超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』 

チョーカー

『祝福』の正体

 「僕が操られている?」

 ジッガ・ヤンの言葉は衝撃的だった。
 もちろん、僕には他人から操られている実感はない。
 動揺を隠せずにいる僕にジッガ・ヤンは「うむ」とつぶやいて言葉を続けた。

 「過去の資料と君の証言から、君の人格を大まかには把握しているつもりだ。だからこそ、不自然な部分が目立つ」
 「不自然?僕のどこが?」
 「そうじゃな、オーク王の時は……まだわからないでもないが、魔物の壁の時は分かりやすいかのう。それと魔剣の少女の時も分かりやすく出ている。つまりは――――
 君は、どうして、1人で挑もうとしているんだ」

 「はぁ?」

 思わず変な声が出た。

 「それが何か、どこかおかしいと?」

 「うむ、おかしいであろう? オーク王の場合は突発的な事件だから除外するにしても、他の事件は、どう考えても個人で解決する事案ではない。魔剣の少女が夜な夜な出歩いているならば、教員に報告すべきではないか? 少なくとも1人で立ち向かう発想なんて普通はしない。また、魔物の壁とて、ドラゴンの手助けを借りたのは結果に過ぎず、1人で解決させようとしていた。 さて、なぜじゃ?君の性格から考えればおかしくないか? どうして君は――――

 英雄的な行動を起こしている」

 「え、英雄的行動?」

 一瞬、言葉の意味が頭に入ってこなかった。

 「そう、それが話の始まりである『呪い』に繋がってるわけじゃ」
 「……?」
 「おそらく、ドラゴンが君に仕込んだモノは『呪い』ではない。ただ、キク教員がそう判断したにすぎない。 つまり、君は『呪い』によって油断させられているのだ」
 「? ? ?」

 ゆ、油断させられている? 
 意味が分からない。
 ドラゴンが僕にかけた『呪い』の正体が『油断しやすくなる』って意味が分からないぞ。

 「では、サクラくん、実際に油断してみた結果はどうじゃ?」
 「え? 油断してみた結果?」
 「そう、油断して危険地帯に自ら飛び込むようになったのではないか?油断して自分以上の強者を相手取り、あるいは油断して――――」 
 「―――恐怖がマヒしている……と?」

 老人はうなずいた。

 「油断するという性質上、キク教員はそれを『呪い』だと判断した。しかし、それは誤りだとわかる」
 「違う?」
 「あぁ、違う。考えてみなさい。ドラゴンは『呪い』をかけた自覚はないではないか」

 確かに、身内びいきかもしれないけど……僕にはドラゴンが嘘をついているようには見えない。

 「なぜなら、それは『祝福』だったからだ」

 僕は、その言葉に唖然とするしかなかった。
 僕にかけられた『呪い』が、真逆の『祝福』だったと言われて、どう反応すればいい?

 そして、目の前の老人は――――
 ジッガ・ヤンは、僕に『呪い』の正体は告げた。

 「君にかけられ『呪い』あるいは『祝福』の正体は、『勇気』だよ」   


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