めている。
すると「いいのか?」とオントが聞いてきた。
「何がだい?」
「いや、ドラゴンが現れるって話のダンジョンに、彼女の同行を許してだよ」
「そうは言っても仕方がないじゃないか」
この依頼主はアリス。つまりは迷宮ダンジョン探索のメインスポンサーさまだ。
もしも、僕が「NO」とでも答えていたら、このダンジョンの場所すら教えてくれなかっただろう。
「それに……」とオントは言いかけて言葉を止める。
そして、こう続けた。
「ここで目撃されたドラゴンがお前の探している彼女とは限らないだろ」
「……あぁ、そうだな」
「俺は王妃を守りながらドラゴンと戦うなんて自信はないぞ? お前は?」
「まぁ、ないね」
「随分と返事が軽いな。何か秘策でも?」
「いや、そんなに心配するような事じゃないだろ。
「なに!?」
「王妃さまが探索するなんて話だ。近衛兵ガードたちが事前に先行して安全確認をしているだろ」
「なるほど、確かに……安全面は配慮されているのか」とオントは納得した。
しかし――――
「いえ、ダンジョンに入るには特別な鍵が必要であり、アリス様が持っているので、我々も入る事はできません」
そう横から声が聞こえてきた。
「?」とサクラは、その声の主を見ると――――
「久しいな。蛆虫めが! とりあえず、一発殴らせよ」
いつの間にかラン・サヲリがいた。
「さ、サヲリさん!」と叫ぶと同時にサクラは殴られた。
そして、殴った本人はと言うと――――
「悲しいな。僅かながらでも痛みを与えればと本気で殴ってみたが…… もう、私程度の実力では、痛みすら与えられないのか」
彼女の言うとおり、顔面に拳を受けてもサクラの表情に変化はなかった。
「いいえ、すいませんでした。常日頃からアリスの事を気にかけているように言われていましたのに……」
「いや、あれは誰にだってわからないよ。あんな闇が存在していたなんて私だって想像できなかった。
ん? それじゃ、なんで殴ったかって? 単純に最強の探索者の実力をみたかっただけだよ」
そんな理不尽さも変わっていなかった。
シュット学園で鬼軍曹として、僕を鍛えていた時と変わらない。
そうサクラは感じた。だから、こう言葉を続けた。
「いつだって、貴方は僕に……僕の心に痛恨の一撃を与えてくれました。その感謝を忘れた事はありません」
サヲリは「ふん」と照れくさそうな顔に変化した。
「女の扱い方も成長したみたいだな」とサヲリは皮肉めいた事を言う。だから――――
「えぇ、おかげさまで」とサクラも皮肉で返した。
「しかし、大丈夫なんですか? 事前の安全確認もしていないなんて」
「それがアリスさまの意思だ。それに、元王妃であるアリスさまの立場は弱い。政治利用を避けるために護衛はつけられているが……その命は重さは普通の人間と同じになっているのだよ」
「……」とサクラは無言で返す。
そういう政治の世界に疎いからだ。
アリスの立場が具体的にどのような状態なのか、想像もできない。
しかし、別に死んでも構わない。 そう思っている人間が何人もいる。
それだけはわかる。 そして、その――――アリスの心情を理解しようとする事はできる。
そんな事を考えていると、先行していたアリスの姿が見えてきた。
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彼女が指差すのは足元。そこに鍵穴のようなものが存在していた。
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