超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』 

チョーカー

合流 双子のダンジョン

 一太刀を浴びて舞い散る鮮血。
 しかし、飛び出した勢いのまま、彼の体内へ逆戻りしていく。

 不老不死の存在

 どんなにバラバラに切り裂いても、どんなに強烈な魔法で吹き飛ばしても、復元の如く再生していく。
 「……なるほど」と僕は納得した。
 そりゃ攻撃的なスタイルになるはずだ。防御が不要なのだから……
 「さて、どうします?」とドラゴン。
 彼女の閃光ビームはギョウジに直撃。灰すら残っていないはずなのに、ギョウジの肉体は再構築が始まっている。

 「それじゃ、僕は行きます」と手を上げた。
 他の2人も納得してくれたみたいだ。
 不死身の存在を相手にした事は何度もある。
 その場合は殺さなくても良い。 ただ、戦闘不能にすればいいのだから。
 ギョウジの槍が僕の顔面に向かって来る。 
 その直前、僕はしゃがみ込む。 頭上を槍が通過して、僕の髪が何本か、切り取られ舞い上がる。
 接近戦。 無防備になったギョウジの胴体に抱き付いて、フワリと彼の体を持ち上げる。
 テイクダウン。
 そのまま地面に叩き付けた。
 僕はギョウジの体に覆いかぶさる。

 腕絡み

 その名前の通り、腕を絡ませる関節技。
 手首を掴み固定。相手の二の腕の下に余った腕を潜り込ませ―———
 一気に跳ね上げる。

 ギョウジの腕からゴッキと音が鳴り響くと同時に彼から獣じみた咆哮が飛び出した。
 今まで、剣で切り刻んでも、魔法で燃やし尽くしても出なかった悲鳴が漏れる。
 腕を折ったわけではない。 折れたら、痛みを感じるよりも早く回復するだろう。
 症状は脱臼。 骨の位置をズラした。 
 逆の腕も掴むと関節技を仕掛ける。
 再び、音が鳴る。彼の腕から抵抗の力が抜けた。
 本来なら、これで十分なのだろうけど、彼の攻撃の要は腕ではない。

 口だ。

 僕は彼のアゴを掴む————左右に振った。

 顎が外れた。

 「とりあえず、無効化してみました。後はどうしましょうか?」

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 魚の次は水瓶だ。
 しかし、その必要はなかった。
 なぜなら、水瓶のダンジョンは消滅していたからだ。

 「よう、おそかったな」と僕らを迎えたのはオント。
 それにもう1人、彼の片腕であるカイムだ。
 彼の背後には巨大な鉄球が転がっている。

 『龍の足枷』

 その新型だ。
 どうやら、その一撃をもってダンジョン自体を破壊したのだろう。
 彼は僕の視線に気づくと笑みを見せた。好戦的な笑みだ。

 「そっちはどうだ? こっちは4つのダンジョンを破壊してきたが、誰も『聖遺物』なんて持ってなかったぞ」

 オントは状況を伝えてきた。
 僕もそれに答える。

 「それは、こっちも同じだ。4つのダンジョンを攻略したけど、誰も『聖遺物』を持っていなかったよ」

 しかし―———

 「それは、ちょっと奇妙だな」とオントは言う。
 そして、こう続けた。

 「つまり、俺たちは2グループで合計8つのダンジョンを潰した事になるが……他のメンバーはどこで何をやっている?」
 「えっと、今いるメンバーは僕、ドラゴン、インザンギ、アンドリュー、お前とカイムで6人・・・・・・
 そっちで他の6人と会っていないのか?」

 「あいにく、会っていない」とオント。
 これは流石におかしい。
 他の6人―———
 ラン・サヲリとラン・ミドリのラン姉妹。
 サンボル先生とキク先生の教師コンビ。
 あとはケンシと・・・・・・クリムは?
 兎に角、彼らがどこかで使徒に負けたとは思わないが……それにしても奇妙だ。
 他の6人が全員、教皇の大将首を狙いに行ったと言うのだろうか?

 だとしたら、僕らは―———

 「あーあー、ここまでか」と誰かが言った。
 それは、どうやらインザンギだった。
 「茶番はここまでですね」とアンドリューもインザンギに追随した。


 「「我らは12使徒は1人 2人で1人の双子のインザンギとアンドリュー」」 

 空間が歪む。
 風景が崩れる。
 外にいたはずなのに、今は室内にいる。
 強制的に移動させられた? ――――いや、最初から、ここいた?

 「「えぇ、察しの通り、貴方たち4人は双子のダンジョンによって封印させていただきました」」


 
 

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