超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』
ダンジョンで何が起きたのだろうか?
2日後、ダンジョンの入り口付近で倒れているタナカくんが発見された。
その出血量から、自力でダンジョンの上層まで戻り、出口の直前で力尽きたと考えられている。
今も意識不明。学園内の医務室では治療不可能だと診断され、今は外の病院に移っている。
同行したゲンゴロウさんは、行方不明だ。
ここシュレット学園は探索者の育成機関であり、学園内にあるダンジョンは生徒を探索者として育てるために国が保有しているもの……だからと言っても安全ではない。
上層には人の手が入り、可能な限り安全性を高めているが、それでも死者は出る。
生徒はもちろん、教師だって、ダンジョンキーパーだって、死者は出る。
毎年、数人の死者。 ここが死と隣り合わせの深い闇だと思い出させられる。
そう……ここが、非常に……危険だという事を……
僕は思い出す。タナカくんとの最後の会話を。
彼は神妙な顔だった。
「今回の件は自分の責任だよ。幽霊を見たと言えば……その、笑われると思った」
「当然さ。僕だってそう考えたから……君の事を信じなかったから1人で行ったんだよ」
いいや、違うとタナカくんは首を振った。
「君は、サクラくんは、勇気がある。まるで勇者だ」
「勇者!? 僕が???」
驚く僕に対して、タナカくんの表情は意外だと言わんばかりだった。
「気がついていないのか?まぁ……それはいいや。 君は、僕の話を信じてくれても行ったはずだよ。例え1人でも……むしろ、積極的にね」
「なら、今回も僕が行けばいい。なんだったら、2人でケンゴロウさんを案内すれば……」
「ダメだ。ダメダメダメだ」
そして、彼は言った。まるで哀願するかのように……
「今回は譲ってくれ。成りたいんだ。僕も君のような勇者に」
僕はそれを承諾する以外になかった。
いや、それは言い訳だ。彼を止めれなかった言い訳。
本当にそう考えているのなら、こんなにも深く後悔はしていない。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
例えダンジョンが死と隣り合わせだと知っていても、それを学園は良しとしない。
むしろ、それを認める事は探索者として敗北だと思っている。
ダンジョンで死ぬ事。あるいは死者を出す事は探索者としての敗北だと……
だから、彼らは誓う。ダンジョンへの復讐を……
最も、タナカくんが死んだわけでも、ゲンゴロウさんが死んだと決まったわけでもないのだが。
たった21層。そこに最深部を目指す遠征と同等の装備を施した教師達が挑む。
前代未聞の出来事だ。 いや、教師だけではなくダンジョンキーパー達も同行。
たった21層に挑むには大げさすぎると思う。けど、よくよく考えてみれば、行方不明者であるゲンゴロウさんの捜索。正体不明で、おそらくは人間らしいと言われる幽霊少女も調べなければならず――――
たった21層と言っても、彼らの形跡を塵1つ1つを見つけ出し、分析を行うことを前提とするならば、総力戦にならざる得ないのだろう。いや、総力戦でも人員は酷く足りない。
本来なら、外部から人員を補充し、増強するのがセオリーなのだろうが、それは彼らの感情が許されないのだろう。
仲間を救い、あるいは敵を討つならば、それは他人であってはならない。
その感情が……
しかし、それは失敗に終わった。
何もなかったのだ。 数日間、生徒のダンジョン探索を禁止し、徹底的に行われた大捜索劇は、なんら成果も得る事はできなかった。
幽霊少女は、あらためて存在すら怪しまれるほどに形跡を消していた。
それだけではない。ゲンゴロウさんとタナカくんの形跡————ダンジョン探索の形跡が驚くほど残っていなかった。
このダンジョンで何が起きたのか?
もはや、今だに意識が戻らぬタナカくんの記憶に頼るしかなかった。
その出血量から、自力でダンジョンの上層まで戻り、出口の直前で力尽きたと考えられている。
今も意識不明。学園内の医務室では治療不可能だと診断され、今は外の病院に移っている。
同行したゲンゴロウさんは、行方不明だ。
ここシュレット学園は探索者の育成機関であり、学園内にあるダンジョンは生徒を探索者として育てるために国が保有しているもの……だからと言っても安全ではない。
上層には人の手が入り、可能な限り安全性を高めているが、それでも死者は出る。
生徒はもちろん、教師だって、ダンジョンキーパーだって、死者は出る。
毎年、数人の死者。 ここが死と隣り合わせの深い闇だと思い出させられる。
そう……ここが、非常に……危険だという事を……
僕は思い出す。タナカくんとの最後の会話を。
彼は神妙な顔だった。
「今回の件は自分の責任だよ。幽霊を見たと言えば……その、笑われると思った」
「当然さ。僕だってそう考えたから……君の事を信じなかったから1人で行ったんだよ」
いいや、違うとタナカくんは首を振った。
「君は、サクラくんは、勇気がある。まるで勇者だ」
「勇者!? 僕が???」
驚く僕に対して、タナカくんの表情は意外だと言わんばかりだった。
「気がついていないのか?まぁ……それはいいや。 君は、僕の話を信じてくれても行ったはずだよ。例え1人でも……むしろ、積極的にね」
「なら、今回も僕が行けばいい。なんだったら、2人でケンゴロウさんを案内すれば……」
「ダメだ。ダメダメダメだ」
そして、彼は言った。まるで哀願するかのように……
「今回は譲ってくれ。成りたいんだ。僕も君のような勇者に」
僕はそれを承諾する以外になかった。
いや、それは言い訳だ。彼を止めれなかった言い訳。
本当にそう考えているのなら、こんなにも深く後悔はしていない。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
例えダンジョンが死と隣り合わせだと知っていても、それを学園は良しとしない。
むしろ、それを認める事は探索者として敗北だと思っている。
ダンジョンで死ぬ事。あるいは死者を出す事は探索者としての敗北だと……
だから、彼らは誓う。ダンジョンへの復讐を……
最も、タナカくんが死んだわけでも、ゲンゴロウさんが死んだと決まったわけでもないのだが。
たった21層。そこに最深部を目指す遠征と同等の装備を施した教師達が挑む。
前代未聞の出来事だ。 いや、教師だけではなくダンジョンキーパー達も同行。
たった21層に挑むには大げさすぎると思う。けど、よくよく考えてみれば、行方不明者であるゲンゴロウさんの捜索。正体不明で、おそらくは人間らしいと言われる幽霊少女も調べなければならず――――
たった21層と言っても、彼らの形跡を塵1つ1つを見つけ出し、分析を行うことを前提とするならば、総力戦にならざる得ないのだろう。いや、総力戦でも人員は酷く足りない。
本来なら、外部から人員を補充し、増強するのがセオリーなのだろうが、それは彼らの感情が許されないのだろう。
仲間を救い、あるいは敵を討つならば、それは他人であってはならない。
その感情が……
しかし、それは失敗に終わった。
何もなかったのだ。 数日間、生徒のダンジョン探索を禁止し、徹底的に行われた大捜索劇は、なんら成果も得る事はできなかった。
幽霊少女は、あらためて存在すら怪しまれるほどに形跡を消していた。
それだけではない。ゲンゴロウさんとタナカくんの形跡————ダンジョン探索の形跡が驚くほど残っていなかった。
このダンジョンで何が起きたのか?
もはや、今だに意識が戻らぬタナカくんの記憶に頼るしかなかった。
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コメント
ノベルバユーザー251443
セロリー?